第7話

 自由ヶ丘中学校でも金太が入学する以前から何度も教育委員会やPTAで取りざたされるのだが、いつの場合もなにかをきっかけに突然発熱し、いつの間にかうやむやになってしまっていた。結果なにも解決されていないというのが現状だった。

 だからイジメはいつになっても見えないところで白癬菌ようにしつこくはびこっているのだ。

 明朗快活な金太もさすがにこれにはまいった。相談したくても回りには誰もいない。担任の安田先生に話す勇気もなかった。


 金太のクラスには、小6のクラスメートだった早乙女愛子さおとめあいこがいるが、あまり親しいというほどでもなかったから、ほとんど口をきいたことがない。それくらいの仲であるということと、早乙女愛子が女子であることが相談するに至らない理由だった。

 思い悩んだ金太は、ある日思い切って、すぐに姉の増美にイジメに遭っていることを相談した。

 姉の増美は同じ中学の3年生で背が高く、男まさりの性格からバスケット部のキャプテンを任されている。

 泪ながらの金太の話を聞いた増美は、早速次の日授業がはじまる前に金太のクラスに行き、イジメのリーダー格である中曽根大基を呼びつけて、「今度弟をいじめるようなことがあったら、姉のあたしが許さないからね!」と、ドスのきいた声を頭から浴びせた。

 それがあってからは、潮が引いたように金太へのイジメがなくなった。ところが、イジメのために学校に来ているような大基たちは、突然手持ちぶさたになってしまい、早速次の獲物を物色しようと目を凝らしはじめるのだった。

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