2.弐:最終決戦前刻

 余は、X魔物の一人、館の主・The WKASETkである。

 余はこの館を壊しているその、六媒師なる者を今まで見ていたのだが、今は果たして余に抜擢するか。とても興味深いのであるのだよ。

 さあではThe WKASETkの意味を皆は知りたいだろう。それは、

 The World Kind Answer Star Effect Tiger k型である。

 果たして昔勇者に聞いた、その情報が合っているか、それは保証は出来ないが昔勇者がそう言っておったのだ。

 あ……いや別に……信用してないわけ、ないんだからな!

 ホホホホントニ、そうだぞ!


 コホン


 まあ虎のような姿をした余だが、実は虎では無い。

 実は余はな…余の正体はだな。


 コツンッ


 靴音が木霊す。

 …。

 おお、早速颯爽と誰かがやってきたぞ。

 この気配は余の兄、The WKASETwより強い。

 その人物を見ると彼は。


 六媒師の主格、レトウスだった。

 未だ余を視認してないようだった。


「おい、どこにいる! The Wなんとか!」


 余はそちの前に平然と立っているではないか…なにゆえ見えないのだ?


「出てこないんだったら…」


 ん?

 あ…そうか。『効果クリアEffect Clear』解除してなかったか…


効果クリアEffect Clear・解除』


 余が現れた。


「大きい…」


 思わずレトウスは呟いた。


「はっはっは。余をお主は倒そうと来たのか?」


「ああ、そうだぜ」


 即答されて驚くな。

 それ程自信満々なのか…だったら良い。撃ってこい。

 そう言う予定だったのだが、それより前にレトウスは一つ技を繰り出してきた。

 その時、アリナがあのアスルを突破したことが余の脳に通知された。

 …あいつもそこそこ強かったのだが、やはり余が作った程度ではそんな強さを秘められなかったか。

 まあ良いのだ。成仏さえしてくれれば。

 それよりレトウスの攻撃が気になるのである。


悪魔の炎Սատանայի բոցը


 ふふふふ。何だ、それか。

 余はその技を知っていた。


「はっはっはっはっは」


 余はその技は通用しなかった。

 そう、余は強いのだぞ!


「何ッ」


 そうレトウスは言ったが、それでも諦めずにまた技を使った。


悪魔の炎Սատանայի բոցը


 ドカーーーーーン


 それは余に効かぬと言っただろう?

 余は少し苦笑する。

 しかし、彼も笑った。


「そのために放ったわけじゃねえよ」


 その言葉に余は驚いた。

 まさか…余を攻撃するためではなく…!


「『最強N剣Sterkste N swaard』!!」


 聞き覚えのある言葉が木霊した。

 と思った瞬間、余は背後に技を使われた。


「うぐ…ガウ」


 余はよろめいた。

 レトウスは余の気を引き寄せようとあの技を使ったのだ。

 そしてその間に、独自の強き技を持ったアザリガに余の背後を狙わせる…か…。

 それにしても…。


「久しぶりだな。アザリガ」


「ああん? 俺様はてめえを知らねえぜ」


 ふっ。それでも良い。

 余の技の使い道は十人十色。見て貰おうか。

 レトウスの十大魔法も、アザリガの独自攻撃も背後からさえ狙わられることさえなければ勝てる。まずは二人片付けてやろう。


残酷な紙Grimm blað&グ炭化物の竜巻Carbide tornado


 数千の刃と巨大な竜巻の同時攻撃。

 これならお主らだって…


「仕留められるわけねえよ」


 レトウスは言った。その瞬間、レトウスは全ての攻撃を避けた。


「こんなの…俺様達に掛かったら楽勝だぜ」


 アザリガも言った。アザリガは全ての攻撃を避けている。


「そう。わしらは最強の六媒師じゃからな…いや、今は五人か」


 ロウトウがやってきた。

 最強…? 余は少し笑った。

 最強ではない。お前らが力を併せても余ら最強位生命体Grade10のうち上位、十五人には勝てぬ。勿論その中に属す余もな。


「あとはアカリとアリナか」


 だが中々やるな。余の手下の霊をわざわざ実物化させた上に赤子の手をひねるのかのように倒すとは…。

 実は余は正直言って少し最悪の事を危惧しているのだ。例え余の格下の奴らでも、余は負けるのではないか…と。

 そんな余の気を知ったか知るまいか、レトウスは微笑んだ。


「てめえの墓場は…ここだ」


 ふっ。例え弱音を吐いている余でも…お前らに倒されることは無いのだよ。

 余は勝てると思い直して技を使用する。


風の竜巻Wind tornado&咆吼』


 風の竜巻がレトウス達を吹き飛ばした。


「フッ!」


 余は鼻で三人を笑う。

 だがその時、余は気付かなかった。

 三人が当然のように前に進んできたことを…


「一番最後に担当の敵を倒したので、すっかり着くのも最後になるかと思いました」


 アリナが、中でバリアを張っていた。

 嘘だ。余の技はアリナのバリアを百を必要とするはずだ…! まさか、進化した!?


「数重にバリアが張れるようになった上に防御力が五倍…やるのう、アリナ」


 ロウトウが微笑んだ。

 ロウトウは一瞬でアリナの進化内容に気付いたらしい。


「ありがとうございます」


 アリナはお礼を言いながら杖を余の方向に掲げた。

 そして…こう言った。


「四人でいけますよ!」


 舐められたものだ。お前ら如き、余も本気を出せば瞬殺なのに。

 そんなようなことを考えていると、アリナは『光の矢Light arrow』を飛ばしてきた。

 一瞬「まずい!」とそう思ったが、無論のこと、余には効かなかった。


「やっぱり私の技は効きませんか…」


 まあ防御のアリナだからな。余にアリナの技が効くとは到底思えない。

 余は少し安心する。流石に攻撃も進化しているとなると本当に苦戦するからだ。


「大丈夫だ。俺たち六媒師のうちの四人さえ揃えば、こんな奴すぐに倒せる」


 レトウスはそう言う。

 ん?


「そうか?」


 余は笑い飛ばした。

 有り得ない。有り得ないからだ。


「ああ、俺様がいるんだぜ」


 アザリガが微笑む。

 こちらは自信満々のようなのだ。

 莫迦なのか本当に強いのか。


「そうですね」


 アリナが苦笑する。

 自分の役割をしっかりと理解している顔だ。

 彼女の紫色の髪の毛は、そう言いながらも余を冷たく見つめた。


「ふふふふふふふ。なるほどな」


 余は少し相手の動きが読み取れた。


「いや、お主たちは負ける」


 そう余が言ってみた。

 四人は全員前にいる。今なら!


『突進Ⅶ』


 バカーン

 爆音と共にアリナのバリアを貫通した。

 思わず四人とも絶句する。

 これで…突破できる。そう思った時。

 それと同時ぐらいで、余も絶句してしまった。

 後ろにいたのである。

 アカリが。


「こんにちはなんだよ! 館の主さん」


 こうして六媒師のうち、今生きている五人を余は相手しなければいけなくなった。

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