第9話 友達と友達と友達

私には、凄くバカと凄く美人な友達がいる。

前田とはお母さん同士が仲が良くて、よくお互いの家を往き来していた。

小さい頃からよく旅館の手伝いをしているからか、周りの男子より少し大人びていた。


リンは昔から美人で頭が良くて明るくて、私の自慢の友達で、ちょっと抜けている所も可愛い女の子。


二人ともどこにいても目立つ存在で、私は周りからただの動く棒のように見えていたかもしれないけど、それでも二人の友達というポジションに私は優越感を感じていた。


前田とリンは誰から見ても両想いなのに、なかなか進展しなくて、近くで見ているこっちがもどかしかった。

二人は今までの関係を壊したくなかったのかもしれないけど、前田と他の子との話題が出る度にリンの涙を見て、早く恋人同士になってしまえば良いのにといつも思っていた。


そんな昔のことを思い出したのは、昨日、前田のおじちゃんが倒れたとお母さんから聞いたからだ。おじちゃんは病気持ちだけど、相変わらず調理場に立ち続けていた。

前田がまだ修行先から戻らないからだ。

今はこの辺りも観光シーズンでお客さんも多いだろうし、おじちゃんは体を休めていないのかもしれない。

旅館の裏の前田家の玄関をくぐると、元気そうなおじちゃんの大きな声が聞こえてきた。

少しホッとした。

「こんにちはー。」

おばちゃんに手招きされて部屋に上がると、布団の上であぐらをかくおじちゃんの隣に、凄く凄く久しぶりのあいつがいた。




「よっ。」

前田が帰ってきていた。

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