第29話 ラガス王国攻防戦 その1

ラガス王国に到着した頃には、辺りが薄暗くなっていた。

今日は疲れたので、街はずれに軽キャンピングカーを停めて、車中泊をする事に決めたが、ちょっと働いてもらおう。

レイラ、プロム、キャスカは食事の用意などがあるので残し、後のメンバーには、不動産屋を探してきてもらう事にした。

指示し終えた俺は、早々に軽キャンに戻って泥のように眠る。


ルファス達が、街につき、お目当ての不動産屋を見つけた頃には、辺りは、すっかり暗くなっていた。

駄目元で、ルファスが店のドアに手をかけると、すんなり開いたので、みんなで中に入った。

「いらっしゃい。 こんな時に、お客さんかい?」

疲れた感じの店主が、カウンター越しに言った。

「拠点となる屋敷を借りたいのですが?」

ルファスの言葉に店主は、びっくりしていた。

「あんたら、正気かい? 戦争中のヴァルファ帝国がグラナス高原まで、迫ってきてるってのに…」

ルファスは、ヴァルファの名を聞いて少し動揺した様子を見せた。

「不動産を売りたい奴は大勢いたが、こんな時に買いたい、借りたいなんて奴も珍しい。 安くするから、是非買ってくれ!」

店主が先程までと打って変わって、やる気満々でグイグイくる。

「落ちつけい」

ピシャッ!

ウィズが店主をビンタした。

ルファス、カイ、バン、フィリーは、え、なんで? と思った。

「明日、買うから、良い物件を徹夜で見繕っとけい!」

ビシッと店主に指差してウィズが言った。

ルファスは、あぁ~、残念な人なんだな、と思って、生温かい目で、ウィズを見た。




夜明け前に目が覚めた。

結局、昨日は、食事をせずに今まで寝ていたようだ。

重さを感じた俺が辺りを見ると、素っ裸のレイラとプロムが俺に抱きついて寝ている。

俺は、寝てる二人を起こさないように軽キャンを出ようと思ったが、プリンとしたお尻をみていると…

白いお尻を見ていると…

お尻を見ていると…

尻…


ペロっ

レイラが起きた。

ペロっ

プロムが起きた。

そして、夜が明けるまで、三人で仲良く愛し合った。



朝になり、俺が顔を洗っていると、ウィズが、嫌るルファスを連れてどこかに行った。

残された俺達は、朝食をみんなで作って食べた。

レイラ、プロム、キャスカ、フィリーの女性陣が買い物に行きたいと言ったので、大目に小遣いを渡してあげたら、喜んで、キャッキャ言いながら街に向かって行った。


取り残された三人で、コーヒーを飲んでいる。

俺、カイ、バンの三人でいた事など、ほとんど無い。

何か、話をしないと…気まずい!

「ノガミさんは、何色が好きですか?」

カイが話しかけてくれたが、それは、話題の無い時のどうでもいい奴じゃないか、そっからどれだけ話を広げられる!

そう思いながらも俺は、

「…赤かな? バンは?」

「緑」


「………」


ほら、ほら、ほら、会話が終わったじゃん。

俺は、恨めしそうにカイを見たが、それに気づいたカイが目線をそらす。

沈黙が流れる。


俺は、タバコを取り出し、吸った。


「驕るけど、風俗行くか?」

唐突な俺の一言に、カイとバンの表情が変わった。

まずい、こいつら真面目か? レイラとプロムに告げ口でもされたら…

「兄貴について行きます!」

カイが俺の手を握ってきた。

「出発の準備すぐしますんで、まってて下さい」

バンが自分達のキャンピングトレーラーに走る。

全然心配しなくて良かった。

そうと決まれば、出発の準備だ!



ルファスは、不本意ながら、ウィズと不動産の手配した馬車に乗っていた。

ウィズは、不動産屋の話を、うむ、うむ 言いながら頷いているが、ルファスは、戦争中、しかも、王都の近くまで攻め込まれてるのに、物件を買うなんて馬鹿げていると思いながら、ぼんやり外を眺めていると馬車が停まった。


「どうです! 歴史を感じさせるこちらの物件」

ビターン!

自信満々に言った不動産屋をウィズがビンタした。

確かに、コレは無いなとルファスは、目の前の崩れかけの空き屋を見て思った。

「次!」

ウィズがそう言うと、また、馬車に乗りこみ別の物件に向かった。


ビターン!

