僕の騎士団

叶 遥斗

§1

プロローグは大概読む価値もないって言うよね。


「そういうわけだから、君も学園の一員として今日からこのアミュレットを付けてもらうことになる。問題はないよね」


 差し出されたアミュレットは単純に装飾品として見ればお洒落なデザインでさりげなくもセンスを遺憾無く発揮していてまったくケチのつけようはない代物だった。けれど問題はその機能だ。


「申し訳ありません校長。もう一度お教え願います」

「いいよ。大事なことだし何度でも言おう。全校生徒に支給されるアミュレットは個人のポイントを常に計算している。誰に仕えているか、誰を従えているか、日々どんな言動でいるか、──授業での成績も一応反映されるけれどね、それ以上に重要なのは生徒同士が誰とどう関わるかってこと。君たち生徒の日常の情報はすべてこの僕に届く」

「つまりあれですか。このアミュレットを通じて盗撮盗聴し放題なのですね校長」

「君たちの所在地は確かにアミュレットで把握出来る。音声も確認出来る。校内であれば監視カメラの映像がある。でも盗撮はないかな。寮の個室なども監視カメラはないのだよ」


 一通りの説明を受けても半信半疑。渋い顔でいると校長は目の前で意地悪くにやりと笑ってみせた。


「もちろん君が嫌だっていうなら家に帰ればいい」

「それはないです。あんな家には帰りません。全校生徒が付けているものを僕だけ付けないわけにもいかないでしょうからこれは甘んじて受け入れます。概ね了承です」


 アミュレットを装着した僕を満足そうに見下ろして校長は高らかに宣言した。


「では君に騎士名を授けよう」


 この学園では皆、生まれも育ちも一度捨て、新たな生を授かる。家柄や繋がりを忘れ、一個体となる。それまでの名前は要らない。


 入学式前日に僕と校長が個人的に話した会話は以上だ。



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