夢を見ることすらできずに
眠れない夜。
眉間に皺を寄せ、必死に目を瞑る。
夢を見ることすらできずに、現実が脳を蝕んでいく。
身体の内側を虫が這うようなむず痒さを感じながら、すっかり乾き切った唇を舐める。
換気扇の回転音と、両耳を繋ぐ耳鳴り。
二つの音が重なり、不揃いな低音と先の尖った高音が奇妙なハーモニーを奏でる。
それがいつしか心地よい子守唄のように感じ始めていた。
自分以外に誰もいないはずの部屋。
妙に冷たい空気が気味悪く、僕は分厚い布団で全身を覆い隠す。
息苦しいくらいの蒸し暑さが安心感を与えてくれた。
そうやって、少しずつ、少しずつ。
意識に靄をかける作業を繰り返しながら、ゆっくりと眠りにつく。
今日も、夢を見ることすらできずに。
詩と小説のあいだ 紙野 七 @exoticpenguin
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