協力(4)

「じゃあ、計画に参加してくれるってことで私からの特典があるんだ。」

特典と聞いて、純粋に心が踊る。何が貰えるのかワクワクしながら身構えている。

「何が貰えるんですか?」

「ここに来てる人で計画に参加してくれてる人にはみんなにあげるんだけど、私ができる限りの事で皆の願いを叶えているんだ。」

思っていたより巨大な特典に頭の中でして欲しい事をどんどん思い浮かべる。それを見たティフォが申し訳ないような表情で詳細を伝えてくる。

「期待させといて悪いけどそんな凄い事は出来ないし、願いの回数も決まってるんだ。ごめん。」

なるほど。まぁ確かに回数制限がなかったら、それこそ問題が発生してしまうだろう。

自分の心の中でその話を納得し、貰えるだけでも有難いと考えるようにした。

「いくつ願いを叶えてくれるんですか?」

その質問にティフォは悩んでいる様に目を瞑り、腕を組んで返答する。

「人によって違うんだけど、今までの人生での善い行いから悪い行いを引いた数の分だけ願いを叶えられるんだ。」

それを聞いて心が動揺する。私、善い事しているだろうか。していたとしてもそれ以上の悪い事をしてしまっていないだろうか。そんな考えが脳裏をよぎりつつ、恐る恐るティフォに私の事を聞く。

「私……どうですか?大丈夫でしたか?」

「う〜ん。優希は……4、だね。」

4……。そのなんともいえない数字に落胆しているとティフォが焦った表情で私にフォローを入れる。

「いやいや、4って結構高いからね?多くても1か2。殆どの人はマイナスだったんだから。」

信憑性に欠けるその言葉を中々強引に信じ、頭を切り替えて4つのお願いを考える。

「えっと、じゃあ1つ目。チヅレが向こうで死なない様にある程度、強化?でいいのかな。まぁ死なない様にしてあげてください。」

「んー、オッケー。後3つだよー。」

意外と呆気ないな。結構無理なお願いをしたと思ったんだけどな。このお願いの許容範囲が分からず一瞬戸惑ったが、広いに越した事はない。

「チヅレと意思疎通が出来るようにして下さい。」

「なるほどねー。出来なくはないけど流石にチヅレ君から優希に言葉を伝えるのは難しいな。出来るのは優希の言葉をしっかりと理解して行動する位かな。」

種族を超えての会話は無理か。でもチヅレが私の言葉を理解できるようになるなら上々だろう。後2つ。もう1つは最初から決まっていた。

「ユリ……。松場ユリのお願いを聞いてあげて下さい。」

「……分かった。でも1つだけしか聞けないよ。」

「うん、分かってる。ユリが本当に、心の底から願う事があったら叶えて欲しい。」

こんなことしか出来ないけど、これが私に出来る最大の償い。せめて私が帰るまで、悲しい思いをしないように願うだけである。

「うんうん、友情だね。それで、最後のお願いは?」

「……もう何も出てこないんですよね。チヅレの事もユリの事ももうお願いしたし。最後の1つはティフォ、貴女が決めて下さい。」

「それがお願いって事でいいかな?」

静かにニコッと笑みを浮かべ、それが最後のお願いでいいと促す。

「ずっと思ってたけど優希は自分の事何もお願いしてないよね。もっと人間らしく欲に塗れればいいのに。でもそれが優希のいい所なんだよね。」

「わんっ!」

その通り!とでも言っているのだろうかチヅレが私に吠える。ティフォも自問自答を繰り返し、そうだよね〜と深く頷いている。

「はい、決めた。優希の最後のお願いは、チヅレ君と一緒。死なない様に身体強化にしよう。」

ティフォはそういって私に強化を施してくれたらしい。が、身体には大した変化もなくそこまで極端な身体強化ではないことを悟る。

「よし、後は何か言わなきゃいけないことあったかなぁ。まぁ思い出したら伝えるから。」

適当な説明に心配するが、大丈夫であろう。

席を立ち上がり服装を整える。

「……ありがとうございました、ティフォ。では行ってきます。」

「わんっ!」

「いってらっしゃい。またね。」

「20歳になったら世界が変わる。」ティフォが言うには私はまだ19歳で時が止まっているらしいが、私はもう20であると思っている。

予想の斜め上を行く世界変更に負けず誕生日会をする為、私は歩を進める。

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