第31話 ユーリちゃんの為に♪

 

 三十一



「きっとユーリちゃんは一体もホーンラビットを仕留められないはずニャ。だからあたしがユーリちゃんの分も仕留めて……それでユーリちゃんと仲良くするニャ!」



 あたしの名前はミサト。年齢は13歳で、猫の獣人と人虎ワータイガーのハーフの獣人ニャ。ハーフと言うよりも、人虎が既に人と虎のハーフだからクォーター獣人といった所かニャ? モッフモフの体毛とプニプニの肉球がチャームポイントだニャ♪

 今は訳あって、ハポネ王国で孤児として冒険者学園に通い、それで冒険者になる為に表向きは頑張ってるニャ。


 それはさておき。


 今のあたしは、何とかユーリちゃんと仲良くなる為の作戦を実行中ニャ。その作戦とは、課外授業でレイド先生から出されたホーンラビットを狩るという課題で、そのホーンラビットを余分に狩って、それをユーリちゃんにプレゼントするというものニャ。するとユーリちゃんはあたしに感謝して、それですっごく仲良くなって……いずれはムフフな関係になるって寸法だニャ!


 一目惚れ、だったニャ。大好きニャ。

 ユーリちゃんの甘い体臭と言い、見た目と言い……どこか抜けてる性格も、全てが”どストライク”ニャ♡


 何がなんでも、絶〜っ対、仲良くなるニャ!


 そんなあたしとユーリちゃんの出会いは、冒険者学園に入学する前日の事だったニャ――




 ☆☆☆




 冒険者学園の入学を明日に控え、ワクワクとドキドキが抑えきれない程に高まってたあたしは、こんな事じゃ目的を達成する事なんて出来ないと自分に言い聞かせ、頭を冷やす為に孤児院の浴場へと向かってたニャ。お風呂でサッパリすれば、頭も冴え渡るってもんだニャ。



「何としても冒険者になって、この国で名を売って、それで……! ……ニャ? この時間からお風呂にがあるって事は、またミーナがあたしの事を狙ってるって事だニャ……!」



 トキオを代表するダスト商会を一代で築き上げた『ダスト=ボークス』さん。そのダストさんが個人の慈善事業として開院している孤児院で与えられた下着と部屋着を用意し、それを持って浴場に向かってたあたしは、ため息を吐きながら脱衣場へと入り、着ていた服を脱衣カゴに放り込み、いつでもミーナを返り討ちに出来る様に気を張りながら浴室へと入ったニャ。


 な、な、なんニャーっ!? すっごく甘くて、腰から砕ける様なこの匂いは!?


 あたしはさっきも言ったけど、猫の獣人と人虎のクォーターの獣人ニャ。嗅覚は人間の数倍を誇ってるニャ。力もニャけど。

 浴室の扉を開けた瞬間、その鋭い嗅覚に本能を直撃する匂いが飛び込んで来たニャ。

 匂いの元を辿ると、ミーナとじゃれあってる白い髪の毛の、とっても可愛らしい女の子があたしの目に映ったニャ。


 か、可愛いニャ〜〜〜♡


 見た目の可愛さに本能を直撃する匂い。どストライクの女の子の出現に、あたしは足腰がガクガクと震えそうになったニャ。


 しょ、初対面で腰砕けなんて醜態は晒せないニャ!


 何とか震えを抑え、興奮による心臓の高鳴りをも抑え込み、平静を装う事に成功したあたし。そんなあたしを、ミーナとじゃれ合う女の子がジーッと見てたニャ。当然、裸のままで。


 飛び付きたいニャ! クンカクンカ匂いを嗅ぎたいニャ! ペロペロしたいニャ!


 理性と本能の狭間で揺れ動くあたしの心をよそに、その娘は頬を朱に染めながら自己紹介して来たニャ。



「は、初めましてです! ボクはユーリです!」



 堪らないニャ! 可愛過ぎるニャ! 朱に染まった頬にチューしたいニャ!


 ユーリと名乗った女の子に対し、あたしは身体の芯からその衝動に駆られ、そしてウズウズしたニャ。


 だ、ダメだニャ……! そんな事したらユーリちゃんはドン引き間違いないニャ! う〜……ウズウズするニャ〜……!



