第49話 メガフロート

海面に突き出ているレイザービルの尖った頭部が、ある一定方向に向いた。


「ああ、やっぱり何かいるな。」


秀太から見える、何か場違いな感じのする畳のような物体。

その上にポツンと存在している、軍用ホバークラフト。

おそらくエンジンが始動していないせいか、いわゆるスカート部分はパンクして空気が抜け切ったタイヤを連想させる。


      ・やはり わな かもしれない・


「たぶんそうだと思うよ。 でもさ・・・  君がそう言ってくれると、余計に行き

たくなっちゃうんだ。 ホント・・・何なんだろうね、俺って。」


      ・どうか してる・


「そうだね。君の言う通り。でも・・・こういう場合は、敢えて向かって行った方がいい。 そんな気がする。」


     ・しかたない・ 

     ・さぐりを いれるだけにして・


「分かった。慎重に行くよ。」



ハッチを閉じていれば、うるさい風の音は入ってこない操舵室内。

島の姿が見えない、ただ目の前に広がっている大海原の光景。


「さて、とりあえず招待状は配信したけど・・・来ると思うかい?」

「そんな事、私に聞かれても困ります!」

「まだ、モニカは生で見たことないんだったっけ?レイザービルを。」

「ニュース映像だけです。できれば来てほしくないですね。」

「ええ!? 何でだよ!」

「下手すると、私たち全員殺されてしまうかもしれませんよ!?」

「だから、何でだよ!?」

「チーフのくだらない質問のせいで向こうの逆鱗に触れてしまったとしたら・・・ 私たちのチームはそこで終わってしまうと思います!!」

「なっ・・・!なんだとおっ!? 俺のインタビューがくだらんと言いたいのか!」

「今回の相手は、政治家や俳優とは訳が違うんですよ!?  今までの、本音を引き出すと称したギリ上目線のウケ狙いインタビューが通用すると思ってるんですか?」

「・・・そんな事、やってみなくちゃ分かんないじゃないか!」


艦内通信が二人の会話に割って入った。


「あー、痴話げんかはそれくらいにして、仕事に入ってくれ。お客さんだ。」



「ご丁寧に、こんなのまで作っていたのか。」

秀太の目の前に見える光景は、どう見ても・・・階段だった。

日差しの光線に照らされ、魚の群れが横切った後・・・

レイザービルは階段に足を踏み入れた。




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