日常が壊れる日

夕暮 社

日常が壊れた日

 最後に聞こえたのは、トラックのブレーキ音と、人の叫び声。

 最後に見えたものは、君の引きった顔。

 最後に思ったことは────



 ──ああ、やっぱり……





 眉唾まゆつばな話だけれど、うちの高校には一つの都市伝説めいた噂があった。

 なんでも、『文化祭最終日、後夜祭で行われるダンスを男女で手を繋いで踊ると、そのペアは生涯を結ばれる』とのこと。


 男女のペアで踊ったら生涯を結ばれる?

 馬鹿馬鹿しい。中学校で流布されたものならまだ可愛げもあるだろうけど、高校生にもなってそんな嘘かホントか判然としない都市伝説を本気にする奴なんかいるわけないじゃない。

 ホントにアホらしい。そんな噂を信じる奴の気が知れないし、そんな噂を広めて回る奴の気も知れない。

 あーやだやだ。ホントありえない。マジない。ちゃんちゃらおかしくてへそでお茶が沸きそう。


 ホント…………





「嫌んなっちゃう……」


 昼休みの教室。

 窓際の机にうつ伏せでぼやく。

 程々に騒がしい我がクラスは、私のそんな愚痴を見事にかき消してくれた。

 聞き取れるとしたら、せいぜい私の前にいるクラスメイトくらいだろう。


「誰よそんな前時代の噂垂れ流して回ってる奴……見つけたら鼻フックして写真撮ってやる……」


「仕返しの仕方が下品だよ、アンちゃん。もうちょっと淑女らしい仕返しにしないとモテないよ」


 そして、私の目の前にいるクラスメイト──あまねつぼみは私が吐き出す呪いの言葉を窘めつつ、上品な佇まいで言う。


「相手を見つけたらね、廊下ですれ違うときにわざと肩をぶつけるとか、足の先を踏んづけるとか、意味もなく遠くからクスクス笑うとか、そういう事をするの。そうすれば相手は勝手に意気消沈して学校にも来なくなるわ」


「つぼみのそれは下品じゃないけど陰湿すぎるよ……私よりモテないよそれ……」


 私の親友の冗談は妙に生々しいというか、リアルというか……。

 変に説得力があるから、つぼみの冗談は仲のいい人にしか通じないのが困りものだ。


「まぁ、冗談は冗談としてさ。人の噂も七十五日って言うし、あんまり気にする必要ないんじゃない?

 アンちゃんの作戦だって、出鼻は挫かれたけど全部がダメになったわけじゃないでしょう?」


「そうだけど……」


 私の作戦というのは、例の都市伝説に乗っかって意中の人と付き合おう、という作戦と呼ぶかどうかも微妙でお馬鹿なものだ。


 そもそも、後夜祭の都市伝説は現在では半ば風化していたものだ。在籍している生徒のほとんどは、まずそんな噂があった事すら知らなかったはずだ。


「それを他の誰かが言いふらして認知度を上げやがった……くそったれ」


「言葉遣いが荒いよアンちゃん」


 私の理想としては、何も知らない彼をダンスに誘って、あわよくば告白出来たら最高だったのだけれど……。


「世の中って上手くいかないものね……」


「幸い、あの噂はまだ女子の間でしか流行ってないし、アンちゃんと駿河するがくんは普段から仲良いからダンスに誘っても違和感ないし、成功すると私は思うけれど」


「そう、かなぁ……。あいつ、噂話を聞きつける鼻が鋭い上にそういうの信じてそうだからなぁ」


「それ耳なの? 鼻なの?」


 うんうん唸る私と、ツッコミどころがズレているつぼみ。

 そんな妙に噛み合わない話を最後に、昼休みの終わりを告げるチャイムが校内に響いた。


「もう昼休み終わりか。つぼみも早く自分の席に帰りなさいよ」


 しっしっ、と手で払う私にハイハイ、と言いながら席を立つつぼみ。


「さっき、人の噂も七十五日って言ったけど、文化祭は来週よね。ほとぼりが冷めるまで待ってると誰かに取られちゃうよ、彼」


「むぅ……」


 雑に手で払われたことへの仕返しか、つぼみは朗らかな顔をしながらそんな事を言って自分の席へと戻っていった。


「………………」


 ……すごい緊張してきた。

 噂がどうとか以前に、彼をダンスに誘う事自体が、照れくさい上に難易度が高い。

 ラブコメの主人公みたいに鈍ければ良かったのだけれど、残念ながら駿河するが陽人ようとという男は、他人の恋愛事に関してはかなり鋭い上に聞きたがる奴だ。野次馬根性たくましいだけなのか、恋のキューピッドにでもなろうとしてんのか、その辺は定かではないけど。


