そんな島太郎も、やがて 中学生となりました。

 もちろん、母親が経営する学校です。

 

 色気づいた女の子が、島太郎に しきりにモーションをかけてきます。


 可愛い子やきれいな子ばかり。


 けれども島太郎は、母親のような優しさを持った子が好きでした。

 そして何より、おかめ顔のユニークな顔立ちが好み。


 交際を断ると、女の子は手のひらを返したように冷たく 言い放つのです。

「フンッ! 誰があんたなんかと。ちょっとからかっただけなのに、本気になって。そんな つるつる頭、かっこ悪くて、連れて歩けないわよ」


 しかもたくさんの人のいる前で。



 島太郎の人間不信は、やがて 人間嫌いを伴って、ますます強くなっていきます。

 



 ※ ※ ※ ※


 島太郎に転機がやってきたのは、高校二年の時でした。


 島太郎の母親が、体調の不良を訴え、入院したのです。

 そして、精密検査の結果、不治の病で余命いくばくもないという、まるで 携帯小説の上でのような 診断が下されました。



 島太郎は、思います。


 この世に、神や仏はいないのかと。



 なぜ、自分を苦しめる人たちが のうのうと生き、自分の唯一の味方である お母さんの命がが消滅に向かうのかと。


 悩み苦しみながらも、島太郎は 生きています。


 

 どうやら母親は、自分が どういう状態にあるのかを 知っているようです。

 きっと 父親が無情にも話したのでしょう。



 そして父親は、母親の見舞いにいくことすら禁止しました。


 島太郎の かっこ悪い頭を 病院で晒すな、というところでしょうか。

 


 母さんに会いたい、一目だけでも会いたい。


 島太郎の願いもむなしく、母親は 冷たい北風が吹く日、ひっそりと息を引きとったのでした。



 母親の親族は父親と島太郎だけです。



 莫大な遺産が手に入りました。

 しかし、ちっとも嬉しくありません。



 それに比べ父親は、母親が経営していた、学校法人も手に入れ、なにやら とても嬉しそうです。


 それは、島太郎にとって許しがたいものでした。

 


 そして父親に対しての不信感もますます深まっていったのでした。


 

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