第2話 ミモザに包まれて

「リサさん、今週もお疲れ様でした!

   いつもありがとうございます♪」





ふわふわパーマのロングヘアを

一つに束ねていて、

笑顔がかわいい店員さんは



こうして毎週私に

声をかけてくれる。








このお花屋さんに来るだけで



失敗したことも、

うまくいかなかったことも



リセットされる。








毎週行ってるのに、

そう言われると、恥ずかしくて、




「こちらこそ、いつもお声がけくださり

   ありがとうございます!」



としか言えないんだけどね。








いつかお花のことを

お話したいなぁ♡


色々教えてくれそう!




来週は、ちょっと話しかけてみようかな♪










今日は、黄色くて

見ているだけで春を感じるミモザを

お迎え♡





両手に抱えて、

お花を持っていると



すっと気持ちが落ち着くなぁ。










ミルクティーも今日も

おいしい♡





寄り道、最高だ!!







家に帰ったら、

晩ご飯のいい香りがしている。



母は、お嬢様育ちで

社会には出ずに、大学院を卒業後

父と結婚した。





お料理やお掃除は大好きで

お嬢様なのに、スイスイ、テキパキやっている。






お料理は特に好きで、

レストラン並みの準備をしてくれるから



毎日食べていても

びっくりする!






「リサ、今週はお仕事どうだったの?」




「ん?いつもと一緒だよ。なんで?」



「いや、今日はお花たくさん

   買ってきてたでしょ?

   

   リサは落ち込んでいる時、お花を

   いっぱい持って帰ってくるの。


   だから何かあったのかしら?と

   思ったのよ!」





そ、そ、そうなんだ!?


無意識だった!





そんなところまで見ていたなんて。

母は偉大だなぁ。





「なかなかうまくできないお仕事があってね。でも、働いていたら、何かしらはあるもんだから、大丈夫だよ。


心配してくれて、ありがとう!」





「やだー、リサ!そんなに頑張らなくてもいいのよ?

リサはお勉強もできるし、英語もフランス語も話せるし、何でもできるのに。


周りの方と合わないのかしらね?

お仕事したかったら続けたらいいけど

おうちにいてもいいんだからね!


ね?お父さん!」




「そうだよ、何かあったら

 すぐに言うんだよ。


職場を変えたかったら

 お父さん、知り合いの方に

いくらでも話しとくからな。」




「うん、ありがとう。

    おいしかった!ごちそうさま」






毎日こうして、


温かいおうちで、

おいしいご飯を食べられて


家族から大切にされて。









充分過ぎる状況なのに、


こうして、いつも買ってきたお花を


両手で抱えていると





ふと、このままでいいのかな

って思う。



 




贅沢な暮らしをして

何不自由ないように見えるけど






私の中は、からっぽだ。









それは、すっきりクリアな

青空のような

からっぽではなくって、







グレーで、どんよりして

何もない暗い部屋の中みたい。







本当は、私は何がしたいんだろう?








両手いっぱいに抱えた

ミモザの優しい香りに包まれていると

自分の心の声が聞こえてくるよう。










すると、中高時代から仲が良い

ともちゃんからLINEがきた。













つづく

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