「次」

ビターン!

「次」

ビターン!

「次」

と、やり取りが繰り返された先に、良い物件に巡り合った。


「店主!」

ウィズの言葉に、不動産屋がビクッとした。

「いいじゃないか! コレだよ、コレ!」

満足そうにウィズが頷いているが、ルファスも確かに良いなと思った。

街の中心から離れているが、丈夫そうな作りに、広さも申し分ない。

なにより、敷地内に軽キャンピングカーとキャンピングトレーラーを入れれそうな倉庫があるのが良い。

だが、自分の祖国が攻めて来ているこの状態で不動産を買うなんて、馬鹿げている。

そう思って横を見ると、ウィズが売買誓約書にサインをしていた。

「ぅおーい!何してんのアンタ!」

ルファスが、ウィズを止めに入る前に不動産屋が契約書を持って、走り去った。



俺たちが、ウッキウキに心弾ませながら、街を歩いていると、前からウィズとルファスが歩いてくる。

誘ってやるか。

優しい俺は、二人に話しかけようと近づいたら、ルファスが、お通夜状態だった。

「ハハハ、ルファス、どうした? そんな顔して、辛気臭い。 今から良い所に行くから連れてってやる」

ルファスが元気になれるように気遣う俺は、ホントに頼りになる上司だと思った。

この前、キャスカの裸を覗いた負い目もあるし…

「ありがとうございます」

ウィズが言った。

お前には、言ってないと思ったが、可哀そうなのでオマケで連れていってやる。


「ノガミさん、ヴァルファ帝国と、この国が戦争しているようなのですが…」

歩きながら、ルファスが言った。

「ヴァルファ帝国って、お前らの祖国のか?」

「はい」

「そうか、大変だな。 おっ、店が見えてきたぞ」

ルファスは、野上が真剣に聞いてないと思い不機嫌になる。

「そうだ、拠点購入しました」

ウィズが俺に報告する。

「御苦労様。褒美にオマケから、正式に連れていくメンバーに格上げだ」

ウィズは言われている意味もわからず俺に、お礼を言ってきた。

店の前に着いた。

俺とルファスを置いて、みんな店に入っていく。

みんな、良い顔してやがる。


さぁ、俺達も入ろうかと振り返ると、

「ノガミさん、戦争に巻き込まれたらどうするんですか? ヴァルファ帝国は甘くない、みんな死にますよ! この国から出て行きましょう!」

ルファスが叫んだ。

そうなの? と思った。

「大丈夫だよ、俺は、俺の大切な仲間を守るから」

俺は、店が気になりながら、ルファスに言ったが、ルファスが動いてくれない。

「俺が、ヴァルファ帝国追い返すからさぁ~」

そう言って、嫌々するルファスの手を引っ張る。

「バカ! この国の風俗凄いんだぞ! それを守る為なら頑張っちゃうから」

まだ、何か言いたげなルファスの腕を引っ張りながら店のドアを開いた。


視線を感じる。


俺は、嫌な予感しかしないので、振り返らない。

一瞬、躊躇したが、このまま中に…って、頭を掴まれた。

振り返らぬ!

ググ…

凄い力で強制的に首が、ぁあ、首が…

グググ…

ねじ切られるんじゃないか? ってぐらいに首が回転した。

「や、や、や、これ、これは、レ、レ、レイラさん、どうしたのかな? 買い物は?」

尋常じゃない汗をかいて俺が、精一杯の笑顔で言った。

「アナタが見えたから」

レイラが笑顔で言った。

それが、怖い。

動こうとしても、掴まれた頭がビクともしないじゃないか。



ボッコボコにされ、回復薬を飲まされて、回復したところで、また、ボッコボコにされ、俺は、死ぬかと思った。




不動産屋に金を払い、十分楽しんでツヤツヤな顔をしたウィズ達に屋敷の掃除を徹底的にさせた!

お前らだけ楽しみやがって!

キャスカは、俺の事を、ルファスを風俗に連れていこうとした、極悪人扱いする。

罰として、また覗いてやると思いながら、にこにこしてやった。


色々あったが、拠点となる屋敷を手に入れた俺は、迫りくるヴァルファ帝国よりも重大な案件、レイラとプロムの許しを得る、その為、今晩も頑張るのだ。

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