第4話 その子にその親あり

「な…なんという男だ…!運動会という名の陸上競技全てで1位を取りおった…!」

「まさに英雄…!」

「すごい…!!」

「くぅ~あんな奴に!!」


色とりどりの声が聞こえてくる…いや、聞こえているように感じるだけなんだが。

朝6時から開始されたこの運動会ではあるが、ありえないってレベルのハードさではなかった…。

フルマラソンとトライアスロンが最初に来るって頭おかしいだろ…。

『最初のフルマラソンとトライアスロンは余裕でクリアした俺だったが…』とかいうゲームの文章が変態すぎるんだよなぁ…


いや、今は夜の8時ぐらいなんだけどね…。おなかすいたわ…。


「では、里の大運動会をこれにて閉会とする!解散!」


周りの人達(忍者)が「楽しかったねェ~」とか言って帰ってる。

ここにフルマラソンとトライアスロンを含めた全30競技全部に参加したの俺だけだぞ?

これとさらに幅跳びとか砲丸投げとか全部やる種目もやったぞ?2回やる羽目になったぞ?なんだこれ?


眠たいとかいう次元じゃなくて、もう幽鬼のようになってるんだよなぁ…。



「…いや~才子が言っている通りの素晴らしい人物であったな、藤島くんは」


あ、あれは才子のお父さん…


「…やっぱり…うん…」

お、お母さんもいるな~ゲームでは絵が無かったけど、才子に似て美人ですねぇ



「「こんな立派な人にアレを娶ってもらうのは申し訳ないなぁ…」」


ん?なんかハモったぞ?



親父さんがちょいちょい手招きしてくる。え~と…


「なぁ…藤島君…」


「な、なんでしょうか…?」



「本当にアレでいいの?」


「へ?」



つーかこの運動会って勝った人に娘をあげるとかそんなノリじゃなかったっけ?


「いやね、まことに申し訳ないんだけどね…正直ただの時間稼ぎみたいなノリだったのよ運動会。」


「は?」

何!?その衝撃的な事実!


才子のお母さんもこっちに来る。

「あまり大きな声で言えないけどね…包丁とまな板すら満足に使えない子を嫁に出すのはね…ちょっと…こっちに来ても全然治らないし…」


「ん??」

なんかおかしいぞ?


「いや、優勝できなくても全部1位じゃなかったらお前にはやれん!みたいなノリで一回ごまかそうとしてたんだけどね」

だから全部1位じゃないとすぐ復帰しなかったのか、なんだそれ!?


「正直もうちょっとマシになってからお返ししようとしてたのよ…」

…拷問って…もしかして…



「「あの子って普通に憧れてるくせに普通の事ができないのよ」」

あーーーなんか腑に落ちた。

だから拷問を受けてたでござるーーみたいなノリだったんだな、ゲーム本文は…。



「あのーーーウチが家事を教えるとかじゃダメです?」


「「え?」」



「あ、貴方は…」



「う…私は」




「「貴方が才子が言ってた本妻か!!」」


「え…」



あーそーくるかー、やべえ嫌な予感するわ


「まぁウチの才子は顔はいいしなぁ…」

「忍術は才能あるし、種さえもらえればいい面あるし…」


「ちょ…は…たねぇ?…へ…」


才子さんボコボコじゃねえか、これ爆発するぞ多分



「ウ…ウチは本妻じゃないし!!つ、付き合ってないし!才子ちゃんもそういうのじゃありませんからーーー!!!!」


閃光。そして爆発。俺はすぐさま魔人の腕を召喚してガード。

才子両親ズは二人とも空蝉の術で回避していた。すげぇ



「なかなか愉快な方ですな!なるほど、こういう子が本妻では才子を気に入るのもよくわかりますわ!」

「愚娘でもなんとかなりそうですねぇ…」


ある意味本当に大物だわこの夫婦。


「明日の朝、才子は返すから!一緒に帰ってね!できるだけなんとかしておくから」



「は・・・はい」




さて…帰宅手段(テレポート)が無くなったんだけど、どうしようかなぁ…




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