《名例律第一》『議条』『請条』『減条』

『議条』

凡六議者、犯死罪、皆条所坐及応議之状、先奏請議。議定奏裁。流罪以下、減一等。其犯八虐者、不用此律。


六議に該当する者が死罪相当の罪を犯した場合、先ず容疑と該当する律条を個別に列記し、上奏して議を申請せよ。結論が出たら奏裁を仰げ。流罪以下ならば、一等を減刑せよ。八虐を犯しているならば、この律条は用いない。


『請条』

凡応議者祖父母、父母、伯叔、姑、兄弟、姉妹、妻子、姪・孫、若五位及勲四等以上、犯死罪者上請。流罪以下、減一等。其犯八虐、殺人、監守内奸他妻妾、盗、略人、受財枉法者、不用此律。


議すべき人の祖父母、父母、叔父、姑、兄弟、姉妹、妻子、姪や孫、或いは五位以上及び勲四等以上の者が死罪相当の罪を犯した場合、上請じょうしょうせよ。流罪以下ならば、一等を減刑せよ。その者が八虐を犯し、人を殺し、地位を利用して他人の妻や妾を姦し、盗みを働き、人身売買を行い、収賄し且つ法を曲げたならば、この律条は用いない。


『減条』

凡七位勲六等以上、及官位、勲位得請者之祖父々母々、妻、子孫、犯流罪以下、各従減一等之例。


七位以上及び勲六等以上の人、及び官位や勲位を理由として請の資格がある者の祖父母、父母、妻子、孫(曾孫、玄孫は除く)が流罪以下の罪を犯した場合、夫々において一等を減刑する前条の例に従え。



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『議条』の議とは、特に会議を開いて慎重に審議する意で、事実を究明して如何な罪か議論し、律の内で関係する条文を上奏文に記載することです。判決の記載にあたっては「准犯依律合死(何某の律を犯したことに依って死罪妥当)」とのみ記し、絞刑か斬刑かまでは記しません。

「一等」とは五刑に記された刑罰の区分を示しています。即ち、笞罪の十〜五十で五等分、杖罪の六十〜百で五等分、従罪の一年〜三年で五等分、流罪の近中遠で三等分、死罪の絞斬で二等分の合計二十等分です。但し、一等を加える場合はこの二十等ですが、一等を減ずる場合は、流罪と死罪は夫々一等として数えられます。つまり、中流に一等を加えると遠流ですが、逆に一等減ずると即座に従三年まで減ります。今後もよく出てくる表現ですので、覚えておくと良いでしょう。


『請条』の請とは、帝の裁決を申請する意です。罪の議論と該当律条の記載までは議と同じですが、今度は刑まで記されます。


『減条』の減はそのまま減刑の減です。訳にもあるように、例は前条のことを示しています。なので、前条記載の八虐以下の下りも適用されます。

因みに、議条での減刑を「議減」、請条での減刑を「請減」、本条での減刑を「例減」と言います。

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