第4話

 さて、新聞に話を戻します。

 新聞を取ったのは、目当ての情報がいつ載るかわからないので、毎日持ってきてもらう必要があったためです。

 新聞を取り始めた時は既に亡くなられて3日ほど経ってましたから、目当ての情報はもう掲載済みかもしれない。

 とにかく、病室にいる身としては、信じて待つしかない。

 取り始めて5日目くらいでしょうか。ついにその情報が載りました!


 手塚治虫の葬儀の日程です。

「3月2日 青山葬儀場」とあります。

 もちろん時間も書いてありましたが、思い出せないので割愛。切り抜きが見つかったら修正します。香典も献花も受け取らないと書いてあったのは覚えてます。


 とにかく、これは行きたい。

 小学生の時にブラックジャックと火の鳥を読んで多大な衝撃を受け、神様をこれまで遠くから仰ぎ見る事しかできなかった身として、せめて葬儀の場くらいは「手塚治虫を体感したい」のですよ。

 これまで直接お会いした事など無いにもかかわらず、訃報を聞いた時には「不義理を申し訳ない」と勝手に思うくらいの身勝手なファン心理。ストーカーまであと一歩です。

(当時「ストーカー」という言葉は無かった)


 これまでの入院期間は、だいたい1カ月。3月2日に退院できるかギリギリのところ。いやギリギリできないか。

 とにかく、治療に専念するしかない。ないんだけど、退院できなかったらどうする?

 こちらから何もできず、ジリジリと時は過ぎていくだけ。できるのはベッドの上であれこれ考えることだけ。

 で、良からぬことを考えてしまいます。

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