 文化祭は来週。

 つぼみの言う通り、そろそろ覚悟を決めて彼を誘わなきゃいけないのはわかっているけど……。


「まったく、気が重いわ……」


 今から誘う場面を考えただけで、恥ずかしさでどうにかなりそうだった。





 その日の放課後の事だった。

 来週の文化祭に向けて着々と準備をしていく生徒たちは心なしかいつもより浮き足立っていて、めんどくさいだなんだと言いながら、みんな楽しみにしている様子が伺える。


 そんな中、一人重苦しい表情をしながら帰宅の準備をする生徒がクラス内にいた。

 無論私──もとい、鈴鳴すずなりあんずである。


 杏のクラスは、文化祭当日喫茶をやる予定で、杏や他数名の女子はウェイトレス役に任命されている。

 今日は衣装の為の採寸をしたのち解散ということで、小道具や飾りを作っている班よりも早上がりで帰路につくことができた。

 そこまでの情報にはどこにも重苦しい表情をする理由がないが(採寸の際にウエストが多少太くなっているのがショックで、ダイエットを決意したが)、問題はこの後のことだ。


 杏が想いを寄せている相手──駿河陽人のいるクラスを覗いていこうと思い、別クラスの様子を見に行ったところ目当ての彼はクラス内で飾りを作っていた。

 駿河陽人のクラスでは──これまた定番ではあるが──お化け屋敷をやるらしく、暗幕やお化けのイラストが描かれた厚紙が床に広がっていた。


 陽人は帰宅するまでにはまだ時間がかかるらしい。男友達と談笑しながら作業していて、廊下から覗く杏には気付かない。


 一緒に帰ろうって言って、その帰路の途中で自然と、私何も意識なんてしてませんよ、みたいな態度を取りながらダンスのお誘いが出来るのが、理想形なのだけれど。


 杏は心中でそんな算段を立てながら、しかし今日は無理そうだ、と教室から視線を外す。


 自分のクラスに戻ろうと踵を返したその時。


「ねぇ、駿河くん」


 クラス内の一人の女子が、陽人に声をかけたのが耳に入った。思わず振り返って陽人の方へ視線を向ける。


「ん?どした、山内やまうちさん」


「このあと用事とかってあるの?無かったら、ちょっと話したいことがあるんだけど……」


「別に無いけど、話って?」


「あ、あとでね……」


 そう言って会話は終了。

 女子はそそくさとその場を離れ、教室の隅で形成されている女子グループに戻っていった。

 陽人は男子グループと既に談笑に戻っている。


 そして、教室の外──廊下で覗き見ていた杏は……。


「あ、あ、あ…………っ」


 あのひと!!……と声にこそ出さなかったが、心中でそう叫んで山内さんと呼ばれていた女子を凝視していた。


 私にはわかる……あの顔は間違いなく恋する乙女のソレ! あの山内さんとかいう人は駿河の事を……。そして表情と会話の内容、タイミングからしてこの後話すことというのはひとつしかない。

 おそらく彼女も駿河を後夜祭のダンスに誘うつもりだ……!


