呪いの絵馬を楠木(くすのき)に打ち付ける女
私が 武蔵野で有名な深大寺にお邪魔したときの話です。(
知る人ぞ 知る 私の最後の恋人、ザビエルさんと別れたばかりで(ちなみに、今では 良い友人です)
私はネタ帳を持って
それに
など
色々回って最後に夕方になって
そして、そういや、
なんて、思いながら 何気なく絵馬を見ました
とか
父の病気を治して下さい
とか……
うちの、
など。
私がもし神様ならば 叶えてあげたい絵馬の数々を見て回っていると、
私は
すると
『
と、そこには 書いてありました。
カラン、と 音がしました。
私がボールペン(Dr.グリ○プ)を落とした音でした。
はっ と しました。
いつの間にか辺りは
やばい。
ヤバい、やばい。 何がやばいって、このタイミングで これ を 見つけてしまったことが やばい。
古語だと やばいは 『矢張い』 と 書きます。
要は 自分を 矢で貫いてみよ! という
決して 口にしては いけない
気がつくと
時計を 見ると もう19時半でした。
まずい…… 逃げないと。
そう。浅黒い絵馬は一つでは、ありませんでした。
『浅野が死なない
『浅野め……
『もうすぐ
『
冷や汗が
私は
かあん…… かあん……
気付くと 小さな
こんな時間に神楽舞を
自分の
私は
目を 耳を 鼻を 舌を 直感を
私は
目を
そうすれば
ぱっ と 目を開けると 飛び込んできたのは
一人の女が
左手には太い釘…… 初めて見たが
何かの花の香りがしました。サボテンの花……
しかし、それさえ 今は それに
怖がるな
高校生のときに母に
ヨガは 二十年近く
勝てない相手ではない!
勇気を出せ! なんのために習った
痩せた 女 が
……
カン!
お前がいなければ……! 浅野はまだ生きていた!
カン!
お前さえ、お前さえ、居なければ……!
血を
ふと、祖母の声が 耳をよぎります。
「いい、真世。 お前に 一つだけ
え?
「
「うん! ちゃんと
祖母は 私をいい子良い子 するように 撫でました。
「邪法は
私は はっ と しました!
いつの間にか 若いような、しかし、
私は思わず息を飲み
私のことなど
私はじりじりと
まるで
そして タクシー乗り場まで たどり着くと、大急ぎで
「す、すいません! 私 立川の
ぜいぜい、という 呼吸音 が
「大丈夫ですか⁈」
「大丈夫です。
私は
震え止めの
スマホの充電は50%。私は即座にスマホを節電モードに切り替えて、この体験談を書くべきかどうか、メモっておくかどうか迷いました。
すると、またもや 私の頭の中に響く 祖母の声。
『今はダメ。あんたは力を使い果たして 死にかけている。私がアンタの記憶を封印する』
『封印?』
『今は夏だ。なのに、お前はものすごく寒くて震えている。冷や汗もかいている。つまり、
『えっ!? どうしたら……』
『お前は、優しいから、あの鬼のような女に同情もしているだろう。可哀そうだ、哀れだと思ってはいないか?』
『……怖い、と思ったけれど、確かに言われみれば……』
『同情する必要は一切ない。人を呪わば穴二つ。あの女は間もなく死ぬ。 だが、
『……やってみる』
私はすう、と息を吸い込みました。
『ん、なんか、落ち着いて? きた?」
『じゃあ、神の
『こ、木の葉のさくや姫? なにそれ』
『意味や名前について考えを
『わ、わかった。こ、コノハノサクヤヒメ……コノハノサクヤヒメ……!木の葉のさくや姫!!』
ふわ
ん?
なんだろう、今、桜の花びらが、舞い散ったような気配が……
『あんた、
『うん……』
『その香り、思い出せるかい?』
『……思い出せる』
『明日には、お前はこのことを夢だとおもって忘れている。でも、いつか必要になったとき、思い出す。私が思い出させる』
『えっ こんな怖いこと……忘れられるかなあ?』
そのとき、タクシー乗り場に黄色いタクシーが一台 さっと滑り込んできました。
車のライトに照らされて私はやっと人心地(ひとごこち)付きました。
タクシーはゆっくりとバックして、運転手さんが、私に『大丈夫ですか?』というような視線を向けたので、私はゆっくりと頷きました。
ドアが開いたので乗り込むと、運転手さんは「顔が真っ白ですが、大丈夫ですか?」
と私を慮るように言いました。
私は「大丈夫です」とだけ言って、精神安定剤を一錠だけ取り出して、ゆっくりと熱いお茶で飲み下しました。
「立川までは、道路が混んでいるから、20分くらいかかるかな。メーター倒しておきますから、休んでいてくださいね」
私はご厚意に甘えることにしました。小さなピンク色の錠剤はてきめんに利き、疲れもあったのでしょう。私はゆっくり、眠りに落ちていきました。
……夢の中に、あの鬼のような女が出てきました。ただ、事実と違うのは、その女が絵馬に釘を打ち付けているだけではなかったこと。
女は浅黒い絵馬に手をかざし、左手を縫い留めるように槌を振るったのです。八寸釘が女の手を貫き、鮮血が迸りました。
「ふふっ」
痛みなど無いかのように、女は笑います。
「これでこれでこれで願いが叶う、かなうはずだ。浅野は死ぬ。夫の
そして、頭に灯している二本の
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実はもう亡くなったうちの祖母には少し、不思議な力がありました。
今なら、気功とでも言うのでしょうか。
例えば、ウオノメを手をかざすだけで治したり、子供を授からないという女性のお腹に手を当てたりすると、コウノトリが来たり。
子供の手に筆で文字を書いて、疳の虫、という白いニョロニョロを出すこともできました。
霊感のようなものもあって、あの人にはお殿様がついてるねぇ、などと呑気な調子で怖いことを言っていた記憶があります。
私も時たま恐ろしいものに出会いますが、それは祖母--魔女の孫だからなのでしょうか? それとも単なる幻視? 幻聴? 夢なのでしょうか。
すべては藪の中。謎のままなのです。
(了)
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