第41話
*
風呂から上がった俺と高井さんは、愛実ちゃんと玲佳さんが上がってくるのを自販機前のマッサージチェアに座って待っていた。
「あぁ~ご~く~ら~く~」
「何馬鹿なことやってんですか……まぁでも……確かにきもちいですね……」
「はぁ……それにしてもやっぱり女性連中は遅いなぁ……」
「まぁ……女性は長風呂ですから……玲佳さんが来たら、とりあえずちゃんと話しをしてくださいね」
「そうだな……そろそろ仲直りしないと……楽しい旅行が台無しだしな……」
高井さんはそう言いながら、マッサージチェアの隣にある機械を操作する。
丁度そのときだった、浴衣姿の愛実ちゃんと玲佳さんがやってきた。
「次郎さん、お待たせしました!」
「おう、ちょっと三分くらい待ってて、それくらいには終わるから……」
「あ、良いなぁ~! 私もします!」
「愛実ちゃんも?」
愛実ちゃんはそう言うと、俺の隣のマッサージチェアに座り始めた。
「あぁ~いい~気持ちぃ~」
「高井さんみたいな事して……」
しかし、これはチャンスだ。
高井さんのマッサージチェアの制限時間が来て、機械がストップしたようだ。
高井さんと玲佳さんを二人にするチャンスだ。
「高井さん、俺愛実ちゃんを待ってから行くので、先に玲佳さんと外見てきて下さいよ」
「え? あ、あぁ……まぁ良いけど……」
高井は俺がそう言うと、チラリと玲佳さんの方を見ながらそう言った。
「私も良いわよ、ほら行くわよ」
「あ、待てよ!」
高井さんと玲佳さんはそう言ってその場を後にした。
「さて……俺もあと五分……」
「これで仲直りすると良いんですけど……」
「そうだな……話してみるとは言ってたけど……こじれなきゃ良いが……」
「そうですねぇ……あ、次郎さん」
「なんだ?」
「私の胸は玲佳さんより大きい見たいです」
「……その情報はいらん」
と言いつつ、俺は隣の愛実ちゃんの様子を見る。
揺れている……浴衣のせいかいつも以上に大きい気もする……。
「次郎さん」
「なんだ?」
「今見てましたよね?」
「気のせいだ」
「エッチ」
「………すまん」
「もう、そんなに焦らなくても今夜布団の上で揉めますから~」
「揉まん!」
*
俺こと高井謙太は現在、恋人の玲佳と温泉街を歩いていた。
ただいま絶賛喧嘩中の俺たちだが、いい加減仲直りをしたい。
「ねぇ、もう私気にしてないから、そんな離れて歩かないでよ」
「ふぇ!? な、何がだよ!」
気がつくと俺と玲佳は二メートルほど離れて歩いていた。
玲佳はため息を吐きながら、俺の方に戻ってきた。
「私も……子供っぽかったわよ……いつまでも意地になって……」
「あ、いや……俺も悪かったし……」
「だから、もうやめましょうよ……あの二人にも悪いし……それに……アンタといつまでもあんな感じなの……やだ……」
あ……俺の彼女……世界一可愛い……。
そんな事を考えながら、俺は玲佳に謝る。
「ご、ごめんな……元はと言えば俺が……」
「はいはい、もうそういうの良いから。私、温泉まんじゅう食べたいのもちろん奢ってくれるわよね?」
「……あぁ、もちろんいいぞ」
そう言って、俺と玲佳は温泉まんじゅうを買いに店に向かった。
「う~ん、美味しい~」
「色々あるんだな……お土産も売ってたぞ」
「あぁ、友達にお土産買って行かなきゃなぁ~」
「俺もバイト先に買って行かないと……」
俺たちは店の中の食事スペースで景色を楽しみながら、温泉まんじゅうと牛肉コロッケを食べていた。
「それにしても……懐かしいわね……前に来たときは高校生だったわね……」
「そうだな……この温泉まんじゅうも二人で食ったっけな……」
この店は前にも来たことがある。
まだ付き合って間もない頃だ。
始めて二人で旅行に来たのがここだった。 そのとき俺は玲佳とある約束をしたのだ。
「ねぇ、あの二人はまだマッサージチェアで遊んでるのかしら?」
「あぁ、そろそろ連絡するか……あいつら何やってんだろ?」
俺は後輩の岬に電話を掛けようとスマホを取り出す。
すると、そこで岬からメッセージが来ているのに気がついた。
なんだろうと思いメッセージを見てみる。
【仲直りして下さい、俺たちは適当にブラブラするので、そちらも適当にどうぞ】
「あいつ……」
「何どうかしたの?」
「あいつらはあいつらで適当にこの辺りぶらついてるってよ……まぁ、俺たちに気を使ったんだろ……」
「あぁ……そう言うこと……じゃあ私達も観光する?」
「そうだな……付き合いたてのあいつらの邪魔をするのも悪いしな……」
「じゃあ、私達も行きましょうか……確か陶芸体験出来るお店があったわよね?」
「あぁ、じゃあいくか?」
「うん、これ食べてからね」
やっぱり玲佳とは、こういう感じの方が落ち着く……そんな事を思いながら俺は、玲佳を見ていた。
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