ノア 海の世界の箱庭で

夏樹智也

海の世界の箱庭で


500年前.....いやその数字は正確ではないかもしれない

とりあえず昔と言っておこう。

昔、それも大昔だ。尤も母なる地球からすればちっぽけな期間かもしれないが

人間からすればそれは大昔だ。

地球は大津波によって大地の全てが

海に沈んでしまった。

それを俺らは大海嘯だいかいしょうと呼んでいる。

勿論金持ちどもはノアの方舟と称して脱出しようと試みたさ

しかし大雨と雷とと大津波で脱出出来るような状態ではなかったらしい

で今俺たちは500年前の海中コロニーを修理しながら生き残っている

それがこの街アークシティ。

何せこの街はノアの方舟の残骸らしい

俺は掠れた船名を見た 『CCC-005 Izumo』と書かれている

昔存在した国連軍という軍隊の指揮下にあったということだけは分かっている。

と俺は継ぎ接ぎされている塗装を見た

U.N.S.F.と大きな字で書かれかつての大陸が描かれたマーク

そして下にも

United Na s Sp o Fo ce と継ぎ接ぎだらけで読めない

俺はこう見えてもジャーナリスト、いや作家だが

文字はだいたい読めるがかすれていると読めない。

俺はヒビの入ったoとcの間にできた傷に金属の板を貼り付ける

「おい、ジャック終わったぞ」と俺は無線する

《分かったジョニー6番ゲートに連絡船が来ているそこから入ってくれ》

とジャックからの声でデヴィルフィッシュと呼ばれるサブマリナーを掴み

街の上層の方へ向かう

かつての宇宙船は全て潜水艦に改造され、街同士の連絡船などに利用されている。

この船はCAS-056 ピークォド、昔宇宙巡洋艦として設計されていたらしいが

今では継ぎはぎだらけの潜水艦だ。

その船の横から俺は街の中に入る

「ふぅ.....」と俺はため息をつく

すぐ近くの更衣室で俺はマリンスーツを脱ぎ作業服に着替え

アークシティの中は階層式の街となっており中には住宅や農場や学校などが完備されている

内部は最上層にある人工太陽によって照らされており

酸素などもきちんと補給されているため、

500年前地上で送っていた生活とほぼ同じ生活を送れるらしい。

俺はとりあえず六番ゲートへ行く

「アークシティへようこそ」と無機質な声でロボットが連絡船から降りてきた、人々を案内する。

俺はデヴィルフィッシュの整備のためにここに来た

昔、整備を怠ったがために遭難しかけた事がありそれ以来帰還後の整備を欠かさなくなった

結構整備も終えかけたところで横に停泊中のピークォドから、軍服を彷彿とさせるキャプテンコートを着た船長が降りてきた。

「やあジョニー!」と彼は手をあげた

「久しぶりだなエイハブ」そう彼はエイハブというこの広い海を旅する船を

操る船長だ。そして彼もこの街、アークシティの生まれだった。

「元気にしてたか?」とエイハブは訊いてくる

「ああそっちは?」

「あぁ....死にかけた」とエイハブは言う

「つくづく悪運の強い野郎だな!今度は何があったんだ」

と話している最中に整備も終わりエレベーターに載せ、格納庫へ収納した

「色々な後で話してやるよ とりあえず行政区画で手続きを踏んでこなければいけない」

とエイハブは艦長帽を深く被り六番ゲートを後にした。

「分かった手続きが終わったら俺の家に来てくれ 色々異国話を聞かせてくれよ」

「ああ!」とエイハブは言いエレベーターで行政区画へ向かった

俺も別のエレベーターから第27階層の自宅へと帰った

「ただいま」と俺は玄関に入る

「お帰り」と俺の妻のメアリーがエプロンを着て掃除をしていた

