第10話


さて、ダンジョンへ行くか!


 次の日俺は、ギルドでクエストを受注しとある洞窟前――ダンジョンに来ていた。



――東、俺はお前にダンジョンに行くなっていったよな・・・よな・・・(エコー)


だ、だって今日土曜だし・・・うるせぇ俺は金がねぇんだよ!(おこ)


まぁ春樹との約束に遅れたり忘れたりしていたのはその日の夜とかからダンジョンに潜ってたからだし、今回は低級のアンデッドモンスターがいるダンジョン【死霊の住まう洞窟】へ骨拾いに向かうだけだから別に良しだ。


ここはもうダンジョンコアを破壊されてボスモンスターも討伐された後で神秘を溜め込む事もない。


だがそれでも元ダンジョンの影響なのか低級のモンスターや素材程度ならまだ湧いたり生えたりする所謂初心者用ダンジョンだ。


神様の結界や管理人も付いてないからお金もかからないし、町中にあるようなものでもないからダンジョンクリア後もダンジョンとして機能してる。


俺でも問題なく攻略可能だ、幸い屍人や怨霊木もいない低級のヒトダマや動物やモンスターの骨に憑く骨憑き。


時には何処からか持ってきたのかそれとも生前の姿が実体化したのか骸骨などが彷徨ってるだけだ、アイテムで対処できる。


まぁそれも倒せば一部の骨だけ残して消えたりするからやっぱりどっかから流れて来てダンジョンの残骸の神秘に当てられたのだろう。


・・・時折全部が残っている事もあるがそういうのは手ごわかったり闇をかんじたりする。


因みにアンデット系ダンジョンが嫌われる理由の一つでもある。


後偶に呪われたりだとか、気分が悪いとか生者に乗り移ろうとしてきたりする。


・・・が、俺にはそんなことはない。


――何故ならもう俺には超弩級の悪神の呪いがあるからだ。


弾く、というか飲み込まれて消える、という表現が正しいのか。


前にこのダンジョンで俺にとり憑こうとした悪霊がいた事があるんだがその瞬間、悪神の恩寵カルス・ニヒツが発動してまるでそのチカラを全て吸い取られるかの様に存在ごと消え失せた。


体中に走った黒い線が呪いを発動したという事実を何よりも物語っていたから、この呪いの数少ない利点であると思っている。


・・・まぁ、支援系の魔術や魔法とか、それらも効かなかったんだけどね。


どうやら俺に干渉するものは全部NGらしいと呪いの範囲について調べたのはこの時の出来事からだ。


いつもいつも思うがこの呪いは本当に良く分からない。


そんな訳で俺にとっては今回のダンジョンアタックはただの素材採り。


基本的に物理攻撃は無理だが呪い関係なら俺は無敵()と言っても良い。


・・・魔法攻撃も呪いがどうにかしてくれるのなら俺ももうちょっと冒険者になれるのだろうが、全然反応なし、生憎未だに冒険者未満の探索者シーカーだ。


だって全然冒険出来てないもの。


今回受けたクエストだって【魔術触媒が欲しい】死霊の魔石×5骨憑きの骨×2

で、討伐クエストじゃない。


このクエストだって、身入りがいいって訳じゃない、大抵ギルドの倉庫とかで余ってたら欲しいっていうぐらいのクエストであって、こういう所謂取引クエストって呼ばれる部類を受けて、わざわざその素材の為だけに行く奴は少ない。


