「あ、ありがとうございます。私のために あんな大金。本当に なんてお礼を言っていいのか……」



 女性は 戸惑いを隠せないようです。


 それはそうでしょう。身も知らない者のために 驚くような大金を使ったのですから。



「いや、いいんだ、いいんだよ。ところで 何ら急いでいるようだけれど?」


 島太郎は 平然として話します。



「あの、私、しばらく仕事をしていなかったんです。けれど、新しく仕事が見つかって 今日初出勤なんです。だから 絶対遅刻してはいけないって急いでいたんです。

 あの、もしご迷惑でなければ 一緒にお店に行きませんか。小さな居酒屋なんですけど」



 なんて素敵な申し出でしょう。

 大好きな顔立ちの女性の言葉に、有無もありません。


 かくして 二人は女性女性が勤めるという、居酒屋へ向かうのでした。



 ※ ※ ※ ※


 そのお店は、薄汚れたビルとビルにはさまれた隙間にありました。 


 こぎれいなたたずまいのお店の入り口脇に 立派な檜の一枚板に、これもまた立派な文字で『居酒屋 竜宮』と書かれています。


 何やら不思議とありがたい感じがする お店です。


 この雰囲気は 一体 何なんのでしょうか。



 

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