第4話

そう、なるはずだったのだ。だが、俺が今居る場所は最前線の国境沿いだった





こうなったのには訳がある。それは、今から十時間前に遡る


シャロが言った通り、数日経った朝、軍からの迎えが来た。それも、二度と会う事は無いと思ってた相手がだ


「ね?私の言った通りになったでしょ?」


「うへぇ…マジかよ…」


「大マジよ。いいから荷物と、あんたっていうお荷物載っけなさいよ」


「いつ話しても性格悪いなぁ…」


顔は可愛いのに、性格が全て台無しにしてる。だが、こんな事は死んでも言えない


「性格悪いのは自覚してるわよ。何?それとも乗りたくないの?」


「まぁ、乗りたくは無いのだが…」


「あんたねぇ…戦争なのよ?あんた一人の意見を聞いてあげられるほど、世の中は平和じゃ無いの」


「でもな…死にたく無いものは死にたく無いんだよ」


「そんなの誰だって同じよ。まぁ、中にはお国のためなら命を差し出すとか言う馬鹿もいるけどね…」


世の中いろんな奴がいる。だからそんな奴が少しばかりいてもおかしくは無いだろう


「分かった分かった。乗れば良いんだろ?」


「そうよ。まぁ、あんたに拒否権なんて最初から無かったんだけどね」




ですよね…


仕方なく、荷物を載せて車に乗り込んだ







車をしばらく走らせると、港のような所に到着した


「着いたわ。ここが、出発する基地よ」


どうやら、基地に着いたらしい


このヤノカ基地は、航空機用の滑走路に、艦船用の軍港など、陸海空全ての軍が駐在しているとのことだった


そして、ここから色んな所に出撃する





ん?ちょっと待てよ。出発する基地とは一体?


「明日の早朝、前線基地に向かうから」


「…え?最初は待機要員だって聞いたのだが?」


シャロの説明では待機要員で、軽く訓練を行うだけと聞かされていた


「そんなに世の中甘く無いわよ。いい?前線基地では、私の仲間を待たせてるの。言い訳は聞きたく無いから」


朝の五時に出発予定らしい。早朝に出発する事によって、敵に察知されるのを防ぐとの事だった


だが、五時まであと半日も無い。つまり、あと数時間で覚悟を決めなければならない






「とは言われてもなぁ…戦い方さえ分からないし、魔法さえ扱い方が分からないのにどうするんだ…」


待機室で荷物をまとめながら、そんな事を皐月は呟いた



「お前が新人なのに前線に送られる哀れな奴か」


突然背後から声を掛けられた


振り向くとそこには、いかにも軍人って感じの屈強そうな男が立っていた



「俺はモーデン・リッチオだ。今回、お前の乗る輸送機の機長だ」



輸送機とは言っても、前線に飛ぶのに丸腰な訳が無い


いわゆる爆撃機を輸送機に転換したようなものだ


「えーと、長波 皐月って言います…明日はお願いします」


「そんな礼儀正しくする必要は無い。それに、嬢ちゃんからエリートだって聞いたしな」


嬢ちゃんとはレミルの事だろう。ただ、エリートでは無いんだが…


「まぁ何にせよ、俺が操縦桿を握るからには安心してくれ」


この人は自分の操縦に自信を持っているようだ



「その様子だと、頭の中整理出来ずに寝れないんだろ?」


「うぐ…」


「ほらな。新人はそんなものさ。寝れないなら付いて来い」


リッチオはそう言うと、待機室を出て行った




「…どうせ寝れそうに無いし、暇だったから良いか」


俺は急いでリッチオの後を追った

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