第4話 カテゴリー2

 カテゴリー2の重大性を理解するためには、まずエリュシオンについて知らなければならない。


 エリュシオンとは、太古の昔からこの世界と隣り合って存在する、のことである。世界には数千を超えるエリュシオンの入口があると言われている。

 多くは中生代ちゅうせいだいを思わせる姿をしており、二十一世紀を過ぎた現代でも、エリュシオンでは恐竜と見紛みまがう様々な巨大モンスターが跋扈ばっこしている。

 そこで採取できた素材――特に、モンスターを討伐して得られた素材は、物理法則をねじ曲げるほどの強い力を秘めている。


 これをマテリアルと呼ぶ。


 人類は長い時をかけエリュシオンに足を運び、マテリアルを研究し、社会の発展に役立ててきた。今やマテリアルは、現代社会になくてはならないものである。

 だが、弊害へいがいもあった。


 それが腐界――である。


 一度発生すると、有機物、無機物問わずあらゆるものを腐食し、消滅させてしまう。

 だが、腐界の真の恐ろしさはそこではない。


 腐界は。人の目で『見る』ことによってしか、存在を認知できないのだ。

 しかも

 


 発生した腐界は、まるで物理法則を完全に無視するかのようにそこに在り続け、この世をむしばみ、そしてある一定期間を過ぎると、霧のように消え去ってしまう。

 つい最近まで、腐界が発生したときの対処法は『隔離』と『時間経過』のたった二つしかなかった。それほど恐ろしい現象だったのだ。


 人類は腐界の研究を進めてきた。その成果のひとつが、

 現在、腐界の危険度は『レベル』と『カテゴリー』でランク分けされている。

 発生数の九十九パーセントを占めるマテリアル由来の腐界。これがカテゴリーワン

 残りの一パーセントはマテリアルの有無に関係なく、突如として発生する腐界。発生源が不明で、いつどこで発生するか予測がまったくできない。これがカテゴリーツー


 カテゴリー2はいわば、人智を超えた災いなのである。


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