第五町人 ダレドナタ

長いひげを蓄えていつもビールを飲んでいる。

学校一のわんぱく小僧、いつも教師が手を焼いている。

美人で気立てが良いからと、街の男に大人気。

ちょっと気難しい老婆、だけれど愛に溢れてる。


いやいや、それはおかしいぞ。

一体誰の話をしてる?

ダレドナタのことだろう。


靴屋の二階で微笑みかける街評判のお兄さん。

インコが唯一の相棒と洗濯頑張るお母さん。

すっ転んで笑ってるサッカー好きの娘さん。

時計の修理に精を出す無口で頑固なお父さん。


ほらみろ、そこにいるだろう。

一体誰がどなたなの?

ダレドナタはどこにいる?


ホントはどこにもいないんじゃ?

ウソだよそこにもいるじゃない?


それじゃあアンタは誰どなた?

もしくはワタシがダレドナタ?


「おはよう、アンタが、ダレドナタ」

「よろしく、ワタシは、ダレドナタ」



「…おかしいなぁ、何でこの人だけ取材出来ないんだろう?」

「おーい、お客さんだってさ」

「客?誰、どなた?」


「やあ、初めまして。ワタシは―」

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る