「……初めましてニャ。ミサトって言うニャ」



 鋼の精神で下心を制し、何とか挨拶を返す事には成功したニャ。冷たい感じになっちゃったけど、大丈夫かニャ? クールビューティーだと思ってくれたら幸いニャけど。


 今思えば、この時素直になっとけば良かったニャ。せっかく仲良くなれるチャンスだったのに。

 ニコッと笑顔でも見せておけば今頃は……♡


 その後もミーナがユーリちゃんに絡み付いていたけど、あたしは冷たく挨拶しちゃった以上そのまま体を洗い、さっさとお湯で身体を温め、浴場を出る事にしたニャ。後ろ髪が引かれたけど。



「はぅぅっ!?」


「も、もういいでしょ!? は、早くか、か、身体をき、綺麗に洗わないと……♡ はぁ……はぁ……あ、鼻血が……」



 お風呂から出ようとした矢先、背後からそんな声が聞こえてきたニャ。正直、ミーナの事が羨ましいニャ……! あたしもユーリちゃんとあんな事やこんな事がしたいニャ!

 しかしこのままだと、可愛いユーリちゃんがミーナの毒牙にかかるニャ!


 あたしは興奮を悟られない様に努めて冷静を装いながら、ユーリちゃんへ注意勧告したニャ。



「……ミーナは、そればっかニャ。君、ユーリちゃんって言ったかニャ? ミーナはがあるから気を付けるニャ。それじゃ、お先ニャ」



 自分だってがあるのに、ノーマルを装い忠告したあたし。でも、それを悟られたら終わる事は分かっているニャ。



「これで良かった。……これで良かったんだニャ」



 そう呟きながら部屋へと戻ったあたしは、下腹部の疼きを耐える事が出来ず……人生で初めて自らを慰めたニャ。

 ユーリちゃんの仕草、匂い、裸。思い出すだけで下腹部がキュンキュンして来るニャ♡


 これが初恋ってやつかニャ?


 今までのあたしは物語の中に出て来るお姫様に恋焦がれていたけど、本物の女の子にはそんな気は全然無かったニャ。でも、ユーリちゃんを一目見た瞬間……いや、匂いを嗅いだ瞬間からズキューーンと来たニャ♡


 この初恋、必ずや実らせてみせるニャ!


 そう思ってはみたものの、やはりさっきの挨拶の時のあたしの冷たい感じはダメダメだニャ。挽回せねば……!



「せっかくお風呂に入ったのに下着を替えニャいと……」



 少しだけ切なくなりながら下着を替え、夕食を食べる為に食堂へ。食堂ではミーナが、改めてユーリちゃんの事をみんなに紹介したニャ。

 みんなと言っても、あたし以外にはクリスという15歳になる人間の男の子と、ノルドという25歳になるドワーフの男の子しか居ないけど。あ、ドワーフは長命種族な為、25歳でも15歳相当らしいニャ。だから、ドワーフ特有のモジャモジャのお髭もまだ生えてないニャ。


 それはともかく、クリスがユーリちゃんの事を睨んでいたけど、ミーナの事をユーリちゃんに取られるって思ってるのかニャ? お風呂での雰囲気だと、ユーリちゃんはミーナの事を煙たく思ってるはずニャ。だからそんな事あるはずないのに、勝手に勘違いしてるクリスはアホだニャ。

 ノルドは真面目でドワーフで頑固一徹。きっと自分の夢が叶うまでは女の子に興味なんて湧かないはずだから安心だニャ。


 ……やはり目下の敵はミーナだニャ!


 あたしがそんな事を思いつつもユーリちゃんの紹介が終わり、夕食の用意が整ったのでみんなで食卓を囲ったニャ。

 マレさんが作る孤児院の食事は何を食べても美味しいけど、ユーリちゃんの食べっぷりはハンパなかったニャ。口の周りはシチューに塗れ、更に白パンのカスも付いてるニャ。

 普通好きな子がそんな姿を晒すと百年の恋も冷めるとか言うけど、あたしはそれを見た瞬間に庇護欲に駆られたニャ。


 堪らないニャ♡ 汚れた口の周りを綺麗に舐め……コホン、綺麗に拭いてあげたいニャ♡


 そんな煩悩との戦いを経て部屋へと戻り、当初の目的を忘れつつ就寝。

 寝る前にもう一度自らを慰めたのは誰にも言えないニャ……




 翌朝。今日はいよいよ冒険者学園への入学ニャ。

 あたしはユーリちゃんの朝食を食べる姿に悶々としつつも気持ちをしっかりと切り替え、何故かあたし達に付いてくるミーナに冷たい視線を送りつつもトキオの北区に在る冒険者学園へ向かったニャ。


