第5話 家出したの

学校へ着いた玉緒と撫子は一旦分かれ玉緒はクラスに入り席につく。

時間はギリギリセーフだった、全くあんなに余裕持って出発したのに。

そんな事を考えていると、担任の先生が入ってきた、さらに一緒にいたのは…

「あいつは…」

入って来た見慣れない女子、茶色い髪にツインテールにしている女子、それはさっき助けた天狗娘だ。

「烏杜美玲です!みんな宜しくね」

さっきの白い烏天狗、烏杜美玲が玉緒のクラスに転校してきたのだ。

男子達は大喜びしている、確かにちっちゃくて元気で可愛い女の子だ。

「ん?あ!さっきの狐じゃん!」

「狐じゃないっ!」

玉緒は馬鹿と思いながらツッコンだ。

「あんた、同じクラスだったんだ!」

「おい高円寺!あの子と知り合っいなのか?」

普段話さないクラスメイトの男子達が群がって来た。

うわーうっとしい…

当然俺たちは先生に叱られた。

授業が終わった休み時間に撫子を呼び出し三人は校舎裏へ来ていた。


「人前で狐とか言うなよ!バレたらどうする気だよ」

「バレるって妖怪って事?別に良いじゃない減るもんじゃないし」

「烏杜さん、騒ぎになるとマズイからね」

いくらこの学校は妖怪も紛れて通っているとはいえ、それを知ってるのは一部の者だけだ、先生さえ妖怪か判らないんだ、下手には正体を言ってはいけない。

人前で羽や尻尾なんか生やしたら騒がれてマスコミ沙汰になりかねないからだ。

何分妖怪が認知されなくなってだいぶたつわこけだし、ひっそりと暮らしてたいからな。

「ま、ならしゃあないか」

美玲はそう言うと玉緒に近づきじーと見る。

「ふーん」

「な、何?」

「別にそだあんた達の名前聞いてなかったわね」

「俺は高円寺玉緒だ」

「私は夏目撫子です」

二人は簡単に自己紹介をした。

「で、何で今朝、上から落ちてきたんだ?」

「今朝方、他の烏天狗が貴方を探していたみたいだけど?」

美玲が飛び去った後に別の烏天狗が来たことを二人は話した、ついでにデマで帰した事も。

「 ああ、あれはうちの使いの烏天狗達よ」

「何でうちの人がお前を探してるんだよ?」

「それは…家出したからね…」

「「なにっ!」」

美玲はどうやら家を飛び出して来たようだ。

しかしどうやって生活してるんだ?

お金は?転校の手続きは?

「お前どうやってうちの学校を転校したんだ?」

「それに生活費とかは?」

「ああ、それは知り合いの爺やんとこにいるのよ、学校は術ででっち上げて試験は実力で転入したのよ」

「マジかよ…」

「爺やは私の教育係だった執事的な存在よ」

美玲は良くしてくれた教育係の天狗の所へ転がり込み、何らかの術を駆使して学校の面倒な手続きをパスし学校の転入試験は普通に実力で受かったのだ。

頭いいんだな…

「そうやいや、お前何で家出を…」

キーンコーンカーンコーン

「あ!授業よ戻らなきゃ」

美玲は先に教室へ向かった。

「聞きそびれちゃったね」

「ま、放課後にでも聞くさ」

二人も後に追いかけ教室へ向かった。

それから今日の放課後、美玲の家出の事情を聞くために玉緒と撫子は美玲を探したが玉緒が撫子を呼びに行ってる間にいなくなってしまっていた。

「どこ行ったんだ?烏杜の奴」

「きっと用事があったんだよ、明日また聞こうよ」

二人は仕方なく帰る事にした。

(よし、今日こそは!)

あの百足の一件から何日も経つが、撫子は未だに玉緒にあの告白の失敗を取り返せていなかった。

撫子は玉緒が半妖と知ってるし何よりあの触り心地抜群の尻尾にぞっこんラブ…いやいや本人を本気で好きになったのだ。

出来るならちゃんと告白したいが、玉緒があの様に友達としか接してくれない為全くそのタイミングが伺えない。

「ね、ねぇ…た、玉緒くん」

「ん?何だ撫子?」

「こ、この前の…事何だけど…」

「し、尻尾はダメだぞ!」

玉緒はまた触れると思い断る。

「ち、違うの!あれは尻尾の事じゃなくて」

撫子が何とか訂正をしようとするが…


「離しなさいよっ!」

いつも邪魔が入る…




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