雑踏の中の孤独

 田舎にいた頃は、当たり前だと思って生きていました。何がって、他人の人生に土足で入るって事を。まあ、土足で入り合ってましたね。お互いの人生に対し、ダメ出しし合ってた。「不倫はやめろ」「そういう生き方してたら破滅する」「あんたダメだとおもう」「何で仕事やめたの」「給料少なすぎん?」「自立しなよ」「男日照り」「ガツガツしすぎ」「みっともない」「痩せなよ」……若かったな。


 上京して思ったのは、誰も私に興味が無いって事でした。寂しくもいい具合に、事件が起きないんだ、友達いないと。

 あとは、なんだろな。やっぱ、人間関係こじれる時って、そうだな。お互いに、土足で踏み込んだ時かな。それか、どっちかが踏み込んで、相手もしくは自分が、逃げるじゃないですか。それ以上踏み込まれたら、ガチの喧嘩になると思って。んで、逃げられたと思った方が、追わなきゃいいのに追う時、別離せざるを得なくなるって事は、あるかもしれない。それ以上傷つけ合いたくなくて。


 まあ、昭和の香りっていうのは大体「ノスタルジック」と心に感じる程度で丁度いい。食傷するほど、いらない。もう、あの重たい空気に耐えられる気がしない。


 だけど何だろな。たまに、ごく、たまに。思い出すんだよなあ。あの澱んだ、温かな人間関係を。そしてやっぱりやーめた、って、振り切って。風の中を、歩くのだ。


 そうそう。恋愛関係ってのはだから、踏みこんだその先にあるって事ですよ。だから物分かりのいい人ってのはたぶん、お友達以上にならないんだろうな、とか思いますね。ぜんぜん別の話なんですがね。


 とにかく、別離の理由は色々あるのだ。自分にも、相手にも。100%の罪など、無いんだぜ、って話ですね。

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