10話 また一つの出会い

龍馬が亡くなった後の僕は憔悴していた。見るからに変わっていたと思う。

教室では、僕はおとなしくなって話しかけられても「ありがとう」と「ごめん」の、繰り返し状態だった。


その状態で2年生を終え、3年生になって僕は花田秋乃はなだあきのと会った。


クラス替えの初日に、昇降口前に貼り紙が出されて何組って事がわかる。


三年生の時は確か…1組だった気がする。


1組と知ったらすぐに校舎に入り階段を上がって3年フロアに上がった。


新鮮さは感じたけれども、この時の僕はまだそれ以上には感じらなかった。

なにせ、龍馬がいないまま3年生を迎えるなんてこの時の僕は考えてもいなかった。


きっと、上がる時も一緒なんだろうな〜の思いを持っていたから、いざこうして、3年に上がったことを実感するとそれに伴い龍馬の死を実感して3年に上がったことなんてコレッポチも嬉しくなんてなかった。


それから、始業式だとか、自己紹介だとか色々とやったけどその日やったことは僕は明確に覚えていなかった。


それから1カ月くらい経った頃だと思う。

ゴールデンウィークに入った。今年は五日間休みだっだ


両親が離婚した。中学生になって父親から理由を教えてもらった。

母親が、毎日虚ろな目をしてて全く笑わなくなってしまった僕に耐えかねて離婚したらしかった。


今思うとほんとに申し訳ないないと思っている。

父親は、それから僕一人を頑張って養う為に毎日帰ってくるのが遅くなった。

そもそもこの解釈が間違っていた。だから、父親も…。


「この歳になると残業はきついなぁ」と毎日言っていたのは覚えてる。それと一緒に毎日帰ってくると「ごめんなぁ。帰りが遅くて」と言ってきたのも知っていた。

その理由もなんとなく察しがついていた。


で、ある日。いつもは家で何かしら暇を潰していたのに、外に出なければいけない用事があった。それは父親が出張で一週間どうしても帰って来れない用事で僕は、色々と買い込むために、お店まで足を運んだ。


暇つぶしのためにゲーム、マンガとか、小説も買おうと思ってたから伝説のオタクの聖地と聞いていた秋葉原に初めて足を踏みいれようとしていた。結局行けなかったのだけどね。


自分の住んでるところからだと少し遠くて電車で行く場所だった。


ホームに入った僕は、電光掲示板を覗き込んで自分が乗る電車を確かめた。


目黒区から、渋谷にいこうと僕はしていたから一通り見た僕は残り11分くらいで渋谷駅方面の電車が出ると知ったから電光掲示板を離れた。


でも、ずっと隣で悩んでいた女の子を最後まで無視しきれなかった…。


「うーん…上野ってところは何処だろう…」


と呟いて下唇に手を当てながらつぶやいていた気がする。


その子は、勿論女の子で、黒いTシャツの上に白のカーディガンを羽織っていてデニムのロングスカートを身につけていた。少し驚いたのが黒いフォーマルシューズを履いていてなんでこんな服装してるんだろうって思った。


顔はこちらからは横顔気味で、よく見えなかったけれど可愛い女の子だとは思う。


その女の子は、「上野」と言っていた。小学3年生だった僕は、「はぁ?」って言えるぐらいにここ東京の地理は理解していた。だから龍馬と達成した山手線制覇のお陰で…いやじゃくても知っていた。目黒から上野まで11駅の駅を通らないといけないことを知っていた。


僕は周りの大人が困ってる彼女を助けない事に、ちょっとした不満と困惑を抱きながら話しかけた。


「えっと、どこまで行きたいの?」


敬語なんてめんどくさくて話さなかった。話せたけどね。


女の子は、ニコっと笑ってから


「上野までです!でも上野行きの電車がなくて…」


「上野ならここから東京駅の方に向かって11駅通らないといけないよ」


「え!そんなに!?あ、でもその。東京駅がどこにあるかも分からないの」


「……はぁ?え?東京住みじゃないんですか?」


女の子は首を縦には振らなかった…。この時僕は「マジかよ」とほんとに小声で呟いてた。


何しに来たんだろう…っていうことは考えはしたけどすぐに忘れてしまった。


なにせ、この女の子と話していたらいつのまにか渋谷区行きの電車が今。僕の目の前を通過していったからだった。しかも敬語になった。


「え?ちょっと、ちょっと!待っててば!」


慌てて無理なことも知ってて走ってく電車に呼びかけるが、当然!止まらない。


「あ、行っちゃった」


周りからは、電車が言って叫びまくってた可愛いか面白い小学生に見えるのかもしれないけど、本当に焦ってた。だって…今週過ごせる量の食材が家にはないから買い出しに行かないと僕は何も食べられない…マジでどうしよう…


「もしかしてあの電車に乗る予定だったの?ごめんなさい…私のせいだよね」


「え?うーん…そうかな?いやそうだね」


女の子は本当に申し訳無さそうに言ってきた。なんで謝ってるんだろう…

僕はほんとにそう思わずにはいられなかった。


「僕が話しかけた結果、電車が来ていたのに行ってしまった。東京の電車は改札が開く時間が短いから余計にきびしかったと思います。だから大丈夫です」


「でも…そのほんとにごめ「あ、上野行きの電車来ますよ」


「え?でも渋谷行きは行っちゃったよ?」


「僕は、このままだと死んじゃうので品川まで行くことに…あ、来た。この電車に乗っていけば上野まで行けるよ。品川までは一緒だからその間に教えるよ」


なんで品川かと言うと、ほかの地区は地理に疎かったから。しかもそこのショッピングモールには行ったことあるから。そんな理由。


「え?うん」


女の子は、ちょっと不安がりながらも乗ってきた。


因みに、二人ともフリーパスだったから態々券を買いに行くことはなかった。


「えー只今より発車します。目的地は品川区、五反田〜」と独特な言い方で放送された。


二人とも普通列車に乗っているから、品川〜と言われたら降りればいいだけ。


急いでもないから、そのまま着くまで女の子に上野までの乗り方を伝授した。


「えっと、因みにえっと、えっと」


えっとが多いけどどうしたんだろう…?


「本当は渋谷に何しに行こうとしたの?」


「買い物に行こうとしてた。でも君のせいで行けなかった。だから僕が知ってるところの品川のスーパーまで行くことにした。分かった?で君は?」


「あ、うん。えへへ。私はね………に来たの」


「………そうなんだ…」


僕は雫のような声で無意識にそう漏らしていた。


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