 その途中、大通りには人集りが出来ており、その中心人物であったマキトさんと遭遇したニャ。

 大きな身体にノースリーブのワンピースを纏い、背中には巨大な大剣を担ぎながらという変態の格好で大きな荷車を引き、その荷台には、これまた大きな魔物の死体が。どうやらゴリライガーと言う、マキトさんが仕留めたと豪語する魔物みたいニャ。

 その魔物を見るユーリちゃんの視線が何故か冷たく感じたけど、きっと恐ろしい魔物の死体を見て驚き過ぎてるんだと思うニャ。冷たい視線のユーリちゃんに見下されてみたいニャ♡


 ……などと考えていたら、いつの間にかマキトさんがユーリちゃんに抱き着き、「ふおおおおっ! 堪らんっ! チッパイこそ至宝なのだよっ!!」と宣ってらっしゃる。


 さすがに英雄と言われるだけあるニャ……! 激しく同意するニャ♡

 春に芽花がほころぶ様に、僅かに膨らみ始めた慎ましやかな双丘に萌えるニャ♡

 ようするに、堪らないニャ♡


 しかし、その至宝でもあるチッパイの持ち主のユーリちゃんは、マキトさんに抱き着かれてご傷心の様子。助けてあげようかと思ったけども、その泣き顔もあたしの心をキュンキュンと刺激して来るので、あえてそのままにしたニャ。……既にあたしの下着は替え時ニャ。


 だが、まだだ。まだ、替えんよ!


 替えの下着は一枚しか持って来てないニャ。今替えると、この後もしかしたら、という場面に出会したらでくわしたら大変ニャ。我慢するニャ。


 マキトさんとの遭遇というハプニング(ユーリちゃんにとっての)を乗り越え、冒険者学園の門の前に辿り着いたあたし達。まだ泣きべそをかいているユーリちゃんが愛おしいニャ。


 それはともかく、いよいよあたし達は冒険者への第一歩を踏み出すニャ! ユーリちゃんと一緒に頑張るニャ!


 門を潜ると、あたし達は訓練場を兼ねた中庭でクラス分け試験を受ける事になったニャ。まぁ、入学案内のパンフレットに書いてあったからあたしは知ってたけど。

 でも、ユーリちゃんはキョトンとした表情を浮かべてたニャ。それだけでご飯三杯はイケるニャ♪


 試験はマジックドールに自分の最大の攻撃をするってものだったけど、そこで鬱陶しい存在……ネコーノがあたしに絡んで来たニャ。

 ネコーノはトキオの領主である『シリウス=ノースライン=ハポネ』の一人息子であり、しかも困った事に、猫をこよなく愛する変人だったニャ。

 あたしがトキオに来たのは二週間程前。どこであたしの事を嗅ぎ付けたのかは分からニャいが、その日から毎日あたしにまとわりついて来るニャ。あっちに行けニャ!


 そんなこんなで、試験はあたしの番になったニャ。


 カミーサって言うハーフエルフのギルド職員が試験の立会人として居るけど、そのカミーサがあたしの番を告げた。あたしはユーリちゃんに強さをアピールする為に両腕をワータイガーそのものへと変化させ、さらに両手の指全ての爪を最大まで鋭く伸ばす為に集中し始めたニャ。


 ――ミキッメキッゴキッ!


 腕の肥大に伴って、骨の軋む音と筋肉の膨れ上がる音を発するあたしの両腕。力の解放は少し痛みを伴うけど、全能感に支配されて気持ち良いニャ♪

 そして気合い一閃。マジックドールをワータイガーの膂力と両手の爪にて細切れにしてやったニャ。チラッとユーリちゃんを見てみると、目を大きく開き、口も半開きで凄く驚いてくれたみたいニャ。


 きっとユーリちゃんもあたしに惚れてくれたはず……!