 そこまで思考が至ってから、はっと我に返り教室から顔を引っ込める。

 今、駿河陽人に見つけられたらストーカーのように勘違いされてしまうかもしれない。


 どうしたものか……、と思案する。

 杏も同じようにダンスに誘おうとしていたのだ。これで山内女子に先を越され、もし陽人が誘いを了承したとき、杏の作戦は全て泡となって消える。

 だからと言って、ここで教室内に入ったとしても、何も解決しないどころか盗み聞きしていたことが露呈して心象は最悪になりかねない。


 陽人が誘いを断るのを願うしかないか、と諦めてその場を離れて自分のクラスに戻っていった。


 そんなことがあり、お祭りムードなクラス内で一人ため息なんかをついていた。


「つぼみ、先帰るね」


 飾りを作っていた周つぼみにそう言う。


「アンちゃん、すごい顔してるけど大丈夫?」


「うん、多分平気。あいつなら彼女からの誘いを断ってくれると信じてるから……」


「そ、そう? 気をつけてね」


 よくわかっていないつぼみを置いて、杏は学校を後にした。





 校門を出て右に曲がり、いくつかの信号を渡った先にある駅に向かう。

 足取りは決して軽いとは言えず、なんとも言えないもやもやを抱えながらの帰路はいつもより長く感じた。


 そもそも、そう重く捉える必要もないのに。

 まだ彼が誘いを了承するとは決まってないし、あの女子生徒がダンスの誘いをするかどうかすらわからないことなんだ。

 気にすることじゃない。

 そんな事は分かってる。


 それでも。頭では分かっていても、心がついてこないのが乙女心の厄介なところなわけで。


「はぁ……」


 ため息なんかが出ちまうわけです……。


「……あの女子の誘いを断ってくれてたら、明日誘おう」


 そう、淡い決意を固めたとき。


「おーい!」


 と、後ろから声をかけられて、私は何事かと思い振り返った。





「ねぇ、駿河くん」


「ん?」


 手元の作業を一時中断して顔を上げると、クラスメイトの山内さんが頬を少し赤らめながら話しかけてきた。


「どした、山内さん」


「このあと用事とかってあるの?無かったら、ちょっと話したいことがあるんだけど……」


 頬の赤らみが増して、山内さんはそんなことを言ってきた。

 俺は一瞬なんの話だろう、と考えたが、すぐに最近流行りの“噂”の事を思い出した。


「別に無いけど、話って?」


「あ、あとでね……」


 そう言って、山内さんは足早に女子グループの中に戻っていった。


 ──まぁ、十中八九、後夜祭の都市伝説の事だろうな。

 どうも、俺はそういう恋愛絡みの話は耳に入りやすい性格タチなもんで、ラブコメ漫画の主人公みたいにはいかないな、と考える。

 漫画ラブコメの主人公みたいに気付くことさえなければ、悩む事もないだろうな、と考えてしまう。さといのも存外悩みものだ。


「陽人ー、そこのハサミ取ってくれぃ」


 と、近くでお化けの絵を描いていた沢渡さわたりが話しかけてきたので、この件は一旦保留にしとこうと顔の向きを変えたとき。


「ん?」


 教室の扉の前に、見知った顔の生徒が目の端に映った。


 あれは、鈴鳴か? どうしてうちのクラスに……いや、それよりもどうして山内さんを凝視してるんだ?


 首をかしげながらも、ハサミをクラスメイトに渡して自身も男子グループの輪に戻る。


 視界の隅に鈴鳴を映しながら、談笑する。

 男友達と馬鹿な話をするのは好きだし、何より楽しい。


 山内さんには悪いけど、後夜祭のダンスの誘いだったら断ることにしよう。……気は重いけど。


 ……人からのお願いや望みを叶えられないのは悲しいことだ。


 自分は特別立派な人間ではない。

 ただ、頼み事やお願いを断るのが心苦しいだけなんだ。そういった言葉に弱いだけで、優しい人間ではない。

 ただの、ありふれた一男子高校生でしかない。


 だからこそ、他人の恋愛ごとを聞くのは面白い。相手のどういうところが好きとか、どんな風に告白しただとか、そういう、自分では気付けないこと、出来ない事をしてのける他人の話は楽しい。


 ただ、恋占いとか都市伝説とかは信じられない。話を聞くぶんには愉快でも、そんな誰が流したかも分からない言葉に操られて行動するような人は、端的に言って好きではない。

 娯楽はあくまで娯楽として消費されるべきだと思う。

 真に受けて自分の行動方針を変える人間の気が知れない。

 結局は、生きた自分が何を考えてどう行動するかでしかない。誰かが流した言葉ではなく、自分が考えた自分の言葉で、行動するべきだ。


 暗い思考に囚われそうになったとき、視界から鈴鳴杏が消えていることに気付いた。


 ……何か気にかかる。

 そう直感した陽人は立ち上がり、クラスの端で固まっている女子グループの一人、山内さんに急用が出来たと告げて話はまた明日に、とだけ言って踵を返す。

 男子グループに戻るとクラスメイトに、


わりぃ、俺の分やっといて」


 と言って、自分の鞄を手にかけて教室を飛び出した。





 高校一年の頃──つまりは去年の出来事。


 入学式の日に、あの人と出逢った。

 その時はただのクラスメイト同士でしかなかった。


 ……何がきっかけだったか。

 いつからか仲良くなっていて、意気投合していて、友達になっていた。


 あの人は妙なところでイメージと合わない言動を取る。本音……ではなさそうだが、ぽろっと毒を吐くときに言葉遣いが荒くなるところがある。

 大人しそうな顔で、偶に馬鹿な事をして教師に怒られていた時もあった。

 木によじ登って降りられなくなった猫を助けたり、漫画を教科書で隠しながら読んだり。


 なんというか、行動が読めない人だな、と思った。だからきっと、惹かれたんだろう。


 他人の顔色を伺ってばかりいた自分にとって、その人は眩しくて。羨ましくて。


 気付いたら、自分の退屈な日常は、その人によって跡形もなく壊されていた。


 ……好意を抱くのに、何の違和感も躊躇いも無かった。


 『恋』というのは、どうしてこうも形容しがたいのだろう。

 形が無いから? 目に見えないから?

