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 他のフィールドでもリズムゲームプラスパルクールのマッチングは行われており、そちらの方は既に始まっていた。


 おそらく、ジャック・ザ・リッパーのいるフィールドでゲームがスタートしないのはコース設定で時間がかかっていると思われる。


 コースに関しては運営側で楽曲によって設定され、そのコースをプレイヤーが走る仕組みになっていた。


 コースの長さは楽曲の長さで変化し、楽曲の終了はゴールを意味している。他のリズムゲームと同様に、譜面がスクロールする形らしい。


 しかし、それでレースが成立するのか、という疑問は抱くかもしれないだろう。一方で、それが成立している様なゲームも存在していた。


 だからこそ、このようなシステムのリズムゲームが誕生したと言えるのかもしれない。


「なるほど、こう言うシステムなのか」


 フードを深く被ったままライブ映像を見ていたのは、漫画喫茶のスペースで若干くつろいでいる真田さなだシオンだった。彼女の真の目的は、どうやら別の何かがあるようである。



 リズムゲームプラスパルクールは一般的なリズムゲームとは異なり、全身を使う様なリズムゲームである。


 フィールドに出現するノーツに接触する事で演奏をしていき、ゴールを目指すという物で一般的なゲーセンにあるリズムゲームと大差はない。


 ただし、それはプレイヤー目線ではなくギャラリー目線での話だろう。実際に見るのとプレイするのでは――感覚は違いすぎた。


「確かに見た目は、あのリズムゲームをベースにしているのか」


 シオンは自分でも見覚えのあるリズムゲームのシステムとリズムゲームプラスパルクールが似ていると感じる。


 ノーツはフィールドに表示されている光るパネルであり、これを踏むと音が鳴るようになっているようだ。


 一定のラインでタイミング良く通過しないといけないらしく、これはノーツがラインに来たら目押しするタイプのパネルだろう。


 光るパネル以外にも、光るロードも存在し、こちらはその道を外れずに通過する必要性がある。リズムゲームで言うロングノーツと言うボタンの長押しが要求されるアレと同じらしい。


「システムのベースが分かれば、何と言う事はない。ARゲームだからとスルーを続けては、こちらとしてもリズムゲームプレイヤーとしての名折れになる」


 これらのパネルの仕組みが分かれば、何となく中継を見ていてもすぐに頭の中で変換され、見た目としては簡単に出来そうだと思ってしまう。


 シオンはFPSでは無敵かもしれないが、彼女は他のジャンルでは通じない。実際、最近始めたリズムゲームでは機種によって惨敗になる事も稀にある。


(しかし、本当にそれだけなのか? 明らかに何かを見落としている様な気配も)


 ライブ映像を見ただけではスコアの高いプレイヤーが一位で、それに続く形で二位、三位と表示はされている。


 しかし、スコアとコンボ数以外でライブ映像に表示されている要素がない。リズムゲームの場合はライフゲージに相当する様な物があり、それがゼロになると演奏失敗になるだろう。


演奏ミスをしている様なプレイがないので、判断に困るのかもしれないが――。


(プレイに関しても危険なプレイと言う物は披露していない。それに)


 道路には乗用車等は存在せず、明らかに今回のゲーム用に解放されている道路を使用している可能性が高いだろう。


 しかし、本当にそれだけなのか。危険なプレイと言うのは行われていないようには見えるが、プレイ経験もないようなゲームでそう言った認識をするのは炎上を招きかねない。



《コースが確定しました。まもなく、レースを開始します》


 暗殺者に見えるようなARアーマーを装着しているジャック・ザ・リッパーのARメットに、コース確定のインフォメーションが表示、彼もスタートラインに立つ。


 ジャック以外のメンバーは既に変更されたエリアで準備を完了しているので、ジャックだけがコース確定のインフォメーションを確認していなかったかもしれない。


(コースは直線メインと言うべきか。パネル次第で状況が変化するかもしれない)


 ガーディアンのプレイヤー二人はジャックの方を少し振り向くのだが、すぐにスタートラインの方を見つめている。一方で、特撮テイストの周囲から見ても異色のレッドダイバーは何も語る事はない。

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