第2章 一つの目標

2.壱:最強の魔物とは?

 レトウスは三つの鉄塊を投げた。


悪魔の炎Սատանայի բոցըԵրկու


 ドカーーーーーーーーン

 物凄い爆音が辺りを木霊す。

 三十体の実体は怯んだ。

 その小さな隙をレトウスは見逃さなかった。


「残念だな!! 俺に勝てなくて!」


 レトウスは笑った。

 三十体の実体は思わずバリアを張ったが……!


「まさかお前ら――最初から実力の半分を隠して!?」


 三十体の実体は驚愕の表情を浮かべていた。

 そしてそれを見たレトウスは……。


「ああ、そうだよ。俺に本気を出させたのはお前が初めてだ!」


 その言葉と共に……レトウスは三つの鉄塊を投げる。

 三つの鉄塊は三角形を描いた。


悪魔の炎Սատանայի բոցը Երեքը


 威力は『悪魔の炎Սատանայի բոցը』の五倍ほど。

 人型の化物は館の一部とともに、燃え尽きた。


※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※


「第十形態」


 アカリは持久戦に持ち込まされていた。


「喰わせろおおお!」


 どんどん進化してくるこいつを前に……。

 しかし、アカリは悲しそうな瞳で何処か遠くを見ていた。


「もっと戦いたかったからけど、もうそろそろ終わらせなきゃ……残念なんだよ」


(でも……これ以上戦うと持久戦で負けるんだよ。だってあたし、持久戦苦手だから)


 そうアカリは思うと化け物を見た。


「本当に……残念なんだよ!」



「第十五形態」



 一瞬にしてアカリの動きは変わった。

 そして……。


※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※


 一方ロウトウはオーガを前に見た。

 そして、構える。


「倒せるかぁ? ♪本当にぃ? ♪それでもそれでも倒せるかぁ?♪」


 オーガはリズムに乗って動いていた。

 ロウトウは苦笑する。


「リズムに乗ると、戦いやすいんだぜぇ」


 そうオーガは言った。

 そして笑い始める。


「残念だねえ! きみはこの俺に……」


 そうオーガが言いかけた時、ロウトウの眼はオーガを初めて見つめた。

 オーガがその眼に怯んだ時。

 激しい爆発音。

 一瞬にしてオーガの体は砕け散っていた。


「済まぬ、もうお主の言葉が聞きたくなくなってな」


 ロウトウは肩を揺らしながら、微笑んだ。

 そして……先を見つめた。


※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※


 更に一方、アリナは瞬時に持ち直した。


「え? うっそ~~。何でこの私、館で二番目に強い生命体の攻撃を受けられるわけ?」


 やはり相手はアリナが防御専門であることを知らないらしい。

 そしてその質問をアリナは少し苦しそうに答える。


「私だから反撃が出来ないんですよ。他の皆様ならすぐに貴方を葬り去れます」


 そしてバリアを張る。


「それに二番目……ですか? 一番では無いのなら私たちに勝つ可能性はゼロですよ!」


 アリナはキッパリとそう言い、同時に技を放った!


矢の竜巻Arrow tornado


 アリナの技、『矢の竜巻Arrow tornado』。

 攻撃力は六媒師内こそ最弱だが、常人の域を遙かに超す技であり矢が竜巻のように回る、そのような技である。

 妖精の風をした少女は苦しんだ。


「最後に名前を聞いておきましょうか」


 アリナは訊いた。

 彼女は…冷たい眼をして妖精風の少女を見つめた。


「――くっ! 仕方ないわね」


 そうして妖精の風をした彼女は言った。


「アスル。それが名前よ」


 そうですか。良い名前です。

 アリナはそう呟き、杖を上に突き出した。


「では、さようならです!」


 そして……振り下げようとした。

 が……!

 その時、アリナは油断した!!


 バーン


 爆発によって、アリナは吹き飛ばされそうになった。

 アスルは微笑み、追い打ちを掛けようとしたが!


「嘘でしょ~」


 アスルは驚いた。

 完全なる不意打ちだったはず。なのにノーダメージでアリナは起き上がっていたのだ。


「アカリ。有り難う御座います」


「いやいや~、気にすることないんだよ~。大体貴方一人でも防げたでしょ?」


 アスルは二人同時に相手することになることを知り、恐怖を覚えた。

 アスルは取り敢えず飛び上がり、後ろに退避した。


※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※


 そう。彼らは本当の力を隠していたのだった。

 つまり彼らにとって此の館の攻略は容易だった。

 例え一時は苦戦しても、最終的には勝てるぐらい……。

 各自で一体ずつ倒せるのだ。


 奥にいる――このⅩ魔物の一人と呼ばれる、主以外は…………。

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