「今日は後でエイハブが来る色々異国話を聞かせてもらおう」と俺は言う

それから少し経ってからインターホンが鳴りエイハブが来た

「おおメアリー、息災であったか」とエイハブは酒を持って来た

「生きてる 」とメアリーはジョッキを三つテーブルの上に並べた。


「じゃあいつものように話すが結構今回も大冒険だった」


「これはアークシティからセントラルシティまでの航海の途中だった。」

それは思わせぶりな話し方から始まった。






数ヵ月前 旧太平洋海域


「艦長あと2日でミッドウェーシティです」と俺は地図に目を通す

尤もここはたまにしか光が照らさない海の中だ

「魚をたまに食べたくなる」と俺は窓に映る海の世界を見ていた

水の中は俺ら人間の世界ではない

この魚達が暮らす蒼い世界のはずだ。

「エイハブ艦長、補給艦あやなみより入電」

「読め」と俺は椅子に座る

「アヤナミ ヨリ ピークォド ホキュウノジュンビハアル ホキュウノ ゼヒヲトウ」

「とのことです」

「補給してもらおうランデブーポイントへ舵を切れ」と指示する

「面舵一杯!」

と言う声と共に船は傾く

微小な光が艦橋に差し込む。

「人生に一回だけでも水の上に出てみたいですね」と艦橋のクルー、イシュメールが言う

「ろくなところじゃないさ」と俺は言う

「行ったことあるんですか?」

「ああ 水は大荒れ雨は降るわ雷は落ちるわで地獄絵図だった」

「そうなのか?」

「お前だけ行ってみるか? ピークォドはあれに耐えれないだろうな」と俺は言う

「そりゃあ艦齢530歳の長寿艦だ」

〈ランデブーポイントへ到着補給を開始します〉

すると繋がった補給ベイからあやなみの艦長が来たと言う報告を受けた

俺は挨拶をするために艦橋を後にした

少し歩くと昇降ベイについた

「やあエイハブ」とキャプテンコートを羽織る男は低い声で言う

「ワスプ、久しぶりだな」とグータッチをする

「これからどこへ行くんだ?」とワスプは訊いてくる

「セントラルシティまで荷物を運んでいる途中だ」

「気を付けてくれよ最近妙な噂が船乗りの間で流れている」とワスプは写真を見せてくる

写真には巨大な白い鯨が写されている。

とても不吉な予感がした。

「何だこの鯨は」と素直な疑問をぶつける

「船乗りの間じゃあ白鯨と呼ばれているモーヴィ・ディックだ」

「モーヴィ・ディック.......まさか」

この船の名前の由来にもなっている小説、尤ももう900年も前の物だが

ハーマン・メルヴィルが書いた白鯨という小説に出てくる鯨、それがモーヴィ・ディック。

「ああそうだ 伝説上の生き物のはずだ だが本当にいたらしい」と半信半疑にワスプは言う

「どうせ酒の席のジョークじゃないのか?」と俺はズバッと言う

「それが本当にいたんだ 俺も見た」とワスプは目を見開く

「はぁ?寝言は寝てから言えよ」と俺は言うきっと冗談に違いない。

「まあ気を付けてくれ神隠しにあって行方不明になった船もあると言う噂だ」

「あんたもなワスプ」その声を聞くとワスプはあやなみへと戻っていった。

俺も艦橋へ戻った

「艦長、補給終了 ベイを閉鎖します」とオペレーターのフラスクは報告する

「うむ」

「あやなみより発光信号、貴艦の航海の安全を心から祈る とのことです」

「貴艦の協力を感謝する。ご安航を祈る。と打ってくれ」と俺は指示し艦長帽を深く被る

「ミッドウェーへ舵を切れ」と俺は呟く

「取り舵一杯!微調整0.5」

「原速前進!」

「原速!ヨーソロー!」


そこから数十分ずっと青い海をピークォドは進み続けた。


一息付こうと珈琲を淹れていると

いきなり艦橋が真っ暗になった

まるで影のような....

