第3話

 少年が目をさましたのは、次の日の夕方でした。サンタは暖かいコーンのスープをこしらえて少年の前にすすめると、空腹だった少年は脇目も振らず懸命にスプーンを口に運びました。そしてスープ皿からふと顔を上げたとき、信じられない光景に目を疑いました。


 サンタクロースが七人もいたのです。


 その七人のサンタクロースの目は、申し合わせたようにベッドで食事を摂る少年に向けられています。少年はまるで七匹の狼に睨まれたウサギのように身をすくめるのでした。


「君の名前は何ていうんだい?」


 昨日のサンタが優しくたずねました。


「マイクだよ」小さな声でいいました。


「そうか、マイクか。ところでマイク、あそこで何をしてたんだい?」


「何をって?」


「つまり、家に帰らずにあそこにいたっていうことは、ひょっとして、家出をしたのと違うのかい?」


「ううん、違うよ。ぼくにはもともと家なんてないんだ」


「家がない? もしよかったらそのわけを話してはくれないかい?」


 マイクはそういわれてしばらく黙ったままでいました。やがて意を決したようにぼつぼつとこれまでのことを話しはじめたのです。


 マイクの話はこうでした――。


 小さいときから父親のいないマイクは、ある時期まで母親とふたりで細々と暮らしていたのですが、生活が思うようにならなくなり、母親は涙を飲んで修道院にマイクを預けることにしました。


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