貧乏性

 生きるという事は、食べるという事。そして食べるには、金が要る。金は、労働しないと得られない。これが庶民の現実なのであります。


 自分が食べるだけならどんなにひもじくて惨めな食事でも構わないだろう。住む場所にしたって、風呂が無ければ流しで頭を洗う。部屋なんか寝るだけの場所。モノは、いつでもどこでも行けるよう、段ボール一つ分でじゅうぶん。小さな車があれば、引っ越しなんか五分でオッケー。何なら車が我が家。「霊が枕元で泣くんです」とか言うような同居人がいたって構わない。そんなのは気にしなければいいのだから。


 しかし、自分の子供に同じような生活を強いる事ができるだろうか。「できる」という人間はアホだ。子供がグレるぞ。そして将来、子供に刺されるぞ。「何で俺の家には風呂すら無いんだ! ボロが恨めしい、友達を呼べない!」って。


 金は、あったほうがいいに決まっている。無いとろくなことがない。本当にみじめだし、人生が痩せてゆく。幼年期をピークに、どんどん。思春期なんか最悪だろう、とかく同級生と比べて悲観しがちだし。一人だけいつまで経っても志望校や就職先が定まらない。なぜなら将来のことなんか考える余地が無いから。


 貧乏は悲しい。人間として下級の存在に見られる、周囲から勝手に。芽の出た芋をくれる人は親切心からその芋をくれているんだろうけど、芽の出ていない芋はくれないんだな、毎回。食事用にもらった期限切れのパンは全部甘い。

 時代遅れのトレーナーをくれる人は「お子さんにどうぞ」って言う。その小学生のお子さん、3Lサイズは大きすぎるんですけど。

 同級生が貧乏をいじる。笑いながら。うまくボケないと、よけいに惨めなのでピエロになる。そうすっと、それを見ていたきょうだいが怒る。「マヌケな事しやがって」と。埃ていどの誇りを守る事すら許されないのかい、ブラザー。


 貧乏っていうのはタトゥーだ。ある種の消えない。寒い時期になると、なぜだか疼く。くそったれくそったれくそったれ。貧乏なんか大嫌いだ。貧乏は死ね。こっち来んな。二度とそのシケたつら見たくない。だから人が休んでる日に、働く。特に意味も無く。

 



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