前編短編CM『トリプルマジックストリート 第一部』

霜月二十三

主人公は聖女の守り人四人といっぱん人

 オレの名はウリッツァ、この夏から十六歳だ。生まれてすぐ両親を亡くした孤児同士姉弟きょうだい同然に育ったヴィーシニャがめでたく聖女様になり、オレは聖女様を護る数ある班の班長に任命された……のはいいんだけど、聖女交代式終了後に先代聖女マナ様が突然倒れて、しかも後に死んでたことが発覚!

 それからマナ様の過去とか探る内に、何度も出てくる「名前を最後まで呼べないあの人」。

 そいつに両親を殺された二卵性双生児ふたごの兄弟マギヤとプリストラや、五歳の誕生日を境に母親を見かけなくなった、うちの紅一点トロイノイといった、オレが班長でちょっと申し訳ないくらい優秀な仲間達と共に「あの人」を探し出して犯人なのか問い詰める……って、うおっと!

「ああ、ごめんなさい、大丈夫ですか?」

「おお、少年か、特に怪我はないぞ!」

「ああ、なら、よかった……」



 じゃあな! とウリッツァは少年、もとい彼に別れを告げる。

 彼は家に帰り、洗面所の鏡を見つめる。

「少年、ね……あいつにボクの年とか本当のことをいろいろ言ったらどんな反応するんだろ」

 しばらく想像して今考えても仕方ないと小さく笑った彼は、ただいまチェルシー、と声をかける。チェルシーと呼ばれた少女は、おかえりの後に彼の名を呼ぼうとしたら彼に抱き締められた。少女の匂いは彼の愛しの今は亡き祖母の匂いと同じような匂い、背丈も祖母と同じくらい。ただ短く切られた波うつ髪と不意の抱擁に戸惑う瞳は桜色だった。

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前編短編CM『トリプルマジックストリート 第一部』 霜月二十三 @vEAqs1123

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