第51話 休み休み行ったら集落決戦に

草原を軽快に走る軽キャンピングカーとキャンピングカー。

とてつもなく広い。

走っても走っても草原が続く。

北海道でも、こうは行くまい!

行ったこと無いんだけどね。


しかし、俺は、運転して景色見て楽しいんだが、みんなは、楽しいのだろうか?

草原を、ただひたすら走っていると不安になった。

俺のワガママに、みんなを巻き込んでいるのではないだろうか?

モヤモヤする。


「ルファス、お昼も近いし止まるぞ」

俺は、ウインカーをつけてブレーキを、ゆっくり踏み込み軽キャンを停車させた。

ルファスのキャンピングカーが隣に停車して、みんな降りてきた。


「ルファス、みんなを集めてもらえるか?」

俺は、軽キャンのサイクルキャリアにつけてあるアイテムボックスから、テーブルや椅子を嫁さん達と運びながら言った。

みんなも手伝いに来てくれて食卓の準備があっという間にすんだ。

人手があると、やっぱ楽だね。


みんなが、席に着いた。

「みんな、出発してから、これまで良く着いてきてくれてありがとう」

俺は、突然そんな事を言ったので、みんなキョトンとしているようだ。

「で、今日は、ここで移動は終わり。 宴会しようぜ!」

俺は、慰安の為、宴会を提案した。

( 不安なまま運転するのも嫌だし )

本来なら、今日は沢山走る予定だったが、ゆっくり行こう。

焦っては、録な事にならない!

休み休みいきゃ良いいよな?

俺は、みんなの様子を伺う。

「宴会だぁ! ィヤッホー!」

ウィズが大喜び。

「急ぐ旅でもないしね」

レイラが俺に笑いかけた。

概ね好評だ。

良かった。


俺は、軽キャンに戻り変形機能を使い、家モードにした。

家の中から、食材とかを外に持ち出しパーティーをするが、みんな楽しそうで俺は嬉しかった。

仲良く楽しくが軽キャンクラブのモットーだからね!


その日、大いに飲んで食べた。

そして、日が落ちる頃、宴会が終わり片付けを済ませた俺たちは、家に戻った。

俺は、部屋でボーッとしながらベッドに横になっている。

ドアをノックする音が聞こえた。

「あいてるよ」

俺が言って、中に入ってきたのは、

スレンダーな美人タイプのレイラ

超乳と大きなお尻のボン、キュ、ボンのプロム

キャスカと変わらないくらいの見た目がロリだけど、誰よりも年上なミロース

そんな俺の大好きな嫁さん三人だった。

それから俺達は……ま、言わなくてもわかるか。



朝、まだ暗い内に俺たちは出発した。

昨日、楽しんだ俺達は気分が良い。

草原をスピードをあげて進む。

事故の心配もないからね。

辺りが、明るくなる。

朝日だ。

神々しいその光を浴びながら、軽キャンピングカーとキャンピングカーが草原を疾走する。

朝露が車に弾かれ朝日を浴びて煌めいていた。


出発して、山を一つ越え、辺りが暗くなり始めた時に集落が見えた。

俺達は、集落の中を走る。

窓の外、人々の顔が暗いのが気になった。

集落の外れに軽キャンを停車させ、変形機能で家を出現させる。

ルファスは、家の横にキャンピングカーを停めた。

小さな集落だ、食堂も無いだろう。

自炊を決定して、食事の準備が終わるまで俺とルファスは、家の外でキャンピングカーに乗り込み機能を調べる事にした。


「カーナビのここを、こうするだろ」

俺が、タッチパネルを操作して説明する。

「あー、そうか! それじゃ、これで機能の取得が出来たんですね」

ルファスが新機能の取得方法を俺から教わって、機能をいくつか取得した。

「ルファス、あれなんだろうな?」

一生懸命カーナビをいじっているルファスに言った。

ルファスが顔をあげて見た先にガラの悪そうな集団がいた。

集団の前に老人が一生懸命に何か言っている。

「あっ!」

俺とルファスが同時に声をあげた。

老人が殴られたのだ!

「行くぞ!」

俺は、ドアを開けて外に出ながら言った。



「村長! 俺たちに渡す、食料と金がないとは、どう言う事だ? あぁーん!」

モヒカンの男が、倒れた村長を見下ろしながら言った。

「昨日渡した分が全てです、村にもう食料や金などないですじゃ」

村長が必死に言うが、モヒカンは無慈悲に、おじいちゃん村長を殴り付ける。

「ばか野郎! それは、昨日の分だろう? 今日の分の集金にわざわざ来てあげたんだぞ? お前は、それを裏切るのか」

「はい、ドーン!」

俺のドロップキックがモヒカンに当たる。

モヒカンの顔が俺の足に押されて歪む。


ドガァーーン!!