本当の初心者ぐらいしか行かないもんだ。


だが俺はレベル1、少しでもクエストでこういう依頼を見つけたら予約してクエストをキープしておいて、予約期間が過ぎない内にクエストをこなさなきゃならない。


・・・ギルドのクエストは実に様々な所から依頼がくる。


そのギルドにしかないクエストもあるし、個人から、ギルドそのものから企業、果ては国や神までも。


神秘が溢れた今、ただの人では外の未踏破地域を歩むには実力が足りない。


そこで冒険者にクエストを出し、解決を図る。


何でも屋のようなもんだ、冒険者は。


勿論もう既にある程度の資源や治安なんかは安定してるし、神々が地上に顕現してからは、結界が貼られてるから、神秘の恐怖に晒される心配も無くなった。


国も随分と昔と比べて国土や名前が変わったらしいがそれでも今は大きな戦争は起きちゃいないし、この平和な世界が続けばいいなとはTVを見てて良く思う。


インターネットや人類の情報網は昔の悲惨な出来事を残していたから。


・・・そんな悲しみを生んだ神秘だが、それだけではなく、様々なものを人類に齎した。


文明レベルの発達がまず一つ、それまでの科学に加えて新たな法則にエネルギー。


数多の未知はブレイクスルーを引き起こし世界は神秘という新たな資源を求め争った。


・・・需要が無いはずがない。


幾ら資源がこの時代になって人類が確保できるようになったとしても、神々が守ってくれるようになっても。いや、だからこそ。


――神秘を扱う、神秘を帯びた道具、生き物、土地。


欲しがらないわけがない。


現に冒険者は多くのクエストを目にするし、大手のギルドはスポンサーも付いている。


冒険者本人でさえ、欲しがるんだから。


今回の目的であるクエストの素材の他にも、この洞窟には色々な錬金術の触媒になるものもある。


依頼主は魔術触媒とか書いてたから、何かの儀式か使い捨ての魔術にするかどっちかだろうが、他にも様々な用途がある。


今回は俺のアイテムの素材集めに来たっていう意味合いもある。


俺自身に力がないからこういうアイテム作成はダンジョンアタックには欠かせない。


【装備(アイテム)】


暗視が出来る様になるさゴーグル(弱)


ポーション代わりの錠剤

・ピントシード(集中力アップ小)

・ヒットシード(筋力強化小)

・カンシード(防御強化小)

・ヒールシード(体力回復)

・マジックシード(精神力回復)


HPポーション 聖水 閃光符 火炎の魔石 水柱の魔石 魔物避けのお香 ロープ 辿りの粉 煙玉 信号弾 落とし穴キッド 緊急帰還用魔術符(偶に呪いで消える)


錬金術以外の生産系の派生のジョブは得てはいないから神様の祝福であるスキルは持ってこそいないがこういった神秘の加工物を作る技術で俺の冒険は保っていると言っていい。


わざわざ回復手段を錠剤にしているのは、ポーションで良いなら俺ももちたかったが何故だか飲んだ後、体に入っていき何処かへ抜けていく様な感覚がしたし、効果が余りでなかったからだ。


だが傷へぶっかけると、効果は現われたのでお守り代わりに一本は持ち歩いてる。


なので、自分で調合して錠剤にして飲んでいるが、劣化といえばいいのか?


比べた事はないから分からんが店売りの奴より劣っているといえばそうだが、俺の場合は傷が治っていくと共に効果が発動していく感じなので、持続して続くのが、錠剤タイプとしての利点だろうか。



「――ッ!」


悪神の恩寵カルス・ニヒツ】——。



自分の中で発動の感覚がし振り向きモンスターへと対峙しようと身体を動かす。


するとそこにはカタ、と音をたてながら、地面へと転がった兎の頭蓋ごとサラサラと消えていく骨憑きの姿が目に入った。



「ああぁ・・・勿体ない・・・けど、素材は素材だからな、脆くて砕けた他の素材を探しにいくかな・・・」



きっと体中脆くなって近くに呪いに巻き込まれずにある筈だと予測し行動する。


骨のモンスターの素材だし・・・。


あ、茂みの岩の影に左部分の腹部の骨発見、これでクエストは完了か。


後はこの洞窟にある灰怪草を手に入れて、それからあとは・・・・・・・・・


そんな風に、【シーフ】【錬金術】のスキルと呪いの発動で時折現れるモンスターを察知し呪いを発動させつつ、出来ない敵は隠れつつ、俺は採取を続け、無事に今回のダンジョンアタック終え、クエスト達成する事が出来た。




――そして翌日、東は寝坊した。


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