 ──分からない。けれど、確かに存在しているモノだ。


 自分は今たしかに、恋をしているんだ。





「おーい!」


 後ろからの声に振り返ると、杏が来た道から駿河陽人が走ってきていた。


「す、駿河!?」


 慌てて背を向けて暗い顔をしている自分にビンタをかまして、明るく取り繕ってから再び振り返る。


 再び振り返る頃には陽人はすでに杏に追いついて隣に来ていた。


「どうしたの駿河。そんな慌てて」


 慌てて取り繕った杏が隣に並んだ陽人にそう尋ねると、それなりの距離を走ってきたであろう陽人は息切れする事もなく言葉を返す。


「いや、なんつーか……うーん、説明しにくいなぁ」


「?」


「──いや、何でもねえ。なんとなく一緒に帰りたかっただけだ」


 陽人はしまった、とすぐに思った。

 虫の知らせのような、漠然とした“なんとなく変な予感”がして追いかけてきた、という説明は女子相手にするなら気持ち悪すぎると考え、他の言い訳を考えたが、めんどくさくなって自然と口に出た言葉で流そうとした。

 が、自然と口に出たのがあんな言葉なのは、それはそれで狙ってる感が強すぎて気持ち悪い事になってしまったことに、言った瞬間に悟ったのだが、時すでに遅く。

 それを聞いた杏は、


「……うわぁ、それ素で言ってるなら相当キザなセリフだよ?」


 と言って、顔を逸らしてしまった。


 だよなぁ、と思う陽人をよそにして、顔を逸らした杏は。


 うわあああああああああああああああああああああああああああ!!!!!!

 一緒!? かえ、帰りっっ!! 帰りたい!!?

 夢? 夢なのか!? だって一緒に帰りたっっって!!! どういうことだよそれどういうご褒美なのそれ! 乙女心を弄ぶのもいい加減にしろよキザ男が!!!


 と、心中では大騒ぎだった。あまりの混乱と混沌っぷりに、何故か怒る始末である。


 何とかいつも通りの返答をする事は出来たが、顔の赤らみまではコントロール出来ないので顔を逸らし、心臓の鼓動と心が落ち着くまでは目を合わせられそうになかった。

 はたの他人が今杏の顔を見たら、あまりの赤色せきしょくに赤鬼を連想することだろう。


 そんなこんなで、すれ違ったまま、顔を合わせないまま二人は無言で歩き、駅前の商店街が近づいてきていた。


 駅から商店街まで続く一本の道路は午後四時から午後六時までの二時間、歩行者天国となり車道の真ん中であろうと平気で歩けるようになっている。

 なので、この時間帯は歩行者が多くとも狭苦しいという印象は無かった。


 杏と陽人の二人は真っ直ぐ駅まで続く道路の少し端を歩いていた。

 変わらず無言のままの帰路だが、杏は不思議と嫌な気分ではなかった。

 好きな人と歩いている、というのはどこかそわそわするけれど、嬉しくもある。不思議な気持ちになる。


 杏は未だに陽人の顔を見ることができていない。顔の赤らみは多少引いたかもしれないが、鼓動は今なお大鐘を打っているようだ。


 駅が近づいてくる。

 杏と陽人が乗る電車は真反対で、駅に着けばそこで自動で解散。また明日、なんて言って反対側のホームに行かなければならない。

 まだ駅までは一五〇メートルはある。けれどそんなの一瞬だ。楽しい時間、嬉しい時間が過ぎるのはあっという間だ。


 杏は深呼吸をして、ようやく陽人の横顔を盗み見ることができた。

 陽人は相変わらず、何を考えてるのかよくわからない顔をしている。嬉しいとかつまらないとか、そういう感情が浮かび上がっていない顔だ。でもそれは決して無表情というわけでもなく、何か遠くのものをぼんやり眺めているようなほうけ顔をしている。


