第9話

 葬儀の列が進み、祭壇が見えてきたところで、参列者に白いカーネーションが献花として渡される。「茎を祭壇側になるよう置いて下さい」と説明を受ける。

 また、「記帳は名前だけで住所は記入しないようにしてください」とも説明受ける。

 祭壇には、これまで数えきれないほど拝見してきたお顔が額縁付きで掲げられている。

 名前を記帳し、渡されたカーネーションを、向きに気をつけて献花する。両手を合わせて、最初で最後のご挨拶をする。

 長い待ち時間に比べると、あっという間に終了。

 すると、係の人から、会葬御礼の書状と、包装紙に包まれたお品物を手渡された。

 後で一部開封したら、アトムとレオとサファイアが描かれたハンカチだった。しかも手塚治虫のサインに1989年3月2日の日付入り!


 30年経った今でも、このハンカチ箱から出しておりません。

 幾度もの引越しにも行方不明にならず、しっかり手元にあります。

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