モヒカンが吹っ飛ぶ。


「何やってるんですか?」

ルファスが走って来た。

「おじいちゃんを、あの世紀末モヒカンが、いじめていたんだよ」

俺の言葉にルファスは、怒りを込めた目を、おじいちゃんをいじめていた集団に向ける。

「やりますよ」

俺に聞いてきた。

「殺さないように、こらしめてやりなさい」

俺の言葉を聞いたルファスが魔導式自動転送装備装置を作動させる。


ルファスがフル装備になり、手にはロングソードが握られている。

斜に構えたルファスが剣を集団に向ける。

「去るか、殺されるか決めろ」

ルファスが静かに言った。

( 甘いなルファス 、逃がしたらコイツらまた、この集落を襲うぞ )

俺は、ルファスを見て思った。


「なんなんだテメーら! ぶっ殺してやる」

集団が、逃げる事なくルファスに挑む方を選択した。

( バカな奴等だ。 大人しく逃げれば助かったのに )


無謀な集団が、あっという間にルファスにやられた。

骨が折れた者もいるようだが、死者はいないようだ。


「誰かは、わかりませんが、助かりました。 ワシはこの村の村長をしているのですが、そこでのびてる腐れ野盗に村が強請を受けておりました」

村長がルファスに倒され、ぐったりのびてる野盗を踏みつけながら言った。

辺りの家から、男が出てくる。

様子を伺っていたようだ。

出てきた奴が、だまって、野盗を縛り上げていく。

「じいさん、野盗は、これで全部かい?」

野盗の武器や防具、財布を一生懸命剥ぎ取っていた村長が、俺の方を向いた。

「どうでしたかな? 前に来た時は、まだ、いたような」

それだけ言って作業に戻る村長。

「じゃぁ、また来るんじゃないのか?」

心配した俺が言うと、

「コイツらを人質に戦いますじゃ」

たくましいなと俺は思ったが、最初から戦えば良かったんじゃないか? とも思った。

「そうか、がんばれよ」

俺は、それだけ言って、その場を立ち去ろうとしたが、

「ヒロシさん! こんな、老人を見捨てるんですか!」

ルファスが言った。

後ろで、野盗の装備品その他を全て剥ぎ取った村長が、男に持っていくように指示をしている。

「いや、ルファス、コイツらなら大丈夫だろう」

俺がルファスに言った時に、

「ゴホ、ゴホ、旅のお方、この哀れなジジィとこの村をお救いくだされ」

弱々しく村長が言った。

ちょっと待て、お前さっき元気いっぱいで追い剥ぎしてたじゃん!

「ほら、ヒロシさん可哀想じゃないですか」

ルファスが、ばっちりジジィに騙されたようだ。

「ダメだ。 野盗の残党は今回襲撃してきた奴等より少ないんだろう? ここの村人で対処出来るだろう」

俺の言葉に、村長が不機嫌な顔を見せたと思ったら、

「それじゃぁ、お前ら金目の物を置いて行け」

と、本性を表した。

付近の家々から、男達が出てくる。


俺とルファスは、ここの住民に囲まれたようだ。

「おじいさん! これは、一体」

ルファスが驚いている。

「オメーはバカか! 俺の言う事、聞いて野盗ぶっ殺して来てりゃ死ぬ事もなかったのにな!」

村長が笑って言った。

「おい、この村の住民は、どうした?」

俺が村長に向かって聞いた。

村長が俺を見て黙った。


「いつ、気づいた?」

村長が俺に言った。

弱々しいジジィは、もはやどこにもいない。

「そうだ、俺達が、この村の奴等をぶっ殺して、乗っ取ったのよ! それなのに、別の野盗が来やがって……そいつらの財産も奪う計画がテメーらのせいで台無しだぜ」

と、俺が適当に言った言葉にペラペラと白状してくれた。

そりゃそうか、俺とルファスをここで、ぶっ殺す気なんだろうから、しゃべったんだろう。

「バカだね、お前ら、俺達に勝てるとでも?」

俺は、笑って言ってやった。


「バカは、お前だ! 仲間が無事だといいな」

ジジィが言った。

( お前、レイラ達に…… )


「お前、死んだぞ」

怒りが頂点に達した俺が言った。

そして、魔導式自動転送装備装置を作動させる。

真っ白な制服に身を包んだ俺の手には、棒が握られていた。

棒が真っ赤に染まっていく。

( なんだ? 今まで、こんな事なかったぞ! )

棒の持ち主の俺が一番驚いた!

「手加減しない、殺す!」

ルファスが、かなり怒っている。

ロングソードに魔力を込めて炎を纏わせた。


ジジィ達が、驚いて後退りした。


「なんだ、テメーらは! ぶっ殺せ!」

ジジィの号令がかかり、俺達を囲んだ奴等が一斉に向かってきた!

俺と、ルファスが武器を構える。


ルファスがロングソードを振ると、バタバタと襲いかかってきた奴等が倒れた。

ルファスは、キャスカに危害を加えようとしたコイツらを許さないだろう。


ふ、

「それは、俺も同じだ!」


ブン!