 はぁ、とため息をつく。

 こんな天然たぶらかし男の言動に、いちいち動揺してたら告白なんて先の先だな、と心中で呟く。


 まぁ、それは後々の課題として、今重要なのは──


「そういえば」


 と、長い沈黙を破って話しかけたのは陽人だった。


「鈴鳴がうちのクラスの前にいたように見えたんだけど、なんか用事でもあったのか?」


「え」


 見られてたーーー! とショックを受けつつ、どうにか誤魔化せないかと頭を高速回転させる。


「えっと、き、気のせいじゃない?私のクラスと駿河のクラス、階段挟んで反対側じゃん!」


「ふーん……そっか」


 誤魔化せたのかは分からないが、陽人はそれ以上この事には言及してこなかった。


 沈黙が破れたことで、こちらからも陽人に質問しやすい空気になって、結果的に杏にとっては良かった。


 ──そう、今杏にとって重要なことは、陽人を後夜祭のダンスに誘うこと。

 そして今、二人きりで下校しているという千載一遇のチャンス。

 クラスの女子との話がどうなったのかは知らないが、今のタイミングほど都合のいい場面はそうそうないだろう。

 ここで言わなければ、今度どういう形であれ告白なんて夢のまた夢である。


「あ、あのさ……」


 自然に。あくまで自然に話しかけるのよ私。


 心の中で何度もそう唱えつつ、慎重に言葉を続ける。


「もうすぐ文化祭じゃない。駿河のクラスは何の出し物やるの?」


「お化け屋敷だよ。つってもわりかしチープだけどな」


 陽人はあまり文化祭に乗り気じゃないのか、それともお化け屋敷そのものに乗り気じゃないのか、ぶっきらぼうに言う。


「鈴鳴のところは喫茶店だったっけ?」


「う、うん。ウェイトレスやるの」


「喫茶店って大変そうだな。文化祭んとき見に行っていいか?」


「もちろん!私はお化けとか苦手だからそっちのクラスには顔出さないかもだけど……」


 会話を少しずつ、少しずつ誘導していく。

 怪しまれないように、悟られないように。


「そういえば今年の後夜祭、キャンプファイヤーやるんだって」


「そうなのか?去年はやってなかった気がするけど」


「うん。五年くらい前の在校生が火遊びをして危ない目にあって中止になったんだって。でも今年から復活! 私キャンプファイヤーって初めてだからワクワクするな〜」


「俺も初めてだな……じゃあダンスってキャンプファイヤーを囲みながらやるのか」


「!」


 どのようにダンスのことを切り出そうか考えていた杏に代わり、陽人の方から話題を振ってきてくれたのは僥倖ぎょうこうだった。


「そ、そうかもね……あ、あのさ、駿河はもう、誰と踊るとか、決めた?」


「いんや、全然」


 その言葉を聞いて、杏はひとまず安心する。

 どうやら、クラスメイトの女子は振られたらしい。


「……じゃ、じゃあさ。もし当日手が空いてたら──」


 そこで。

 背後から聞こえたがその場を凍てつかせた。





 杏はどことなく、いつもの快活さが無いように見える。

 緊張しているのか、退屈なのか。


「そういえば今年の後夜祭、キャンプファイヤーやるんだって」


「そうなのか?」


 いつものように会話をしているが、どことなくかしこまっている気がする。


 陽人のその考えはほぼ当たっている。

 杏はこれからその後夜祭のダンスに誘おうとしているのだ。しかし、それは同時に、陽人に振られる未来も決定することになる。


 陽人は、占いを信じていない。都市伝説も娯楽の一つとしてしか見ていない。

 それを真に受けて、信じる人のことを好いていない。


 だから、このまま行けば杏はおそらく誘いを断られただろう。彼は文化祭を、友達と回ろうと思っていたからだ。

 “友人”としてなら校内を一緒に散策する誘いには乗るかもしれない。

 しかし、女子間で流行っている都市伝説の存在を知っている陽人は今、女子は、例外なくその都市伝説にあやかろうとしているに違いないと考えている。


 だから、そのままであったなら、嫌われることはなくとも、少なくともダンスの件は断られていただろう。


 そのままだったなら──





 何か硬い物同士がぶつかる音が商店街に響いたかと思えば、次いで人々の悲鳴が聞こえてきた。


 杏たちが振り返ると、自分たちが歩いてきた道にはトラックが走って来ていた。

 スピードの出たトラックは、迷うことなく駅方面に向かっている。


 ……トラックが車道を走るのはなんら可笑おかしい事ではない。誰もが目にする当たり前の光景だ。

 しかし、今この瞬間、この場所でトラックが車道を走るのは笑い話では済まない可笑しさがあった。


 歩行者天国の一本道は、駅と商店街に密接に交わっている。だから学校から帰る学生や買い物目的の主婦が多く集中するこの時間帯は自動車進入禁止になっている。

 学生や主婦や犬の散歩をする人が、堂々と車道の真ん中を歩いている空間に、そのトラックは突っ込んできていた。

 進入禁止の看板を吹き飛ばし、道行く人々をもね飛ばしそうな勢いだ。


 幸いなことに、杏たちがいる地点まではまだ少しの猶予がある。植木やガードレールなどが置かれている歩道側に逃げ込むだけの時間くらいは残されている。


 当然、他の歩行者同様に、歩道に走ろうと構える陽人。

 走る直前、一緒に帰っていた女子の方に目をやる。杏は固まったまま、トラックの方を見つめている。


 そりゃそうだ、と陽人も思う。

 どんな事情があるのか知らないが、こんな人の多い場所に突っ込んでくる運転手の気が知れないし、こんな場面に出くわすなんてよっぽど稀有だ。身動き出来なくなるのも無理はない。

