第14話 深夜のネコ 1

「ご主人、お休みぃ♪」

「ああ。けど、暑いから体離して」

「いや」


約二ヶ月ぶりに、一人と一匹でベッドを使うことになった。拾った当初は余裕のあったベッドは、今や狭苦しいくらいに感じる。

だというのにティアは、そんなこと毛ほども気にしていない。寧ろ嬉しそうに、更に貴紀と密着しようと試みる。


少しばかり暖かさが増した今日この頃。

二人で寝るには、やはり暑い。


「はぁ……」


思わず漏れる溜息。

隣から甘い香りが漂い、気になって中々寝付けない。僅か二ヶ月前には感じたことがないそれは、大人になったことを証明するかのようだ。紛うことなき生殺しである。


「ごひゅ……りん……」

「呑気な……。お前は、もうちょっと警戒心を持った方がいいな。たく……」


ティアが眠ったのを確認した貴紀は、ゆっくりとベッドから這い出た。

元々ベッドは貴紀の物だったが、ティアを飼い成長したのを機に、床に布団を敷いて寝るスタイルに変えた。

そして早々と眠ったティアを尻目に、今晩も布団を敷くために起き上がったのである。


(寝付きのいいネコでホント良かった)


呆気なく思惑通りに事が運んだ。足音を立てないよう細心の注意を払って布団を敷く。

そして自分の寝床を確保して、良く眠っているティアを一瞥する。


「お休み、ティア」


──と、薄っすらと微笑んだ貴紀は、微睡みの中へと落ちていった。

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