あれ? 棒がいつもより軽いぞ?

そう思った時には、敵に棒が当たっていた。


ビシャァ!


棒が頭にヒットした敵が脳ミソを飛び出させて頭が弾けた。

な、なんて威力だ。

「オヴェェェェェェ!!」

俺は、気持ち悪いものを見て吐いた。

俺の怒りが燃え上がる!

グロいもの見せやがって!


爽やかさが売りのこの小説にグロは要らないとばかりにソフトタッチ攻撃を繰り出す、優しい野上博志!

たぶんグロいのを見たくないだけなのだろう。

弾けないようソフトタッチ攻撃でも、棒が触れた敵が吹っ飛んでいく!



次々倒されていく敵。

ジジィの顔がひきつっていく。

たった二人相手に、手下がなすすべもなくやられていくのを見守るしかなかった。

もう少し、もう少しで、奴等の仲間を人質に出来るハズ! その望みを胸にジジィは、時を待った。

「もう少し、もう少しなんだ!」




そして、ジジィ以外の敵はいなくなった。


「思ったより、早かったな」

俺は、ルファスを見て言った。

「ヒロシさん、アレ、私が殺っても?」

ジジィを指差して俺に、ニッコリ笑いかけてきた。

「殺すな、お前の剣が汚れる。 これ使いな」

俺の棒を渡してやった。

なんか、普通の色に戻っていた

「ありがとうございます」

俺に向かって礼を言うとルファスは、ジジィの方へ歩いていく。


一歩、また一歩、ルファスが近づくが、ジジィは恐怖で動けない。


スパーン。


ルファスが上段から打ち下ろす。


ジジィがフラフラしている。


「ん?」

ルファスが、ジジィの服を脱がせてる。


俺は、ルファスの守備範囲の広さに、戦慄を覚えた。

あんな、ジジィにまで、興奮するのか……?

思わず、目をそらす俺。


「ヒロシさん!」

ルファスが叫ぶ。

(一緒にってか? マニアックすぎるぜ)

俺は、見たくないが、チロッとだけ目をやる。

ルファスが、ジジィを後ろから羽交い締めしてこっちに見せてる。

お先にどうぞって事? 嫌だよ!

ん?

「あれ?」

目の前のジジィの肉体は、筋骨粒々ムッキムキだった。

「テメー! ジジィじゃねーな!」

俺が言うと、「てへ」ってジジィモドキが笑った。

イラついたので、ルファスに貸した棒を取り返してぶん殴った。


ジジィモドキが鼻血を出して気絶した。




集落の中、走る影が二つ


「ヒロシさん! 早く!」

俺の前を走るルファスが言った。

「さ、先に行って~」

俺は死にそうになりながら、ルファスに言った。

「すいません」

そう言うと、ルファスがスピードをあげて走り去った。

俺だって、学生の時は、クラスで6番目に早かったのに、やるな!

キラッ

と、ボケてみる余裕もないくらいゼーハー言いながら、一生懸命走りました。



ルファスが突っ立ってる。


「ゼー、な、なに、ゼー、や、やってるん、ハー、だぁ?」

俺は、死にかけゾンビのようにフラフラになりながらルファスに言った。


「あ、ヒロシおかえりー」

レイラが、俺を見つけて駆け寄ってくる。

屈強な男が頭を捕まれて引きずられている。

「ひぇ~」

思わず、変な声が出てしまった。

辺りをみると、沢山の男達が倒れている。

呻き声をあげて苦しそうだ。


…だよな、ここに攻めこむなんて、自殺行為以外の何者でもない。


「ヒロシがいなくて、怖かったゾ」

レイラは、可愛く言ったつもりなのだろうが、その手に引きずった男を持ったままの姿は、恐怖しかない。


「ぶ、無事で、よか、よかった」

俺は、ぎこちない笑顔で言った。

「家に入りましょう!」


ポイっ!


レイラが、ゴミくずを捨てるが如く手にしてた男をすてて俺に言った。

俺は、黙ってついていく。

他のメンバーも外にいた。

ウィズとバンが、ユリスとライカの戦闘訓練に暴漢を使っている。

暴漢は、ズタボロになりながらも、やめる事を許されないようだ。


そう、心配は、これっぽっちもなかった。



次の日ーー


俺たちは、悪党どもを放置して出発する。

アレだけの怪我だ。

しばらく悪さ出来ないだろう。

ってか、生きていたらな……



俺たちは、街を目指す。


俺は、今回の一件で嫁さんを、怒らせてはいけないと思った、爽やかイケメンの俺は、颯爽と軽キャンを走らせる。


道が現れたんだ、街は近いだろう!

俺は、街道を進むのだった。

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軽キャンピングカーと異世界とおっさん ~無敵の軽キャンと成り上がる~ ミルク @kaneki-milk

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