第3話

これだけではなかった。学年の男子のリーダーである沢田雄一とも同じクラスになってしまった。しかも2年連続だ。

沢田は富田とは違い、ヤンキーみたいな人だ。いじめるのではなく、仲のいい人達と遊んだりする程度だと聞いている。富田との最大の違いは、グループのメンバー同士の結束は固いと言う点だ。

しかし、私は少し彼を恐れていた。どちらかというと私は勉強ができる方だ。学年で10位には必ず入る。それでいて1人でツンツンしているのが気に入らないのだろう。睨まれることなんてしょっちゅうだ。

そんなことを考えていると、担任の先生が教卓の前に立った。私語をしている生徒が大半の中、先生は号令をかけた。

「起立、礼、着席。」

その先生は自己紹介をした。

「えー、君たちの担任になった名倉と言います。1年間よろしく。」

簡単に自己紹介を終え、こんな話になった。

「早速だが、学級委員を一人決めたいと思う。まあ、立候補があればありがたいんだが……いないよな〜。よし、くじ引きで決め……」

「向井で良くね?」

そう発言したのは沢田だった。彼の方に視線を向ける者と、私のことを探しているのか教室を見回す者に別れた。

「沢田、何で向井がいいと思ったんだ?」

「去年も学級委員してたから。てか、やりたくない奴の方が多いだろ。くじ引きで決めるとかマジでやなんだけど。」

沈黙だった。肯定という意味なのはすぐに分かった。

先生は少し困惑したようだ。

「……向井、どうだ?」

「………やります。」

答えは一つだった。ここで嫌だと言ったら絶対にクラスから浮くことになる。沢田から仕打ちを受け、富田からも何をされるか分からない恐怖があった。

「よし!決まったな。じゃあ学級委員、終わりの号令を頼む。」

「起立、礼。」


後で沢田を呪おうと思った。もちろん、冗談である。

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