 そう手応えを感じつつも、あたしは園舎へ。ユーリちゃんの所に戻りたかったけど、園舎に向かえと指示されたので仕方なしに園舎へ入ったニャ。余計な一言をかすカミーサを一睨みしてから。


 園舎に入ると、赤髪で強面のレイド先生が『Sクラスの教室へ行け』と言ったので、素直にそこへ。Sクラスと言ったら、冒険者の卵としてはエリートコースに乗った様なもの。あたしの目的としては上々の滑り出しだったニャ。

 そんな事よりも、あたしはユーリちゃんの結果が気になったけど。


 出来れば同じSクラスになりたいニャ……!


 一緒のクラスなら、朝から晩まで。それこそ一日中ユーリちゃんと一緒に居られるニャ。そうなれば、自然と二人の距離も近付くはずニャ。夢が膨らむニャ〜♡


 そんな事を思いながらもSクラスの教室へ辿り着くと、ネコーノの奴がそこに居る事に思わずため息が出たニャ。

 ネコーノは、あーでもないこーでもない等と絡んで来たけど、あたしはガン無視したニャ。ホント、ムラムラ……違ったニャ。イライラして来るニャ。


 ネコーノの絡みにイライラしながらも窓の外を眺めながら待っていると、クリスとノルドもSクラスの教室にやって来たニャ。



「やっぱりミサトもSクラスだったか! ネコーノは意外だったけど」


「孤児院の仲間が共にSクラスとは、何やら縁を感じますね」


「クリス殿! 意外とは心外ですぞ、意外とは!」


(はぁ〜。うるさいニャ。しかし、やっぱりユーリちゃんはダメだったのかニャ……。あ、あの小鳥、美味そうだニャ!)



 クリスとノルド、それにネコーノが騒ぐ中、あたしは窓の外を眺めながらそう思っていたニャ。……小鳥はともかく。

 試験の残りの人数的に考えても、ユーリちゃんがSクラスならばとっくに来てても良い頃ニャのに、教室にやって来ない所をみるとそうとしか思えなかったニャ。


 ……と、ユーリちゃんの事を諦めかけたその時。レイド先生に連れられて、ユーリちゃんがSクラスの教室にやって来たニャ! 若干、モジモジしてたけど。

 ユーリちゃんの表情も何やら優れない様子ニャ。落ち着かないと言うか、心ここに在らず、と言うか。


 でも、そんな事はどーでもいいニャ! これでいつでもユーリちゃんと居ることが出来るニャ!


 その事が頭の中を占め、思わずニヤニヤしそうになったあたし。ニヤけない様に表情を引き締め、でも目元は耐えきれずに目尻が下がってくるニャ。明らかに変顔ニャ……! バレない様に一番後ろの席に着くニャ!

 ホントはユーリちゃんの隣の席が良いけど、こんな顔で近付いたら警戒されるニャ。


 そんな葛藤をしてる内、レイド先生の話が終わって自己紹介となり、その後、何やら学園長とマキトさんの話を聞く為に集会場へ。その集会場は『修練の間』と言って、『座学の塔』の三階に設けられていたニャ。パンフレットによると、修練の間では集会の他に生徒同士の模擬戦なども行われるらしいニャ。

 その集会場へ向かう途中、ユーリちゃんがよりにもよって『ツヨケン』の奴にぶつかってしまったニャ。

 ツヨケンは、一応あたしの兄ちゃんという事になっているけど、実は全く血の繋がりは無いニャ。これも『ある理由』でその設定にしてるから仕方なくだニャ。


 そんな事を考えてる場合じゃないニャ!


 ツヨケンとユーリちゃんが、何故か模擬戦という名の決闘騒ぎになってしまったニャ……!

 ツヨケンの実力は、冒険者で言うならばAランク相当だニャ。いくらユーリちゃんがあたしと同じSクラスに入学と言っても、ツヨケンには勝てるはず無いニャ!


 止めないと……!


 そう思っていたあたしは、ユーリちゃんの実力に度肝を抜かれたニャ。まさかツヨケンに勝つニャんて。しかも、犬狼状態に変化したツヨケンに。

 そして……ノーパンツだった事にも度肝を抜かれたニャ。


 ユーリちゃん!? 何故にノーパンツだニャ!? ……捲れ上がったローブの下がノーパンツは堪らないニャ♡


 ち、違うニャ! 早くここから連れ出して下着を履かせないと!