 あるいは、トラックが走り抜けた道に倒れる人を心配してのことか。

 しかし、今は身の危険が迫っている。自分たちの命を優先して守らなければならない。

 立ち止まっている場合ではない。


 陽人が杏の手を握って、歩道側まで引っ張ろうとした──しかし、陽人が杏の腕を掴むことはなかった。


 空を切る陽人の手と、どこかへと駆け出す杏のからだ。


 陽人はその意図を一瞬図りかねる。明らかに歩道には向かっていない。むしろ、猛スピードで迫ってくる暴走トラックの方に向かっているような……。


 トラックは止まらない。上手いこと脇に逸れたりせずに、真っ直ぐ車道を爆走する。車道には未だ逃げ遅れた子供が尻餅をついている。


「────っ!」


 と、そこで杏の意図を理解した。できてしまった。

 彼女が何処に向かっているのか──簡単なことだ。

 転んだ子供の下へ迷わず走る杏。


 向こうからやってくるトラックと、こちらから向かって行く少女と、間に倒れている子供。

 どう考えても間に合う筈がない、と判断する陽人。

 助けるも何も、二人ともかれて終わりだ。そんな結末モノは目に見えている。


 なのに、自分の目の前から離れて行く彼女は止まらない。


 初めて出会った去年からずっと思っていたことだ。彼女はイメージに合わない言動ばかりを取っていた。大人しそうな顔をしながら大胆な行動を取る人だった。

 教科書を盾に漫画を読むなんて馬鹿なことをしたり、猫を助けるために木によじ登っては降りるのに失敗して怪我をする。

 喧嘩の仲裁に入って、女子に叩かれたときもあった。……そのあとやり返していたが。


 イメージにそぐわない言動を取り続ける、鈴鳴杏という少女に、どうしてこうも惹かれるのか、自分でもわからない。

 でも、きっとそれが彼女にとっての“自分らしさ”なのだろうと理解した。


 けれど、これだけは阻止しなければ。


 トラックに轢かれようとしている彼女を──自分が初めて好きになった人を、失わないために。


 陽人もまた、目の前を走る杏を追ってトラックへと向かっていった。





 馬鹿か私は……!


 心で自分に罵声を浴びせながら、それでも杏の体は迷わず転んだ子供の下へ駆けつける。猶予は十秒も無いだろう。脚力にはそれなりに自信があるし、年端もいかない子供くらいなら抱えて走ることも、まあ出来るだろうと判断している。

 それでも目前に迫り来る恐怖トラックは、否が応でも体を萎縮させる。

 ギリギリ間に合うかどうか……。とにかく、目の前の子供だけでも歩道側に引っ張るなり投げ飛ばすなりはしたい。


 杏自身、これが無謀な事なのは分かっている。現実は創作フィクションのようにはいかない。子供を助けられるとしても、きっと自分は回避に間に合わないだろうと頭の隅で理解している。