《艦長!電探に巨大な機影........直上です......》

「何?!」と俺は流石に取り乱す 事実珈琲を少し溢してしまった

「ありゃあ......なんだ.....」とイシュメールは呟いた

「鯨か?」と今まで口を開かなかった艦橋のクルー、クィークェグが口を開いた

「いや.......鯨にしてはでけえぞ....」とスターバック

「そして白い.....まさかあれは.....」

「ああ間違いないモーヴィ・ディックだ」と俺は言う

モーヴィ・ディックはピークォドの横に付いた

「おおっ怖ええ」とイシュメールは呟く

「1枚写真を撮っておこう」と俺はカメラで白鯨の顔を記録した

これは土産話にできると思っていた矢先に危機が舞い降りる

「どういうことだっ!舵が効かない!」とイシュメールは報告する

舵が一切回らないのである

「どうした!」俺でも流石に焦ったぜ

「とうとうイカれちまったか?ピークォド!」

「白鯨によって......牽引されていきます.....」とクィークェグは呟く

「一体.....どういうことだ.....」俺は呟く

〈君達には見せてあげるよ〉と声......いや直接語りかけてくる

「何をだ!白鯨!」と俺は声を上げる

〈助けて。僕の仲間を〉白鯨は目を閉じ、その直後白鯨は吠えた、耳を塞ぐ前に



俺らの意識は飛んだ。



話が一旦途切れエイハブは酒を一杯呑んだ

「白鯨なんていたのか」と俺、ジョニーは呟く

「知ってんの?」とメアリーはもう酒が入っている

「昔モスクレートシティとバンケイトを結ぶ定期便の船長が言っていたんだ」

「冗談だと思っていたが.........」

「とにかく続きを聞かせてよ」とメアリーは空になったジョッキを机においた






「艦長!艦長!」と女性機関長、スタッブに起こされて俺は目覚める

「スタッブ.......はっ!」思い出したピークォドは白鯨に.....

ふと窓を見ると当たり前の風景のはずだった水が一切ない

「一度潜水服を来て上に出てくる」と俺はいい

船の外へ出た

目の前には謎の空間が広がっていた

日光が強く差し込む、こんなに日光に当たったのは初めてだ。

円柱状に空気の穴が出来ている

そしてこの空間の中心には屋敷があった

屋敷なんて写真でしか見たことない俺からすればこれだけで物珍しかった。

「皆一回外に出てきてくれ」と俺は外へ誘う

皆が外へ出た瞬間、全員揃って息を呑む。

それもそのはず、こんな空間なんて知るわけもないのだ。

いつの間にか謎の服装に身を包んだ人間が立っていた

男にも女にも子供にも老人にも聖人にも囚人にも見えるその容姿はある意味不気味だった。

「あらお客さんかしら フィヨルギュンお客様を屋敷へお通しして」

と人間が謎の動物を呼んだ、角が長い馬のような動物だった

俺らはこの動物に乗せられ屋敷へと連れてかれた。


「エイル、あの人たちの船を直すために工廠に運んでおいてくれる?」と人間は呟き

人間も屋敷に入っていった。


俺らは応接間へと通され可愛らしい女性に不思議なお茶を貰い

ここの屋敷の主であるというイズンを待っていた

不思議な屋敷だ。見たことの無いものやすでに滅んだとされる動植物が未だに残っている。

すると応接間にさっき出迎えてくれた人間が綺麗な衣装に身を包みやって来た

「白鯨に呼ばれてやってきたのですね、彼らは私が一番好きな生物なんです」

「こんにちは、イズンと言います 貴方達は何処からいらしたのですか?」

この人がイズンか

「我々はアークシティからセントラルシティまでの航海の途中でした」と話してもイズンは全くわからないらしい

すると老人が地図を持ってきた、500年前の世界地図だ

「ありがとうクヴァシル」とイズンが一礼するとクヴァシルは部屋から出ていった

「何処か指してもらえます?」

と言われ俺はアークシティがある場所を指差しそのあとセントラルシティを指差した

「日本からアメリカですか中々な旅路ですね」

日本......アメリカ.......?初めて聞く地名だ.....

