第8話

 当時、某SF作家のファンクラブに属していた私は、賭けに出た。

 この列の中、絶対知り合いがいるはずだ!

 最後尾から先頭目指して走り出した。

 列の中央辺りで、友人を見つけた。賭けに勝った!

「あれ? どうしたの? 病院は?」

「『昔から知ってる人の葬儀だ』と言って抜け出してきた」

「アブネー!」

 そこで並んで数十分、葬儀場入口まで到着すると、入口が2つに分かれていた。仕事関係者向けと一般参列者向けだ。

 当然一般参列者向けの入口に並ぶ我々。

 入口から建物までの参列路の脇に、手塚治虫作品のキャラクター展示パネルがズラリと並べられていた。展示パネルと説明を見ながら順番待ちができてありがたかった。

 パネルを見ていたら、一般参列者の列に背中を向ける形で、ゾロゾロと人が集まってきて整列し始めた。カメラ構えたマスコミの集団が地面に腰を下ろして撮影を開始する。

 これは! マンガ家達の集合写真だ!

 全員こちらに背中を向けているので、誰が誰だかさっぱり分からなかったが、唯一、石ノ森章太郎だけはモジャモジャした頭髪で判別できた。


 マンガ家さんたちの後ろに俺写っているかなと、後日新聞や雑誌の記事を楽しみにしていたのだが、どこにも写っていなくてガッカリした。

(全部買ってチェックしたわけではありません。当時、雑誌は付録付き月刊誌でもない限り、縛られて無くて立ち読みは普通にできましたから)

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