その時を迎えたら

 『老い』がもたらす枯れた味わいを文学として描ききった快作。相方(?)の猫がまた可愛らしい。原付が絶滅したという下りも実に近未来らしい。
 同期どころか後輩まで次々と鬼籍に入り、冬の終わりに西陽がさす部屋の中で少しずつ長くなっていく昼を愛でると共に、人生の夜を迎え静かに『それ』を待つ主人公。そんな光景をつい想像してしまう。