第9話 歴戦の兵士


 「少佐 村の包囲完了しました」


 メガネを掛けたインテリ風の男は、退屈そうにあくびをしながら返事をした。


 たかが娘一人に何でこのワタシが対応しなきゃなんだ、軍上層部の命令は絶対だがアイツからの命令が気に入らない ムカつく ムカつく ムカつくッ! 


 「娘を捕らえに行った奴らからの報告は! 」

 「定時連絡ありません」

 「ならさっさと攻撃しろ!村全部で娘をかくまってる可能性がある一人も逃がすな、 抵抗する場合は容赦するな 娘の生死は問わん やれッ! 」


 他国で戦闘行為をすることは国際法上許されることではない、しかもターゲットの娘はこの国のお姫様だ こんなことが世界に報道されたらガリア連邦の立場が危うくなるだろう。 

 ・・・・なんて考えるガリア連邦ではない 全世界を敵に回しても対抗することが出来る軍事力を持っている我が国に非難する国なんてない。


 最強の軍事力を持った国は法律・条約なんて関係ないのだ。文句が有るやつはかかってこい!が今のガリア連邦の考えだ。


           ☆


 佐治は情報を整理した。


 こちらの戦力:兵士 30名

        迫撃砲1門 20発     

        12.7m機関銃 2門

        対戦車地雷 2個


   敵の戦力:兵士 約120名

        装甲車両 2両

        攻撃ヘリ 1機

        その他 不明


 北 40名 

   装甲車両1 

   ヘリ 

 西 40名

   装甲車両1 

 東 20名 

 南 20名。

 北と西が激戦になるな。


 「ボブ 9人連れて西だ 機関銃も1門持っていけ」

 色黒スキンヘッドの強面ボブは、仲間の中でも一番体格が大きく怪力の持ち主だが外見に似合わず優しく仲間の信頼も強い ガリア連邦軍での階級は中尉 歴戦兵士の一人だ。

 「了解」

 「マキは9人連れて北に行ってくれ、一番の激戦になる、歩兵の進行を少しでも遅らしてくれ 装甲車両と攻撃ヘリが来たら直ぐに退却だ」

  マキは 女兵士 ガリア連邦軍では女兵士も珍しくない 狙撃の腕はガリア連邦軍でもトップ5に入っていた。倒した敵の数は5000人を越える 付いたあだ名は『ガリアの赤い悪魔』 年齢は23歳 ガリア連邦軍の時の階級は大尉。 年齢に相応しくないボーイッシュな赤髪に幼児体型と童顔で、初対面の相手は必ず子供と間違う。

 「それじゃ、機関銃1門貰うね」


 「東はガマ爺頼む、4人連れていってくれ」

 初老のガマ爺 バネット隊一番の古株だ 専門は爆破 ガリア連邦軍での階級は少佐。

 「粗末な物資じゃなぁ、久しぶりにドキドキするのぉ」


 「かなり不利な状況だ、特に北側の守りが重要になる、マキ どれくらい時間を稼げそうだ?」


 「持って30分ね、歩兵だけなら1時間はいけるけど装甲車と攻撃ヘリが来たら30分も持たないわ」


 いくらマキの狙撃の腕が良くても装甲車両と攻撃ヘリの相手は出来ない。四方のうち一角でも崩れたら他のところは背後から攻撃を受けることになる。


 「マキのところが後退し始めたら、他も後退して俺の所で最後の防衛線を作る、ガマ爺は村に侵入してきた装甲車両の爆破を頼む、兎に角1分でも時間を稼ぐんだ」

 

 「稼いでどうすんのよ、援軍でも来てくれるの?」


 「分からない・・・・でもバネット特佐がそれに賭けた」


 「それを早く言ってよ、姉さんの賭けがハズレた事は一度もなかった、マキは信じるよ」


 「俺も信じる」


 「ふん 早く済ませて畑仕事に戻らせてくれ」


 「よし! 配置に着いてくれ」


 「「「了解! 」」」


       ☆


 レアは時速150キロの速さで走っていた。


 『村への無差別攻撃に切り替わりました、村側は30名で応戦開始』


 「アレッサ! もっとスピード出そう」


 『ダメです エネルギー残量50%を切りました これ以上スピードにエネルギーを費やすと着いたときのエネルギーが10%を切ります』


 「ボクが先に行ってようか?ぷぷッ」


 「ぷぷ! お願い!みんなを守って! 直ぐに追いつくから! 暴れ過ぎちゃダメだよ! 」


 「分かった 任せて レアは口笛でも吹きながらのんびり歩いてきなよ ぷぷッ!」


 ぷぷは目の前に魔方陣を作ると、魔方陣の中に飛び込んだ。




 


 

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