第23話 決心

 家に帰り、俺は2種登録となることを夕食を食べながら舞子さんと岩城さんに伝えた。


「おめでとう青谷!今日は、お祝いね!」

「おめでとうございます」

「おめでと~天馬君!」

「よくやった、我が息子よ!!これで俺のヒモ生活に・・・ぐほぇ!!」

「は~いお父さんは、ちょっとこっちに来ましょうね~」

「あ~待ってくれ、わしにはまだ話が・・・」


 バタンと扉が閉められて、数秒後・・・


「ぎゃぁぁぁぁぁぁ!!!!」


 のり男の悲鳴が部屋に響き渡るのであった。


「いやぁ~毎日天馬くんの家は穏やかでいいねぇ~」


 そして、もう一人家にいるはずのない人物が・・・


「で、広瀬さん。どうして俺の家に上がり込んで普通にくつろいでるんですか?」

「え?そりゃだって、天馬くんの結婚相手なんだから当然でしょ?」


 当たり前だといいながら、ウインクをして見せる。

 そして、椅子から立ち上がり、俺の耳元で話しかけてきた。


「それに・・・言ったでじょ?今からデートするって優実先生に言えば、勉強免除になるって」

「なるほど…」


 ここは、俺が広瀬さんの案に乗るのが先決だと考えた。だが、その時頭によぎったのは、望結の泣いている姿であった。その姿を思い出してしまっては、広瀬さんと一緒に嘘をつくにしてもデートをするなどと、軽々しく言える気持ちにはなれなかった。


「ごめんなさい広瀬さん。今日はやめとく・・・」

「えぇ!?どうして?」

「そういう気分じゃないんです・・・」

「なら、私が今すぐにでもこのセクシーな体でその気にさせて・・・」

「はい、戯言はそこまで!!」

「ウニャ!」


 岩城さんが、暴走し始めそうになった広瀬さんの襟元をつまんで、家から引っ張り出す。


「話して優実先生!私は今から天馬君と濃密な夜を過ごすのぉ!!」

「はいはい、青谷君の勉強の邪魔になりますから、お暇しますよ!」

「い~や~だ~」


 幼稚園児のように駄々をこねながら岩城さんにズルズルと引っ張られて部屋を後にしていく。


「青谷君、明日の朝また伺います。それまでに45ページまで終わらせておいてください」

「わかりました」


 そう言い残して、岩城さんはズルズルと広瀬さんを引きずりながら出て行った。



 一人寂しくリビングに取り残され、静寂な日常が戻ってきた。

 食べ終わった食器を洗って、自室へと戻る。


 その間も、考えていたのは、望結のことだった。

 正直嬉しいことがあった半面、悲しいこともあり、気分が浮き沈みしていた。


「はぁ…」


 俺は部屋に籠って岩城さんか言われた課題をしている間。望結にどう謝ればいいのか考えた。まずは、俺の好きな人は望結だけだという誠意を見せなくてはならない。次に藤堂さんを追いかけて、望結を教室に置いてきぼりにしてしまったこと。

 そして、最大の山場が、俺がスペシャルヒューマンであり、今AV女優の渡良瀬歩に求婚されていることをすべて曝け出さなくてはならない。


 俺は、微かな望みを信じて、望結にメッセージを送った。


『大事な話がある。明日練習が終わった後、入り口のところに来てくれないか?』

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