第6話 夏の恋模様

 夏休みも間近になってくると、「あの子とデートで遊園地に行くぜ!」とか、「あの人に誘ってもらったの。お茶しに行くのよ」とか、そんなお話をチラホラ聞くようになってきます。


 そんな私はと言うと、今日も今日とて恋愛相談です。夏の日差しが痛いですね。


 今回の相談相手は、まだ付き合って間もない子です。隣のクラスの同級生で、あまり会話をした事は無いですね。


「で、どういう情報が欲しいの?」

 訪ねる私の言葉に、ちょっとイライラしたような返答が返ってきました。肩まである髪を少し摘まみ、クルクル巻いていじりながらです。

「今度デートする事になったんだけど、どこに行くとか何をするとか、何も言ってくれないのよね。優柔不断でまだるっこしくって。ああいう男子の気持ちは分からないし、アタシどうしたらいいのかしら?」

 彼がちゃんとリードしてくれない事に、ずいぶんとご立腹のようで。そこで私は聞いていた情報を渡す事に。


「あの手の男子って、奥手なのよ。自分から誘っても、どうしたらいいのか分からないの。お子様なのよ」

 私はちょっと呆れたような言い回しをしました。

「だから、近所のコーヒーチェーン店に一緒に行って、飲み物をシェアするだけでもいいのよ。お互いに別な飲み物を頼んで、「ちょっとソッチちょーだい」って言って、お互いの飲み物を味わって、「これ美味しいね」って会話するだけでも、いいと思うわ」


 もちろんこのお話にも裏は取れています。彼は「どういうデートにしよう」と悩んで友人に相談にのってもらっていたのは、私も知っていました。なので、まずは簡単な所から始めようと提案したのです。


「ホントにそんなのでいいの?」

 不信感をあらわにした口調で質問する彼女に、あくまで冷静に返答を返します。

「信じる信じないは自由よ。まずは『背伸びしない、身の丈にあったデート』をオススメするわ。後は、彼氏さんと相談してみて」





 という事で、前金の無糖ストレートの紅茶をもらって、この相談は終了です。


 後で聞いたお話ですと、ちょっと離れたコーヒーチェーン店でイチャイチャしている二人を見かけた人がいて、笑顔を綻ばせてすごく幸せそうだったと言っていました。そういうお話を聞くと、ちょっと羨ましいなんて思ってしまいますね。





 それで成功報酬を受け取りました。今回はコンビニの『冷やし中華』です。まああの程度の相談と情報ですから、妥当な所でしょう。タレが酢醤油な所が、私好みです。


 こうやってお昼ご飯をご馳走になって、それに使うお金を浮かせて、貯金に回してます。なかなか考えているでしょ?

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