第2話 タイトルに『ぺこり』を入れるとウケません

 ちわっす、あたいだよ。


 やっぱりな。思った通りですわね。でもいいの。ここはあたいの自由帳。


 ああ、なんであたいがこの「あたい」って代名詞を使うことにしたか言ってなかったわね。まずは、現実社会で「あたい」なんて日常的に言っている人なんていないよね。実に個性的で他との差別化が図れるよ。それから「あたい」って聞いてどうイメージする? 気風のいいお姐さんなのか、脳みそが、ねこよりもちっちゃい男なのか(ここで「頭が薄い」とか「うすのろまぬけ」とか言うと差し障りが出る。ところが、この文のように鉤括弧に入れると、なぜかスルーされるの。こういうの「オブラートに包む」っていうと思うんだけどさ、若い人は粉薬をオブラートに包んだり、手がベトつくからオブラートで包んだ食品など見たこともないでしょうね。敬愛する小林信彦先生の、かつてのベストセラー『現代死語辞典』の改訂版を万一出すとしたらぜひ、加えてほしいなあ)、かっこが長すぎたわね。とにかく男女どちらかわからないでしょ? あたいはねえ、正体不明なのよ。


 はあ、あたいとぺこりの思考が酷似してるって? 当たり前だよ。あたいはあいつの「中の人」を三年くらいやったベテランスーツアクターですよ。似ているというかほぼ本人だよ。当然、様々な制約はあったけどね。「言葉遣いは丁寧に」とかね。十七条くらいあったかな? いえ、偶然です。あんなの考えていることとわね。

 かっぱの社長がこの先、新しい「中の人」を採用すれば、その人のパーソナリティーが新しいぺこりの性格・志向に変わるというわけさ。子ども相手だったら、すぐに気付かれて泣かれるね。

 それからさあ、あたしは読者に“さん”づけなんかしねえよ。読みたきゃ勝手に読みなさいよ。あたいの一番の読者はあたいなのさ。


 まあ、ぶっちゃけて言うと、ぺこりが読んだって言っていた文庫本もみんな、あたいが読んだんだよ。これ、暴露。週刊文春の記者でもこないかしら? 人を撲殺できる“文庫界のゼクシー”こと『志ん生一代』だって、実際に読んだのはあたいだ。今朝の七時前よ。読み終わったのは。ねえ、あんたたちあたいのこと文盲だと思っていたでしょ。あのね、日本人の識字率は百パーセントに限りなく近いのよ。あたいだって、中学校まではきちんと卒業しているの。この時点で田中角榮より学歴が上。だからあたいが内閣総理大臣になったっておかしくないの。令和太閤記よ。いまなら家来にしてあげてもいいわ。履歴書とエントリーシートを送って。写真付きよ。もちろん顔のアップと全身の二枚ね。メールは不可。

 でね、あたいは本を読みながら、つい違うこと考えちゃって、気がつけば一行も進んでないことよくがあるんだけど『志ん生一代』を読んだいる最中も、読了したら、次に何読もうかって、考えだしちゃったの。まあ、初めのうちは軽く『ハルヒ』の続きでも読もうって思っていたんだけど、そのうち『ハルヒ』は今月末の最終配本が終わるまで寝かせておいて『蜂蜜と遠雷』を読みたいなって考え直したの。ところがその前に、おんなじ幻冬舎文庫の恩田さんの『消滅』上下巻が未読だって気がついて「こっちが先!」ってすぐに、お昼くらいから読み出したの。最近の恩田さんって脂が乗っているというか、あたい好みっていうか、出足から面白過ぎるわ。でも、恩田さんには最後に“?”というドッチラケなオチがあるから気をつけないとね。『消滅』は恩田さんのメインストリームだけど、『蜂蜜と遠雷』はどうなんでしょう? あたい、予備知識を一切持っていない上に、他人が高評価したものが必ずしも、性に合うわけでもないのよ。本屋大賞をとった『夜のピクニック』なんて、あたい的には最悪。何が面白いのか永久にわかんない。

 ちょっというか、かなり不安だわ。


 とにかく、今月は買いたい新刊が少ないし、気温が安定して、自律神経の調子もまずまずだから、バリバリとまではいかなくてもパリパリ読んで未読の断崖を普通の丘くらいにして、出来たら念願の『剣客商売』全巻通読を実現したいわ。


 まあ、無理だけどね。

 はい、さようなら。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る