 でも、カラダは勝手に動いちゃったし。

 目の前の子供を見殺しにしたら寝覚めが悪くなるし。うん。

 もし、私が轢かれても、それは仕方がないことだと諦めよう。せめて五体満足で病院に運ばれることを祈るとしよう。


 そう考えた。

 そう感じた。

 ならあとはもうなるようになれ、とばかりに足を速める。


 なんとかトラックが来る前に子供の前までたどり着き、子供の腕を強引に掴むとそのまま歩道側に向きを変えようと視線を上げたとき──


 ──ああ、これは絶対に間に合わない。


 そう悟れてしまった。

 掴んだ腕を無理やり遠心力に任せて引っ張り、子供を歩道側に投げ飛ばす。

 しかし投げた反動で杏は体勢を崩してしまった。ここからではどうやっても自力でトラックを避けることは無理だ。

 トラックはもう目前だ。ほんの少しの猶予もない。


 ──どうしようもない。


 杏はすんなり、自分の生存を絶望視した。

 トラックがガタガタと走り迫る。

 木の側で自分が投げ飛ばした子供が起き上がろうとしている。

 全てがコマ送りになっているように見える。


 ……走馬灯は無かったけれど。

 好きな人の目の前で死ぬなんて、私もついていない。

 こんな事なら、都市伝説がどーとか言わずに、普通に告白すればよかった。好きなら好きって言うべきだった。

 ダンスの誘いとか回りくどい事をせずに、二人きりの帰り道で伝えればよかった。


 そんな、今更な後悔が心を埋め尽くした。

 私の日常は粉々に壊されて、永遠にやってこないんだと、泣きたくなった。


 目を閉じる。

 聞こえてくるのは、人々の悲鳴や怒鳴り声。

 トラックのブレーキ音。

 誰か、聞き馴染みのある声が、やっぱり怒鳴っている声。


 そうして、私の体は宙を飛んだ。

 無慈悲に悲鳴をあげながら突進してくる鉄の塊に、撥ね飛ばされておしまい。


 …………の、はずなのに。

 どうしてか、ぶつかった衝撃はやって来ず、何かに強い力で引っ張られる衝撃だけがやってきて、私の足が地面から離れていた。


 目を開けると、相変わらず世界はコマ送りのまま。

 だけれど、自分の体はやはりトラックに撥ねられておらず、斜め前にトラックの顔が視界に映り込んでいた。

 そして目の前には、一人の男子高校生の姿。


 その男子は、先程自分が子供にやったときと同じように、自分を投げ飛ばしたのだと、スローモーションな視界せかいの中で理解する。


 ──ああ。


 その男子は。

 目の前で、私を救ってくれた男子は、いつものような呆け顔ではなく、どこか寂しさを滲ませた、曖昧な表情をしていた。


 私はすぐに全てを理解した。

 離れてしまった手を必死に伸ばすけれど、それはもう届かなくて。

 泣きそうになる顔を、堪えることしか出来なくて。


 自分が大切にしたかった日常すきなひとが壊れる音を聞くことしか出来なくて。


 自分の目の前を、鉄の塊が通り過ぎるのを見ることしか出来なかった。





 最後に聞こえたのは、トラックのブレーキ音と、人の声。

 最後に見えたものは、君の引き攣った顔。

 最後に思ったことは──


 ──ああ、やっぱり。



 やっぱり、この人を好きになって良かった。





 事故から二週間後。

太陽が直上から街を照らす陽気な正午過ぎ。

街で一番大きな総合病院に、鈴鳴杏は制服姿で訪れた。

 本当は事故の次の日からだって、毎日お見舞いに行きたかったけれど、親族以外は面会謝絶だったので無理だった。


 ……五日前。

 彼が意識を取り戻したと聞いたときは涙で顔がぐちゃぐちゃになってしまったが、今日は面会謝絶が取り払われた最初のお見舞い。彼の顔を見ても泣かないようにと、杏は顔を引き締めて受付を済ませる。


 階段を上がり、三階の彼がいる病室の前まで行く。

 病室前の名札には『駿河陽人』以外の名前は無かった。


 スゥ──、と呼吸を整える。

 今度は後悔しないようにする為に。

 意を決して、ノックをしてからドアをスライドさせる。


 ベッドは窓際に設置されていて、彼はドアの音を聞いてこちらに振り向いた。


「おはよう、鈴鳴」


「……馬鹿」


 その声を聞いて、杏は心底から安心した。





「もう聞いた? あのトラックの運転手さん、心筋梗塞で運転中に亡くなってたんだって」


「聞いたよ。……全く、死人に轢かれるなんてツイてねえよな、ホントに」


 お土産のお菓子を食べながら、そんな他愛ない会話を続ける二人。……陽人は、土産として持ってきたものを見舞いに来た人が食べるのか、と思わないこともないが、突っ込むのはやめておくことにした。