「私達であの船は修理しますしばらく休んでいってください」

「この屋敷は自由に見て回っていいですよ。気になる本があったら手にとって読んでみてもいいですよ」とイズンは言い

「この屋敷の地図です、あと中庭には絶対に入らないでください」とイズンは地図を俺に渡してきた。

俺らはこの屋敷でしばらく休むことになった。

「少し見て回らないか?」と俺は皆を誘う

「賛成」とイシュメールはいう

「全員でいこう」


外から見ればかなり小さな屋敷に見えたが中はそれ以上に広かった。

「こっち!」「ここに貼って!」と言う声が一回り大きい倉庫のような建物から

工事の音と共に聞こえた

扉の上には『arsenaali』と書かれた看板があると思った瞬間

看板の文字が『工廠』に変わった まるで同時翻訳のような

工廠にはいるとそこにはあり得ない光景が広がっていた

小人のようなものがピークォドの修理をしていたのだ

そしてピークォドは500年前の新品同様に生まれ変わりつつある

そしてこの部屋の奥にもうひとつ船があるのに気がついた

「こりゃあなんだ.....」

『Skíðblaðnir』と書かれた船が安置されていた

「これはこれはお客様、ピークォドの修理は我々が行いますので皆様はお休みください」

とヴィトと名乗る小人がそう告げた

「貴方達は?」とイシュメールは訊く

「ドヴェルグでございます、はい」

「ドヴェルグ?」とスタッブは訊く

「ユミル様にお仕えしている小人たちでございます」

「船の修理は我々が行います 貴殿方は屋敷を見て回ってください」

とヴィトはまるで見られるのが嫌だというような目線で俺を見た

「ではお言葉に甘えて私達は屋敷の方に戻ります」と俺は言い皆でもう少し別の場所を見て回ることにした

風が心地良い、建物につけられた風車もよく回っている

大海嘯前は世界中にこのような風景が広がっていたのだろうか。

安らかな気持ち、こんな気持ち初めてだ

面白い建物にたどり着いた

看板には『lentokonesuoja』と書かれている目を離すと表記が『格納庫』に変わっていた

その門を開くと、中には翼を折り畳んだ飛行機が置かれていた

「乗ってみますか?」とウルと名乗る女性は飛行帽を被り飛行機に燃料を詰め込んでいた

「いいんですか?」と俺は訊く、俺は子供の頃、空という物に憧れたものだ。

「皆さんも乗りますか?」とウルが訊くと皆は揃って頷いた

「いいですねイズン?」とウルが向いた方向にはイズンが腕を組んでいた

「私も久しぶりに飛びたいな 少し待っていてもらえる?」

とイズンは格納庫から屋敷へ歩いていく

「この機体はね零式武装航空機ゼロ式ガンシップと呼ばれる機体でね、500年前の機体なんだよ」

