美男美女コンテスト

紫斬武

美男美女コンテスト

「おめでとう!」


「おめでとう!」


「やっぱり、貴女の腕は確かね、おめでとう」


「おめでとう!」


きらびやかな世界、華やかな周り、着飾る私。


私に花束を渡す、美男美女の二人。


私がプロデュースした二人は、この世の者とは思えない程の美しさを放っている。


小さい頃からの夢、私の手で美男美女を作り上げ、コンテストで優勝し美の総合プロデューサーとしての地位を確立する事を遂に、遂に私は!


「私が美のカリスマ、琵女平恵子びじょひらけいこよ!」


「琵女平、美のカリスマだか何だか知らんが授業中に寝るとは良い度胸だな」


目を開け、周りを見渡せばそこは教室、さっきの輝く美の世界はどうやら夢だったようだ。目の前に居るのは担任の先生で、社会の授業中みたいだった。


「……夢……か、ちぇっ」


「夢か、じゃない。ほら、さっさと座って授業を聞け。もう寝るなよ?」


「はーい」


周りからクスクスと笑われるが、さっきまで見た夢のお陰で私は機嫌が良い。私の夢をふんだんに輝かせた夢。


こんな夢を見たのはきっと、美男美女コンテストが今回の文化祭で行われるからだろう。


私が高校一年の時は行わなかったが、今回は行われる。三年の先輩に聞くと二年一回、美男美女コンテストが行われるようで、美の総合プロデューサーを目指す私としては高校最後の美男美女コンテスト、絶対に優勝して美のカリスマ第一歩としたいと考えている。


この美男美女コンテストは、名の通りに美男、美女を決めるのもあるが、他にその美男、美女をコーディネートした美のプロデューサーも決めるコンテストでもある。私はこのプロデューサー枠を狙っている。


私の夢は何度も言うが、美のプロデューサー、美のカリスマになって世界に認められる事。だからいかに、美男美女コンテストでインパクトを与えるかが勝負、全然美と関係なかった男女を美男美女にするのが腕の見せ所!


だから、私はその条件にあった二人の元へ授業が終わる度に通い詰める。今回のコンテストで優勝する為に!


授業が終了するチャイムが鳴り、速攻立ち上がると、とあるカップルの元へとダッシュで向かった。


「さあ!今日こそは、美男美女に育て上げるわよ!」


薄暗い教室の扉を開け、私は二人に向かって声を上げた。


「……ぃ、今のままで充分です…」


長い漆黒の髪、前髪も長く彼女の目許は隠れている、声も小さく余り話さずの少女。周りからは幽霊少女とも呼ばれている。


「……ぼ、くぅ…も、今のままで…」


彼もまた漆黒の髪に、前髪も長く彼女同様に目許は隠れている、声も小さく余り話さずの少年。周りからは幽霊少年と呼ばれている。


この二人、自分達の世界観で生きる幽霊カップルだ。


「なぁーに、言ってるのよ!貴方たち二人はダイヤの原石!まさに美男美女に育てる為の原石なの!私の腕の見せ所なの!」


「ち、千代ちよちゃんは、ぃまの侭で…充分、か、かゎぃい」


「ゅ、ゆうくんも、格好ぃい…」


「だから、もっともっと可愛く格好良くなるの!」


コンテストの日程が決まってから、私は二人にお願い事をしているが、一向に頷いてくれない。


私はどうしても、この幽霊みたいな二人をプロデュースして、美男美女にして優勝したい。他の人の方がって思われるかも知れないけれど、私の中のセンサーが二人をプロデュースすれば確実に勝てると確信を持てている。


千代ちゃんと呼ばれた彼女、確かに見た目幽霊っぽいが、背は高く太陽に余り浴びてない所為か色白、前に無理矢理前髪を掻き上げ目を見ると化粧映えしそうな切れ長の目、美しい日本人形を彷彿ほうふつとさせる雰囲気、着物が絶対に似合う少女。


一方、悠くんと呼ばれた彼、彼も見た目キノコのお化けみたいな幽霊みたいだが、彼もかなり背が高く足も長くスタイルは抜群、前に無理矢理体を触ったが細マッチョだ。聞いたら祖父母の畑仕事を手伝ったら的な事を言っていたが、その経緯はどうでも良い。


この見付けた原石二人、私は絶対に、絶対に表舞台に引っ張って輝かす!私の夢の為に、今日見た夢のように、祝福されおめでとうコールの為に!


血走った私の目を見た二人が、怯えた表情を見せたので冷静になれた。


コンテストまで、後、数ヶ月。私はこの後、色々と奮起してコンテストに間に合わせる事にはなるんだけれど、色んな事が起こってとんでもないコンテストになるのはまた今度。

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