16話 最高と思えること

「柚和!もうすぐ始まるよ」


保健室から戻ってきた僕は館半たちなかナラにそう言われた。


「借り物?」


「そ。借り物」


借り物競争。コーティングされた紙に書かれたお題?の物や者を持ってくる競技で年々中身が増え続けている。僕の時のお題はたしか…[マイク]だった気がする。


「4走者目の子達カード引いたね。お題はなんだろ?」


「あれじゃない?定番の女の子とか美人とかじゃないの?」


「じゃ、私が借り出されるかも〜」


一番最初に走った子は…髪の毛?いやカツラ?(笑)[体育教師のカツラ]なんて言うお題を引いたんだと思う。去年引いたやついたし。


それと生憎と[女の子]や[美人]なんてカードを引く人はいなかった。

引く人はいない。裏を返せばそんなカードもあるってことなんだよな〜。


今度はなんか知らない女性を連れてきたよ(笑)多分[自分のお母さん]か、[知り合いのお母さん]かなんかかな?


7走者目の人が引いたお題がこれまたすごかった。


だって


「ねぇねぇ、あの子絶対[女子の私物]引いたよね!?ちょっと可哀想」


とナラは言ってけど笑ってるあたり微塵も可哀想なんて気概を感じない。


てゆうか、まだそのカードがあるんだ(苦笑)南無阿弥陀仏〜


「おい、館半たちなかさんよ。お前さんとこに男の子が来るよ」


「噂をすれば!?Hey!少年何かな?」


「借り物でお題に[男と話してる人]って出たのでお願いしまーす」


「なっ!」


「うんうん!力になってあげな。僕は見守ってるから!バイバイ〜♪」


「ちょ、酷い!柚和〜」


今更だが、走るところにコーティングされた紙が散らばっていて枚数は…300枚位あると思われる。多すぎ…


引いたカードはどこか適当にまたぶん投げてお題の物があるところまで一直線!


そんな枚数の色とりどりなお題のカードがあるからかテントで居座ってる者達も!可愛い!可愛い!一年生達に手を引かれて走っている。良かったねナラ。君だけじゃないんだよ。


「うへぇ〜柚和ぁ疲れたよぉ〜」


「あはははは…ナラさんよ。お前さんのとこにまた来るよ」


「ひぇぇぇぇえ!た、助けて」


「えっと、お題で[男と話してる人]と出たのでお願いします!」


「バイバーイ」


ナラ。君はちゃんと力になれているんだ。凹むな。心の中でそう言ってあげた。


「見ないと思ってたら戸谷塚も走ってる」


戸谷塚宗とやづかそうくん!お顔が広くて(物理的にじゃないよ?)コミュニケーション能力S!顔はイケメンじゃないけど雰囲気イケメン!だけどモテない宗君が現在進行形で!………ん?


「なんで、男6人で走ってるの?」


口から零れてしまうほどエモーショナルなんで絵面だった。

あっ、そっか!ボーイズラブってやつなのね!僕は瞬時にそう判断した。


奥の方では、ナラがテントの柱に手をついて息を荒げているのが見える。

美人じゃないけど女の子として台無しな絵面だよ。


「11走者目…お、莉奈か並んでる。お題何引くのか後で聞こう」


ヨーイドンをしてそこら辺に散らばってるカードを拾って莉奈は硬直した。


すぐに、立ち直って駐輪場まで走っていった。

借りてきた者はまぁ自転車だった。普通そんなの入れるか?…入れるか。

なんせ、去年は[先生のブラ]なんて死のカードも合ったからな…それを引いた子は勿論最下位だったよ(苦笑)


自転車を漕いでゴールイン。それでも3位だったことに驚き。


最下位はなんか、男子の目の前で今も土下座している。おもしろい(笑)


「頑張れ頑張れ赤組♪負けるな赤組♪」


走っている赤組の一年生に2年、3年が応援しているのがわかる。


カードを引いて泣き笑いしたり、転んだり、女の子と笑いながらゴールしたり、ビビりながらゴールしたり、ゴールしなかったり、ヤバイと車が校庭に入ってきたりしたけどそれでも借り物競争は無事幕を閉じた。


「なんか、色々と今年もすごかったとしか言いようがないな…」


「「彼女を貸してください!」なんて聞こえた時はマジかと思ったし」


僕はそのままプログラムには【命懸けの綱引き】と打たれた綱引きの列まで走っていく。本心を言えば今すぐやめたい。でも、代わりがいない。仕方なしに並んで列が組み上がるのを待つ。


「柚和もこのヤバイ綱引きやるのか?」


声をかけられ隣を見たら2組の中山一誠なかやまいっせいがいた。


「並んでる時よく会うよね。中山とは」


「おうよ。で、このヤバイ綱引きやるんだな?」


「ハハハ!ハハハハハ!ハハハハハハハハ!」


「オーケー。わかった。頑張ろうな。お互い死なないために」


「あーうん。僕はこんなのやりたくなかったけどね…」


中山とは、去年同じクラスで共にこの地獄の綱引きをやったから辛さを共感できるのだ。ホントにこの綱引きはヤバイからね。


あ、始まった。先頭にいかにも熱が凝縮してできたようなレディが立っていて僕達に喝采をぶっ飛ばしてくる。


「立て!並べ!声をあげろ!」


「はぁぁぁあい!」


「おし!いいな。てめえら死ぬ気でやれヨォォォォオ!わかったかぁ!?」


「オッス!」


「おし!じゃあ始まりだ!白組!赤組を殺すつもりでやれ!赤組!白組で血で染めてやれ!以上!どっちかの組み が全員倒れるまで終わらないからな!ぶっ倒れても復活してもいい!とにかく!全員が倒れたら負けだ!分かったな!?おし!んじゃてめぇら!死んでこい!」


「「「「「「「「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおお」」」」」」」」


こうして、男の死ぬ競技の一つ綱引きが始まった。




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〈作者コメント〉


星レビュー貰いました♪ありがとうございます。

(くれた人の名前を言っていいのかすごい迷った)

こんな駄作でも目を通してくれて評価してくれる人がいるとわかるだけでタコはそれだけで、(。•́ωก̀。)…グス!それだけでやる気がでちゃうぜ!


これからも宜しくお願いします。


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