「一機として同じものは存在しないんだろ?」とエイルと名乗る飛行帽を被る綺麗な女性は

武装航空機に飛び乗った

「お待たせ致しました、久しぶりに飛んでみましょう」とイズンは飛行服に着替えている

俺らも武装航空機に乗った。不思議な座り心地だ、綿でもないかといって木でもない。

「フギン飛行隊!飛ぶぞ!」とウルは声をあげる

その声と共にいつの間にか待機していたドヴェルグがハンドルを回すと格納庫が変形し出した。

一階建てのはずの格納庫が武装航空機の真下にあったカタパルトが浮き上がり壁が変形してできた滑走路に接続された

「飛べ、ゼロ」とウルは呟き、武装航空機は大空を舞った。

俺らがいた穴がいかに小さかったか、そして俺たちの暮らす海がどんだけ蒼かったが分かった。

「天使とダンスだ!ヒャッホーイ!」とイズンは声をあげる

本当に一面真っ青だ、海しかない。

そして黒い雲を突き抜けダークブルーに染まった空へ武装航空機は羽ばたいた

「雲の上ってこうなってたのか....」と俺は呟く海の上でも驚きなのに雲の上も見てしまった。

俺はカメラで写真を一枚撮る。

「飛ぶわよ!重力を味方につけてね!」イズンのキャラクターが空を飛ぶと180度真逆で面白い。

「昔は沢山の飛行機が大空を駆けてたのよ」

「そろそろ遊覧飛行は終わりよ、ブルーノアに戻りましょうか」とウルは言い

約一時間の遊覧飛行は終わりを告げた。

空を飛ぶなんてもう一生いや何回転生しても無理だろう。

「ありがとうございましたウルさん」と俺は言う

「こちらこそ久しぶりに楽しかったわ」

零式武装航空機は綺麗にカタパルトに降り、ドヴェルグが給油ホースを刺した

「私達は屋敷に戻るので貴殿方はまだ屋敷を見て回っていていいですよ、鐘が鳴ったら夕食です本館に来てくださいね」とイズンは言い屋敷へ戻っていった

俺らもそれに続き外へ出ると気になるところに石碑のような物があるのに気がついた

「こりゃあなんだ」と俺は石碑に触れる

一瞬目の前が真っ白になったと思えばいきなり変な空間に飛ばされた

「これは......一体..........」目の前にはおかしな機械に入れられ苦しめられる、

白鯨の姿があった。

俺らはエレベーターに乗りその階層の下に降りた

そこはとても広い空間が広がっていて、その空間の中では

宇宙戦艦のようなものが建造されていた。

「これが美しい屋敷が裏で抱える闇か」とイシュメールは呟く

凄まじい轟音と共に頭の上を宇宙戦艦が横切った。

「とりあえず白鯨を救おう、」と俺は言いエレベーターに乗り上の階層へ行った

これは白鯨からエネルギーを取っているのか.....

