第28話 グラナス高原

セガル王国を出発して、二日目。

満月の夜。

木々の中を走り抜ける人影。

辺りには、荒い息づかいが静かに響いた。


林を抜けた人影を、月明かりが照らし出す。

人影の正体は、野上博志。

彼の目の前には、湖が月明かりを受けてキラキラと輝いていた。

一歩、そして、また一歩、体を屈めて、慎重に湖へと彼は近づいていく。

そして大きな岩の前来ると、片膝をついて止まった。

岩に背中をつけて、呼吸を整える。

岩の向こうから、絶賛、水浴び中の女性陣の声が聞こた。


覗きは、いけない事だ。

だが、その、いけない事の罪悪感が彼を更に興奮させる。

唾を飲み込んだ。

彼は、石の向こうの様子を伺うべく、慎重に振り返り曇りなき眼にて岩の横から頭を出す。




俺は、目の前の女性の裸体を堪能する。

ロリ少女 キャスカ、貧乳スレンダー レイラ、超乳のプロム、合法ロリのフィリーが、キャッキャいいながら、水浴びをしている。

ヤバイ、ルファスの気持ちが解りかけた…でも、見るだけなら、触れないから、見るだけなら、…イヤ、駄目だろ。

葛藤しながらも、キャスカ、フィリー、普段見ることの出来ない二人の細く、しなやかな肢体から、目を逸らすことが出来なかった。

「すまん、ルファス」

綺麗だからだ! 綺麗な物に、人は惹かれるから。

そうだ、きっとそうだと股間を固くしながらも俺は、思うことにした。



カチャッ

俺の首に冷たいものが触れた。

プロムのナイフだ。

俺は、冷や汗くを出しながら振り返る。

「ヒロシ様、何をしてるのかしら?」

小声で俺に言ったプロムは、俺の首根っこをつかんで林の奥に入っていく。


人気が無いことを確認して、プロムが、俺の耳元で、

「ヒロシ様は、いけない人ですね。 お仕置きです」

そう笑って抱きついてきた。

それから、俺は朝まで愛し合って、寝かせてもらえなかった。


翌朝、みんなの元に戻ると、レイラが、俺とプロムにズルい!と拗ねてしまった。

今日は、レイラと二人で、と言う事で機嫌がなおった。


二日徹夜、フラフラになりながら、グラナス高原の近くまでやって来た。

ここを越えれば、目標のラガス王国に到着だ。

とにかく眠りたい。



「祭りでもあるのか?」

グラナス高原に沢山の人がいる。

鎧を着たやつか、停まれ、停まれってやってる。

眠い。

早く目的地に着きたい俺は無視して沢山の人がいる中に突っ込む。

人垣が軽キャンを避ける為に左右に別れた。

「ヒロシ、なんなのこれ?」

助手席に座る、今日の朝まで俺を寝かせてくれなかったレイラが言った。

「俺がわかる訳無いだろう、こうなったら、突っ切るしかない」

俺は、アクセルを踏むのを緩めずに突き進む。


人垣を突っ切った軽キャンはスピードを緩めず、そのまま真っ直ぐ進む。

「なんで?」

俺がサイドミラーを見ると、騎馬が追いかけてくる。

面倒な予感しかしない、ここは、無視だ。

俺は、アクセルを更に踏み込んだ。


軽キャンの前に、また人垣が見えてきた。

「ヒロシ、こっちきた!」

レイラが言ったように、前の人垣が、こちらに突撃を仕掛けてくる。

「なんなの?」

俺は、前からくる騎馬を避けるように右にハンドルを切った。

軽キャンとキャンピングトレーラーがドリフトぎみに動いて、なんとか、避ける事ができた。

後ろから来てた騎馬と、前から来た騎馬がぶつかり合い、戦闘が開始された。

俺達は、巻き込まれないようにスピードをあげて、その場を通り過ぎる。


「なんなんだ、戦争してたぞ! とにかく離脱だ」

俺は軽キャンのスピードをあげながら言った。

もう眠いし、忙しいし、腹立ってきた。

離れた場所に軽キャンを停めた。

俺は降りて、軽キャンとキャンピングトレーラーの連結をはずす。

「ちょっと、行ってくる!」

俺は、キャンピングトレーラーに乗る仲間に言って、軽キャンを走らせる。

戦闘が繰り広げられる中、軽キャンが突っ込んでいく。

