第50話 コミュニケーションの取り方

メガフロート上で待機している軍用ホバークラフト。

それはオーストラリアの海洋TEAM、タスマニア・シーデビルスの所有艦。

だが、操舵室内には調査系TEAM、フィラデルフィア・フォトグラファーズの

メンバー4名のみ。

代表のポール・ハンターを除く他の3名はカメラを持ち、身構えていた。


元、無人島だったのだろうか? 

割と浅めの海底は何も無く、ただ砂地が広がっていた。

そんな場所にわざわざ建設されたビルのような、その階段。

レイザービルが片足から両足を乗せた時、グラッと全体が揺れ動いた。


「!?」


     ・じしん じゃない・

     ・すなに めりこんだ だけ・


建物のような階段が海底の砂地の上に置かれただけだったのを確認すると、秀太は

再び歩を進めた。

一歩一歩慎重に足を運んでいるのは、何らかのトラップを警戒しているからだったが、レイザービルの重さに耐えられず崩壊してしまう様子は感じられなかった。


「頼む・・・ 来てくれよ・・・」

軍用ホバークラフトの操舵室内で身構える、フィラデルフィア・フォトグラファーズ

の4名。 その目の前で・・・

海面の一部が突き上げられるように盛り上がった、と同時にそれは姿を現す。


「き、来たっ!!」

「チーフ、お願いします!!」


メガフロートが、まるで柔道場の畳に見える。

その上に立つ、真っ黒い鋭角な山を連想させるレイザービル。

周囲の状況を確認しているのか、尖った顔(?)をゆっくりと左右に振っている。

その度に、虚空を見つめる巨大な目がこちらを単眼視しているように見えた。


その異様な姿に呆然とする、4名。

「おっと、忘れるところだった!」

インタビュアー役のポール・ハンターは、用意した定型文をレーザー通信で送るべく

レイザービルにアクセスを試みたが・・・


しばらくして、別の形での返答があった。


      ・レーザー通信ではなく、違う形でなら話に応じる・ (英文)


レイザービルの無数に近い数のトゲの先端がLEDランプのように点灯、文字を形成する昔の街頭ニュース速報に似た表示方法だった。


「なんてこった・・・ こちらの手はお見通しか!!」

「サインボード、準備してください!!」


レイザービルは、彼らの状況お構いなしに次のメッセージを表示した。


      ・ここから急いで離脱しろ!・

      ・ミサイルの雨が降ってくる・ 


「ええ!?」  『上空に多数の飛翔物体!!』

『エンジン始動!! 急速離脱する!!』


軍用ホバークラフトのエンジン音と共に、スカート部分がブワッと膨れ上がった。

急ぎ、メガフロートから離脱するホバークラフト。

何故か、その場を動こうとしないレイザービル。


メガフロートから離れていく彼らから見たレイザービルは、「まるでウニの化け物」

のように見えていた。

上空で、複数の甲高い爆音。  そして・・・

硬い路面にムチを思い切り引っ叩いたような大音響が重なった。


           大爆発。


レイザービルのおかげで、危うく難を逃れた軍用ホバークラフト。

放心状態のフィラデルフィア・フォトグラファーズの4名。

そこへ・・・


『ポール、御苦労だった。 4人とも会議室に集合してくれ。』


彼らの依頼主でもあるタスマニア・シーデビルス代表、ヒューバート・フック

船長からの艦内放送だった。





  

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