「怪我の方はどうなの?平気?」


「腕と脚と肋骨が折れてたんだと。あとは打撲やらなんやら……。

 まあ、もうしばらく入院生活は続きそうだな」


「……私なんか庇うから、そんな目に遭うんだよ」


「お前が飛び出したりするから、こんな目に遭っちまったんだけどな」


 勿論、二人とも本気でそう思っているわけではない。

 これは本当に、不運と偶然が重なった加害者のいない事故だ。


 結局、あの事故での死者は運転手の一人だけ。残りの重軽傷者は十一人となった。

 陽人は重傷者の一人で、一番まともにトラックに轢かれたと言えるのも陽人だけ。


「ほんと、よく生きてたね。そんなに生に執着してたの?」


 冗談混じりに聞く杏に、呆れながら応える陽人。

 一年の頃によくやっていたやり取りだ。


「どうも、走行中の振動とか衝撃で、運転手の体勢が変わってブレーキペダルに置いていた足に体重がかかったんだと。それで、俺にぶつかる直前ブレーキが間に合ったんだ」


「へー。偶然って続くものね」


 馬鹿みたいな出来事だが、現実は小説より奇なりとも言う。馬鹿ではあるが、ありえない話ではないのかもしれない。


「そういえば、結局俺は文化祭には参加出来なかったな」


 ふと、そんな事を言う陽人。

 あの日の帰り道、杏には文化祭のことを話している陽人は乗り気には見えなかったが、案外楽しみだったりしたのだろうか。


「……そうだね。あーあ、もったいない。文化祭ちょー楽しかったのに」


「だろうな。……いや、文化祭のことは正直仕方がないって諦めてるから、もう割り切れてるんだけどな。一つ心残りがあるんだよ」


「心残り?」


「鈴鳴んとこの喫茶店、見に行けなかったなー、と」


「……そんな事が心残りなの?」


「いや実際のところ、同級生の給仕服って中々見れないだろ。その姿を納めて後々脅す材料にしたかったんだよ。クソー」


「…………」


 一体何がしたいのやら……、と半ば呆れつつ、杏は一拍おいてから、陽人に聞く。


「話は変わるんだけど、陽人って今好きな人とかいる?」


「これはまた随分な急カーブで話が変わったな……。突然なんだよ」


「いいから、いるかいないかハッキリして」


「……いないけど」


 流石に好きな人が目の前にいる状況で、いるとは言えない陽人だった。

 杏はそっか、と頷いてから一度深呼吸をしたかと思うと、真っ直ぐ陽人の目を見つめてこう言うのだった。


「駿河」


「な、んだよ」


「好きです。私と付き合ってください」


「………………は?」


 一瞬、何かの聞き間違いかと思った。

 しかし、杏は再び、


「だから、鈴鳴杏は、駿河陽人の事を男性として好きって、言ったのよ」


 丁寧に、誤解の余地を与えずに告げる。

 その顔は赤く染まっている。耳まで真っ赤で、本人も相当勇気を振り絞っているのが誰にでもわかった。


「…………」


 陽人の頭の中はパニック状態だ。

 それもそうだろう。突然、自分の好きな人が自分に告白してきたのだ。仰天して骨折の亀裂が増えそうなほどの衝撃が頭を駆け巡る。


「……いたずら、とかじゃないんだな?」


「そんなわけないでしょ」


 本人は真剣だ。

 陽人の顔まで火照ってしまう。

 嬉しいけれど、突然のことすぎて理解の範疇を超えている。

 それでも、一つずつ湧いた疑問を杏に投げていく。


「……なんで、俺がす、好きなんだよ」


「なんでって……好きになっちゃったんだからしょうがないじゃん」


 理由になっていないが、恋は理由ありきでもないか、と納得する陽人。


「……なんで、今このタイミングでそんな事を言ったんだ?」


 一番気になっている点を聞いてみる。


「──交通事故のとき、後悔したの」


 ぽつぽつと呟き始める杏。

 視線は陽人の目から少し下──陽人のボロボロの身体を見ている。


「自分が轢かれそうになったときも、駿河が轢かれたときも。

 告白、しておけば良かったって。何度も思った。轢かれそうになるあの一瞬で、本当に何度も、後悔した」


 杏は一拍おいてから、再び話し始める。その間、陽人はただ黙って、杏の告白を真剣に聞いている。


「本当はね、文化祭のときに、ダンスのお誘いをしたかったのだけれど……。事故に遭って気付いたの。

 好きな人には、生きているときにしか告白できないんだって。当たり前の事だけど、私はその事をすっかり忘れていた。

 いつもと変わらない毎日が、日常が、明日も普通にやってくるって疑うことすらしなかった」


「…………」


「明日ダンスに誘おうとか、文化祭で告白しようとか、そんな来るかもわからない未来の話を考えて、告白が恥ずかしくて逃げただけなのにもっともらしい理由をつけて後回しにしてさ。失敗したな、って思ったの」


「……だから、今告白したってことか」


「うん。急がば回れって言うけどさ、無駄な回り道をするのは意味ないと思って。だから、回り道せずに最短距離で、今日は最初から告白するつもりで来たの」


「──そうか」


 そこで一旦会話は途切れる。

 短い沈黙が、延々と続くような気がして両者ともにまた照れたりしている。

 ふぅ、と息を吐いて、陽人も覚悟決めて杏の顔を見やる。

 その顔を見て、杏も緊張する。



 鼓動が早鐘を打つ。心臓の音が大きすぎて、彼以外の音が耳に全く残らない。

 頬も耳も火で炙られているんじゃないかってくらいに熱い。

 喉もあっという間に渇いて、唾を飲み込む。


「返事を、聞いてもいい……?」


 くらくらするような緊張感に包まれながら、彼の返答を待つ。

 陽人もまた、耳まで赤く染めながら彼なりの返事をする。


「──俺、さっき嘘ついた」


「え?」


「好きな人いないって言ったけど、実はいるんだ」


「……」


「本当は俺から告白しようと思ってたんだけどな。先越されたな」


「……?」


「つまりだな……俺も鈴鳴の事が前から好きだったんだよ」


「────」


 泣かないと、決めたはずの涙がこぼれる。

 みっともなく声まで震えてしまう。


「本当に……?」


「ああ。だから告白の返事をするなら──」


 胸の奥から湧き上がる感情と涙が視界を歪ませる。口は震えた声を押し殺すので精一杯。手で抑えようとしても、手までが震えてしまっているようだ。

 けれど、それは決して寒さのせいではなく。

 むしろ、今まで感じたことのない、暖かなものからやってくる震えだった。


「──俺で良ければ、是非、あなたと付き合いたいです」


 ボロボロの身体と包帯を巻いた頭を下げてお願いをする陽人。


 涙はぼろぼろと流れてしまって、せっかくってときなのに顔はぐずぐずだ。

 それでも。



「──はい。嬉しいですっ」



 それでも、精一杯の笑顔で、力強く返事をしたのだった。





 日常は変わり続ける。

 当たり前だけど、忘れがちな常識だ。


 私たちの日常も、やっぱり大きく変わっていった。


 『友人』との日常から『恋人』との日常へ。


 『友人との日常』はその殻を壊して、中からは『新しい日常』が生まれてくる。


 同じ日々はやってこない。

 変わり続ける日常に疲れるときもあるけれど、まあ。


 この人と一緒なら、大丈夫な気がしてくる。


「思い立ったが吉日とも言うし。うん!」


 そんな感じで。

 今日も二人で新しい日常に踏み出していく──

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日常が壊れる日 夕暮 社 @Yashiro_0907

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