第3話

 新聞が病室に届くようになって、紙面をむさぼるように読んだ。

 こちらがボーっとしてる間にいきなり巨星が落ちたのだ。様々な人が様々な思いを表明していた、ハズなのだが、なんせ病室で新聞とラジオのみが外部からの情報なのであまり記憶に残っていない。というか、みな結構混乱していた時期だったのではないかと思う。

 混乱といえば、その最たるものが手塚治虫の生年月日だろう。

 翌週の各週刊マンガ雑誌は、追悼のページを割いていたが、新聞の情報と食い違う部分があった。

 生まれた年が違うのだ。

 マンガ雑誌は生年月日を「1926(大正15)年11月3日」と書いていたが、新聞では「1928(昭和3)年11月3日」と書いてあった。

 手塚治虫は自分の年齢を、長年にわたり2歳上に偽っていて、付き合いの長い人たちほど見事に騙されたわけだ。

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