第8話 空気を切り裂く音


 呼び鈴が荒らしく鳴り響く。


 ロビーの掃除をしていたバネットを、灰色の軍服を着た者達が取り囲んだ。


 「掃除したばかりなんだ、汚い靴で入って貰いたくないね」


 「うるさい、聞きたいことがある 素直に答えるなら手荒な真似はしない 昨夜 この女がここに泊まったな! 何処にいる?」


 ドレスを着たあの女の子の写真だった。


 「知らないね、他所を探しな」


 「手荒な真似はしたくないと言ったっろ」


 バネットは小銃を向けられるが、腕組をして睨み返し抵抗の意思を示す。


 「バカな女だ、やれッ!」


 だが、その指示が実行される前に部下達は倒れていた。


 上官は一瞬の出来事に訳がわからず右往左往していると、背後から首筋に細い金属が当てられ動きが止まった。やっと状況を理解したが遅かった。


 「ッ!や やめッ」


 ゆっくりとナイフが横にスライドした


 「佐治・・・・掃除したばかりなんだよ」


 佐治と呼ばれた男は、汚れたナイフをズボンに擦り汚れを拭き取った。


 「すいません、ですがこれからもっと汚れると思います、村の周囲は既に包囲されていました、兵士150 装甲車両2 戦闘ヘリ1 かなりの戦力ですね」


 佐治は落ちていた写真を拾い上げた。

 「この国のお姫様でしたか」


 「ああ、ただの家出少女じゃなかったか アタシも耄碌したかね」


 バネットは近くにあった椅子に座った。


 「で、どうします?相手にするにしても準備が十分で無いので苦戦しますね 逃げますか?」


 「いや、逃げる方がリスクが高い 守りを固めて援軍を待つ 村長に連絡して今すぐ住民の避難をさせるんだ」


 「援軍ってこの国の軍ですか?多分、到着するまで4時間はかかりますよ?そんなに持ちませんよ」


 「分かってるよ、ワタシが待つのはそっちじゃない」


 バネットは玄関の扉に吊るされた呼び鈴を見つめる。


 「・・レア君達ですね あそこから急いでも2時間 それに来てくれるかどうか・・いつもの賭けですか」

 

 そう、来てくれる保証もワタシ達が全滅するまでに来てくれる保証も無い。ただ、1つだけ確かな事がある。


 「ワタシは賭けに負けたことが無いんだよ、佐治ッ! 皆に連絡! 準備にかかるよ」


         ☆


 部屋で身支度をしていると、村にサイレンが鳴り響いた。


 えッ!? なに事!? 窓に駆け寄ると外の風景はまるで蜂の巣を突っついたかのような騒ぎになっていた。大音量のアナウンスが流れた。


 『村長から、住民は急いで村の南にある防空施設に避難をしてください、繰り返します』


 避難ッ!? どうして? 何があったのッ!? 理由は分からないけど、私も行った方が良いよね 南の防空施設って 場所分からないけど、皆が行く方に行けば何とかなるよね


 ドアに駆け寄り開けようとした瞬間、外側からドアが開けられた。


 「全く、面倒事はごめんだって言ったろ、お姫様」


 ッ! バレたッ! 


 「な、何で分かったの?」


 「あんたにお客さんが来たのさ、無礼な奴だったからお引き取り願ったけどね」


 私に会いに?捜索隊?こんなに早く見つかるなんて・・違う 違うと思う なら誰?誰が私を探しに?このサイレンと関係が?・・・・ まさかッ!


 笛のような空気を切り裂く音が近づいてくる?


 「ッ! 伏せてッ!」体を床に押さえ付けられる。


 大きな爆発が近くで起こった。

 衝撃と爆風が建物を襲い、窓ガラスが飛び散り板の壁が吹き飛ぶ

 

 「始まっちまった! 立ちなッ! ここから離れるよ! 」


 ☆後書き☆

 さぁ始まったね。バネットさんは元ガリア連邦軍の優秀な将校だったんだ。だけど、ちょっと訳アリで佐治を含めた数人と一緒にこの国に亡命したんだ。この話もまた今度するよ、そんなことよりボク達が戻るまで頑張ってね あっ!レア お腹空いちゃった ちょっと休憩しない? 次回は防御戦開始ッ!

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