 その場の全員にあられもない下半身を晒し泣き出してしまったユーリちゃんを連れ、あたしは近くのトイレであたしの替えの下着を履かせたニャ。念の為に持って来てた下着が役に立ったニャ。ホントはあたしが履き替える予定だったけど。

 さっきのユーリちゃんのあられもない姿で既にあたしの下着は……。察して欲しいニャ。



「……緩いです」



 ニャんですと!?



「うるさいニャ! そんな事言うと返してもらうニャ!」


「ご、ごめんなさいです!」



 貸した下着が緩いとのユーリちゃんの一言に思わず反応したあたし。ユーリちゃんを見ると、確かに下着がずり落ちそうになってるニャ。

 素直に謝ってくれたユーリちゃん、ごめんニャ。次はピッタリになる様にダイエットするから、それで許して欲しいニャ。


 その後、ユーリちゃんと集会場に戻り、学園長とマキトさんの長〜〜〜い話を聞き終え帰路に着いたニャ。しかし、何でああいう人達の話は長くなるのか不思議だニャ。

 孤児院への帰りの途中、孤児院で食事を作ってくれてるマレさんがオーナーシェフをしている『マレさん家』に寄って、見た目がう〇こみたいな辛い料理を食べたりしたニャ。美味しかったけど、あたしには辛過ぎたニャ。


 孤児院に帰り色々と用を済ましてお風呂に行くと、再びユーリちゃんと遭遇したニャ。運命を感じたニャ♡ ……お風呂の床で何故か真っ赤になったミーナがお腹を見せてたけど、そこは無視するニャ。

 ミーナはともかく、ユーリちゃんは何やらハァハァと興奮しているご様子。



「ミ、ミサトちゃん! す、少しだけ、少しだけ肉球をプニプニさせて欲しいです……♪ ハァハァ♡」



 ニャ、ニャんですと!? よ、喜んで♡


 ――って、だ、ダメだニャ! 肉球はあたしの弱点だニャ! 大好きなユーリちゃんにプニプニされたら、嬌声を上げて昇天してしまうニャ!


 そんな姿、今はまだ見せられないニャ……!



「嫌だニャ! どうしてもプニプニしたいと言うなら、ミーナと同じ目に遭わせるニャ……!」



 そう言いながら両腕をワータイガーへと変化させ、更に全ての爪を伸ばしたあたし。それを見たユーリちゃんは謝りながらミーナと同じ格好(服従のポーズ)になったニャ。……このまま襲ってしまいたいニャ♡


 そんな感じでじゃれ合い、しっかり体を洗ってお湯に浸かり、お風呂から出た所でユーリちゃんから下着を返されたニャ。しっかりと洗った下着を。


 失敗したニャ……! もう少し早くお風呂に来てればユーリちゃんの匂い付きを手に入れられたのに!

 後悔先に立たず、とはよく言ったものだニャ。その夜は自分の間の悪さに枕を濡らしたニャ。


 それから一週間。冒険者学園の授業はそつ無くこなしたニャ。

 とは言っても、魔法の授業ではネコーノと組まされ、そのネコーノが唱える馬鹿の一つ覚えの『炎の猫キャットフレイム』に辟易し、剣技の授業では慣れない木剣の素振りを肉球が擦り切れる程やらされたニャ。苦手分野はやっぱり嫌いだと再認識したニャ。

 だけど三日目の罠の授業は、盗賊のジョブを目指すあたしにとっては得意分野だけに簡単だったし、四日目の授業……冒険者の基礎とも言えるサバイバルの授業も野草を使っての調理の授業だったけど、女の子としては当然楽勝だったニャ。何故かユーリちゃんが地に倒れ付してピクピクしてたけど。

 そんな訳で、学園の授業が始まってからのあたしとユーリちゃんとの距離は付かず離れずの微妙な関係だったニャ。だけど、今回の課外授業でその距離を縮めてやるつもりだニャ。やってやるニャ!!




 ☆☆☆




 ――という訳で、あたしはユーリちゃんの分までホーンラビットを狩ってやるんだニャ!


 こうして、あたしは当初の目的を変更し、ユーリちゃんと仲良くする為に頑張り始めたニャ。

 けれど、ユーリちゃんと仲良くなる事が切っ掛けであんな事になるニャんて。まさか、あたしが女神の一柱になるニャんて。


 この時のあたしには知る由もなかったニャ……!

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