第40話:婚約式に向けて・・・

「美しいのぅ」「えぇ・・・えぇ。本当にお美しいですアリスお嬢様」


 祖父は嬉しそうに美しく成長した孫娘を見つめ、従者ルーカスは感極まって居る。


「アリスフィーヌ様・・・いえ、アリスと呼ばせて頂きますわ。どうぞウィル様とお幸せに」


 マギーは天使特有の祝福をアリスに授ける。


「マギー様・・・勿体ない祝福、有難う御座います」


「今まで辛い思いをなさって来られた分、ウィル様に甘えて幸せになって下さいませ」


 エルフの祝福・・・それは、永遠に幸福な家庭を築けると言われて居る花を渡す事。


 朝露に濡れた花を束にして渡したのだ。


「このような・・・いわれの有る花を束で・・・宜しいのでしょうか」


 アリスとしては天使族からの祝福を貰うだけでも勿体ないと思って居る。


 にも関わらず更にエルフ族からも祝福を受けられる事が信じられないのだ。


「良いのですアリス様。貴女様はウィル様とご婚姻なされる・・・と言う事は王妃となられると言う事。獣人族の王妃ならば、それくらいの祝福を貰う価値が有ると言われて居ますのよ?」


 獣人族の王と王妃が他の種族の祝福を受けるだけの価値が有る・・・と言うのは、先代のアース王が文献に残して居るから知っては居た。


 だが自分がその立場に立つと、いささか照れ臭い。


「そう申されましても・・・例え過去に文献として残されて居るとしても恐れ多くて・・・」


「今まで冷遇されて来たのですから婚姻は幸せな思いをして下さいませ」


「マギー様が、どうして冷遇されて居たと知って・・・」


「・・・アメリア様から伺ったのですわ」


「わたくしは森が教えて下さいましたのよ?エルフは森と共に有ると言うのはご存知でしょう?」


 知って居たが、まさかの援護射撃に戸惑うばかりのアリス。


「そろそろ出立せねばウィル王子が待ちくたびれてしまうぞ」


 はた・・・と気づいたマギーは自身の羽で王城へ向かい、アメリアは馬車で向かう為に先に出た。


「アリスフィーヌおめでとう」「有難うございますお爺様」


 ルーカスに手を引かれ馬車に乗り込み王城へと向かう。


 幸せな微笑みを浮かべるアリスは、女神のように美しい。



】【我がよウィルならば幸せになれよう】


 妖精たちは踊って喜びを表現し、精霊王はアリスの幸せを誰よりも願った。


『みんなが助けてくれたからこそ今が有るわ。本当に有難う』


 森の恵みに助けられて居なければ命は繋がらなかった知れない。


 ウィルや他の王族たちが助からなかった。


 アリスが罪を犯す訳が無い、と言う思いを持って居なければ、行動しなかっただろう。


 断罪がと言う事に気付いた。


 だからこそ「疑い」を持つ事が出来たし、彼女を救うべく動けたのだ。


 勿論、獣人国の民、全員がウィルとの婚姻を祝福してくれて居る訳では無いだろう。


 それでも認めて貰えるよう努力する事は出来る。


 アリスは馬車の中で背筋を伸ばし、覚悟を決めた

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