「大丈夫だ俺が助けてやる」と俺は機械を弄ろうとするが俺が知らない技術で戸惑っていると、

後ろから銃を突きつけられた

「知ってしまったのですね、エイハブさん」イズンの声だ

「お前がやったのかイズン」と俺は訊く

「いえ、私は絶対にやらない、こんな惨いこと、」と声が震えている銃も震えているのを感じる

「じゃあ誰がやったんだ」

「ユミル.......アークリウス.......」と声が震えて、もう銃を落としている

「慣れない銃を握るもんじゃない」とイシュメールは銃を拾い、分解した。

「悔しくないのか?あんた言っていたよな一番好きな生物だって」

「やっとユミルをぶちのめす機会が来たね」といつの間にか来ていたウルが言った

「だけど.....だけど.......」とイズンは言葉を呑んだ。


「行き場のない私達の命を救ってくれたのは彼なの。」とイズンは言い切った

「恩義には背けないと?」とスタッブは告げた

「ええ、だけどこれだけは許せない、白鯨をこうも傷つけるなんて」

「じゃあ俺らでユミルと戦おう、」とクイークェグは言う

「無理よ、ノルズリが私たちのそばにいる限り」とイズンは告げる

「こいつのことか?」とスターバックは仮面が割れ、ナイフが折れた女性が無惨に投げ捨てられた。

「もう逆戻りは出来ないわね......」とエイルと名乗る女性が呟く

「ユミルを犯罪者として海洋保安官及び港湾労働者に通報した」とスタッブは言う

「まずい......ユミルが来る......」とイズンはなにかを感じたようで皆で屋敷へ戻った

外はもう夜だった。

「ノルズリとの連絡が途絶えたと思ったが面白い人たちが来ているようだな」

と言う声が聞こえた方を向く、そこには中性的な人間が拳銃をこちらに向けて立っていた

「スズリ、バックアップを頼むぞ」と彼は呟くとこの世界ではあり得ない速度で迫ってきて

俺らの爪先の前に当たらないように撃った

「今だやれ!」と俺は叫ぶと石碑が置かれた地面が割れ、下から傷だらけの白鯨が現れ

力を振り絞り大声で、


鳴いた。


すると俺らのいる円柱の結界を割り、白鯨の群れが突っ込んできた

「何をした!」ユミルは動転している スズリと呼ばれた仮面を被った女性は

昔ながらの刀を抜いた。

ふと耳の辺りを見ると耳が尖っていてフィクションに出てくるエルフ耳だと言うことに気がついた。

ユミルは気がついていないが後ろにウルが乗った武装航空機が降りてきた

「痛いの一発ぶちかますよ!」とウルは言うと武装航空機の先端の主砲が火を噴き、

ゼロ距離でユミルに直撃した

普通の人間なら死ぬはずだがユミルは直撃を防ぎきった

「ユミル!」とスズリは駆け寄った ユミルとスズリの関係はただの主従関係ではないようだ。

「大丈夫だ」とユミルは立ち上がった

「茜、無理はするな」とユミルは言ったがついスズリを茜と呼んでいる。

スズリは偽名なのか?

「こっちだスズリ野郎!」とスタッブはいつの間にか持っていた剣を振るった

「もう任務は失敗に終わった、ノルズリを回収してくれ」とユミルは言った

「俺が時間を稼ぐ。スズリ、ノルズリを拾ってきてくれ」とユミルが言うとスズリは頷き、

ウサギのように跳躍した。

すると白鯨が破った結界からピークォドと似た船が5隻突入してきた

そこから降りてきた人々は揃って銃を持っている。

「海洋保安官です大人しく武器を下ろしなさい」と保安官は言う

「武器を下ろせと言われて下ろすと思うか?」

「スズリ、ノルズリは回収できたな」と首筋に手を当てて言う

「よし.....アウストリ!上がってこい!」

「イエッサー!」と言う声と共に潜水艦に似ているが決定的に違う船が地面から浮上してきた。

「次元潜航艦か!」と保安官は声をあげる

「スズリちゃんご苦労ご苦労」とアウストリは言いノルズリを受け取り

艦内に運び込んだ

「んじゃあまた会おうか」とユミルも次元潜航艦乗り込み

次元潜航艦は地面に消えていった。


ただ俺は呆然と眺めてるしか出来なかったさ。







「中々面白いネタだな」と俺、ジョニーは何枚にも重なったメモ帳を机に置く

「次元潜航艦と言うと宇宙版潜水艦?」とメアリーは訊く

「そうだな」とエイハブは写真を見せてくる

これは空から見たこの海の写真だった。

「凄い蒼いな......」

「こいつコピーしていいか?」と俺は訊く

「いいぞ、こいつもコピーだしな」とエイハブは言いジョッキのビールをらっぱ飲みする

「んまああそのあとは色々あったが最終的にはセントラルシティへ行けた」

「ユミルはどうなったの?」とメアリーは訊く、俺も気になっていたところだ

「どーこ行ったのかね、地中に潜ったから見失った」とエイハブはもう一枚写真を出してくる

潜航中の次元潜航艦らしい

潜水艦と似ていると言うのが率直な感想だった。

「こいつがユミルかどうも憎めない顔だな......」とメアリーは呟く

「ところであんたはアークシティにいつまでいるんだ?」と俺はカレンダーを見て言う

「2週間だ」

「そうか 俺はこいつを纏めてくる、一応ジャーナリストなんでね」と俺は束になったメモ用紙を持って自室に入った。


こいつはまだこの世界は謎だらけだという事を裏付けた話だったさ。





Fin
















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