第一章 10話 完


張りつめた空気を直に感じる。



この部屋に、私は一度来たことがあった。


変わらず嫌な空気しか漂っていない総統室は、長居できるようなものでないだろう。


「ボルネシア、スペア国から帰国致しました。」


敬礼をしたまま、相手の返事を待つ

ピリピリとした空気。少しでも目をそらしたらいけないような緊張感。正直気持ち悪い。

ただ、ここで私から話すのも無礼きわまりない。


「ボルネシア、貴官は...


よくやったぞ、よい判断をしたな。」





「... へ?」

なんと言った?帝国の軍服をまとい、金髪の髪から見える透き通った青い瞳を私に向け、いかにも悪いことしか考えていないような顔をしている

この総統が、私を誉めた?



「いやー、あの国の国王は話が合うものでなかったからな。正直貿易などには困っていたんだよ」

腕をくみ、身ぶり手振りで話し出す総統に、ただ呆然とした。


そして、この総統とは気が合うな。と思った


「それにしても、彼処の珈琲は美味であると思わないか?」


「ええ思います。苦味と酸味が絶妙ですよね...」



その後、私達はしばしの間会話を楽しんだ。





部屋を出て、分かったことがある。

煙草の匂いを染み付かせ、大人の雰囲気を漂わせた総統は、


亡き父に、よく似ていたのだ。


去り際に、総統からお茶に誘われた。




とても楽しみだ。




***






世界に、神は存在するという。


しかし私は、神を信じようとはしないだろう。









私は、自身を信じる









そして、私を信じる仲間達を、信じるだろう

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