「どけ、どけ、どけー!」

寝てないからか、変なテンションで人を吹き飛ばしながら突き進む。

「指揮官はどこだー」

俺は、縦横無尽に戦場を駆けた。




ヴァルファ帝国軍、ラガス王国討伐軍 指揮官 アデロン将軍

彼は、今、野上博志の前で、裸で正座していた。

「戦争は、愚かな事ぜよ」

俺は、アデロンの肩に手を置き言った。

後日、レイラ、プロムは、そう言った野上博志の笑顔は悪魔のようであったと語った。




軽キャンに十字架のような丸太を、船のマストのようにサイクルキャリアにくくりつけた。

そこに、裸のアデロンを大の字で縛り付ける。

俺は、良い仕事をしたと思った。

軽キャンの運転席に戻り、エンジンをかけた。


「フリチン大行進じゃー!」


俺は、そう叫んで、戦場に戻った。


フリチンのおっさんが戦場を駆け抜ける。

戦闘の手が止まる。

皆が、アデロンを見た。

晒し者にされたアデロンを敵方が、笑ってみている。

俺は、ゆっくりと戦場を円を描くようにグルグル回って皆にフリチンを見てもらった。

俺を怒らせた、罰だ!

完全に八つ当たりだが、気にしてはいけない。


俺は、戦場の中央にフリチンのおっさん付きの丸太を突き刺した。

向こうの方で、丸太が持ち上がる。

敵方の指揮官がフリチンで同じような状態でいる。

俺は、素早く、フリチン丸太を回収して、仲良く戦場中央に並べてあげた。


俺は、軽キャンの上によじ登った。

辺りを見渡す。

うん、静かなもんだ。

「あー、貴様らの指揮官は、フリチンの刑に処した! 無駄な戦闘はやめて、武装解除して解散しろ! しない場合は…」

俺の言葉を聞いたレイラとプロムがそれぞれ棒をもって、フリチンのおっさんの尻に棒をあてがう。

「や、やめろ!」

「そんなの、入らないぃ」

フリチンのおっさん達が、泣きわめく。

戦争とは、かくも虚しいものだ。

俺は、遠くを見た。


「さて、フリチン達からも、武装解除命令した方がいいんじゃない?」

俺は、優しいので、言ってあげたのに、フリチンは煮えきらない態度。

生意気な。

「じゅ~う」

俺は辺りを見る。

「きゅ~う」

俺の意図に気づいた、フリチンが目を見開く。

「は~ち」

「やめろ!、カウントをやめろ!」

言葉がちがうだろ?

「な~な」

俺は、カウントを続ける。

「やめ、やめてください。みんな、武器を捨てろ!」

そうだ、そう言えば良いのに。

「ろ~く」

急いだ方がいいよ。

そう思った時、兵士から声があがる。

「我ら誇り高きヴァルファ帝国の兵士は、そのような、脅しには屈指はしない! アデロン将軍もそう思っているはず!」

言われた、アデロンが、泣きそうな顔になってる。

俺は、誇り高きヴァルファ帝国の兵士を見た。

「はい、勇敢な君!」


フリチン丸太が増えた。


「ご~」



「あー! 早く武装解除しろぉ!」

フリチン達の叫び声に、兵士達が武器を捨て始めた。

そう、それでいい。


「はい、よ~ん!」


「早く、早く離れろ!!」

武装解除した兵士が離れていく。


「さ~ん」


ずいぶん離れたな。 良し。


「にぃ~い」


「離れたじゃん。 兵士離れたじゃん」

フリチンが叫ぶ。

俺は、ニッコリ笑って軽キャンから飛び降り、運転席に乗り込む。

エンジンをかけて、窓を開けた。

「 1 」

「 ゼロ 」


ドスっ!

ドスっ!

「ぅぎゃぁあああー!

「あーーー!」

フリチンの叫び声がグラナス高原に響き渡った。


「撤収!」

俺は、そう言うと レイラとプロムを素早く回収して、戦線を離脱した。

遠くから両軍が追いかけて来たが、追い付かれるかよバカが。


待機していたキャンピングトレーラーを連結して俺達は逃げた。

さぁ、早く眠りたいし、ラガス王国に急ごう。

俺は爽やかに笑った。

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