第23話:最大級の雷1

 レンシルから託された宰相は、王妃の私室へと向かい侍女に


「王様の事を伝えたいので王妃様に目通りたい」


 と申し伝えると、即座に応対する場所へと通された。


「一体、どうしたのです?」


「実を言いますと獣人族の王様よりアリスフィーヌ様を保護しマシュー・ウィルソン様の養女となる事になったと通達が有りまして」


「ま、まあ!アリスフィーヌ様は無事でしたのね?!」


「はい、ご無事だそうで、マシュー様の養女となられただけでなく、ウィル様とご婚約なされるそうでして、その事を知られた王様が暴走なさいまして・・・」


「まさかとは思いますが王様は、レンシルとアリスフィーヌ様を婚約させるべく、マシュー様宅から攫って来いとでも言いましたか?」


「その通りに御座います。無理やりに騎士団を動かし有無を言わせぬよう睨まれてしまった騎士団長殿が、動かさざるを得なかったので、レンシル様に止めて頂けるようお願いして参りました」


「ならば、わたくしも動くべきですわね」


「こんな事を王妃様に願い出るのは恐縮なのですが・・・」


「何を言って居るのです?王の命令に従わざるを得ない状況で、わたくしに願い出に来る事が、いかに危険な事かくらい判ってますのよ?」


「王・・・妃様っ…」


「さ、戻った方が良いわ。馬鹿な事をして居ると言う自覚の無い者が戻って来ぬ宰相に癇癪かんしゃくを起す可能性も有るわ」


「・・・そう・・・で御座いますね。では失礼いたします」


 深々とこうべを垂れて下がった宰相の背中は、疲れ切って居る。


 それだけ神経を使ってした、と言う事。


「はぁ・・・、愚息だけでなく愚王まで誕生してしまうとは、我が国も終わりかしらね」


「王妃様・・・」


「支度をして頂戴」


「畏まりました」


 王へと雷を落とすべく着替える王妃。


 レンシルは今頃、騎士団がウィルソン邸へと向かわなくても良いよう動いて居るだろう。


 ならば・・・と怒りを内面に隠し、王が黒い思惑に捕らわれてしまって居る謁見の間へと向かう事となった。



 * * * *


 黒い思惑に捕らわれては居るが、現状が如何いかで有るかくらいは理解できるらしく、周囲に近衛の姿も宰相の姿も無い状態に戸惑い始めた。


「どういう状態なのだ?宰相はおらぬし近衛の姿も無いとは一体、何が起こった?」


「王様、どうぞ落ち着かれて下さい。私めは騎士団団長に指示を出す為、席を外しておりました」


「そういう事だったか。いや、疑ってすまぬな」


「いえ、騎士団は無事にウィルソン邸へと出立させまして御座います(こう言う判断黒くないのが不思議では有るが・・・)」


「ウィルソン邸まで行き王城へ戻るまでに、どれくらい見計らっておれば・・・「何をなさって居るのです?」」


 王の話を折ったのは、怒りが表情に現れた王妃メイフィス。


「メ、メ、メイフィ・・・」


「何をなさって居るのか、と問うておりますのよ?お答えになって?」


「い、いやっ…その・・・な」


 言い淀む、と言う事は何かしらを隠して居る時だと知って居る王妃は、更に攻め立てて行く。


「何をして居たかを聞いて居るのです!答えて下さいませ!!」


「うぐっ・・・」


 未だ言いよどむ王では有るが冷や汗がにじみ出て居る。


 陥落まで後わずか

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